もう怖いんだ
この国の今には
わたしがずっと忌避してきた
苦しさの塊がある
法律に基づかない締めつけ
自粛という名の命令
重箱の隅をつつくメディア
相互監視の社会
自らを厳しく取り締まり
恐怖に支配される
データを分析せず
根拠もない
8割削減のスローガン
なぜ8割なのかも明らかにしない
聖戦だ 己れ殺して 国生かせ
団結の精神が
滅私奉公のほうを向き
破滅に向かう人々には
耐えよ耐えよ
娯楽も奪われ
外出の自由もない
法律には禁止も
命令も書かれていないのに
なぜこんな空気になってしまったのだ
我々がもっとも大切にしてきた
自由も多様性も
我々は自ら進んで
投げ捨ててしまった
この変わり身の速さこそ
わたしの恐怖の正体
一皮剥けば
恐怖と嫉妬のギラギラした眼で
周囲を監視する
なんの拘束力もないはずの
緊急事態宣言の下
他人の眼を気にしながら
自分の行動を制限する愚かさよ
だが
そうしなければ怖いんだ
怖いから自ら抑圧し
抑圧するから
他者を叩く
こうして自粛は徹底され
社会は病み
人は壊れ
さらなる怨嗟の声が上がり
負のスパイラルは加速してゆく