闇の音

音がする

カチリと

深夜

一人起き

眠れない

カチリ

カチリ

不穏を運ぶ音

記憶の扉が軋む音

一歩一歩

近づいて

蒙昧な腐海の

匂いを運んでくる

わけも分からず

考える余裕もなく

押し込めた

過去の惨禍

忘れようとすればするほど

忘れられず

隙きを見せた刹那

こんな時間に

浮かび上がろうとする

カチリ

カチリ

記憶の時が刻まれる

漆黒の天井を

ただ見上げ

過ぎるのを待つしかない