2019-08-01から1ヶ月間の記事一覧

わたしの奥の子供

大人になって 腹はたるみ 髪は白く 腰が曲がろうとも 子供の時に くるまれた やさしさは ずっと 抱えている 傷つき 汚れて 老獪になろうとも 愛おしんでくれた母 温めてくれた家族は わたしのなかに 大切に生きていて 死ぬまで なくなりはしない 大人のわた…

忙しくて忙しくて退屈

秋とともに 仕事がきて 寝る間も惜しむほどの 忙しさ 追われ追われて くたびれきって まったく 心は充実しない ただ作業を繰り返す ロボットになっただけ 消耗している時 仕事を消化している時 なぜか心は閑として 退屈している 忙しいのに 暇で やることは…

秋が来る夜は

秋が来る夜は たまらなく寂しい 涼しい風が吹いて セミの死骸が 街中に転がり カンカン照りの日も もうなつかしい 不順な天候 早くなる日暮れ 暑さは離れた 生ぬるい風は 季節の終わりに向かって 秋波を送ってくる 疲れ切った布団で 長い夜を過ごせば 終わっ…

季節を買う

木々も染まらぬ 荒廃した都会であれど 暑くもなれば 寒くもなる うらびれた下町 緑なきコンクリートの塊 されど 人は生きる サンマに 松茸に 栗に柿 日本中 世界中から 買い漁り 季節なき季節を演出し 旬なき旬を味わう 無粋か 悍ましいか このくらい 許して…

芝の横で

ひたぶるに下を向き 大地を蹴り上げ 重戦車のごとく 走ってゆく 太い腿 広い肩 充実した 灼熱の肉体 空は青く 芝は緑 白い線が 彼方に走る 駆けよ 果てまで 汗振りまいて 目をギラつかせ 何も考えること無く 駆けよ

斜夏

終戦記念日が過ぎ 甲子園が終わる 夏も盛りを過ぎた 暑さにも馴染み 陽はだんだん長くなってゆく まったりと淀んだ 夏の気だるさは 次第に失せ 朝夕 風が吹くたびに 秋の気配が 近づく 生命の盛りも 終わる エネルギッシュで パワフルな季節も 萎えてゆく 空…

手造り蕎麦屋

時たま通った 商店街の蕎麦屋 久々に通ると 手造りの看板 すごく美味しくもなければ 不味くもない蕎麦 身近でいつでも食べられる ワクワクしないけど 便利で使い勝手がいい そんな蕎麦屋の看板に書いてある 手造り 手打ちじゃないのは 分かってる 手打ちだと…

テクノロジー能

スマートフォンを 初めて手に取る 数々の 文明の利器と 交差した 10年遅れで 買い求めた それ 新しさも 興奮もない 感じたのは 世の中と わたしの差 世の中から 乖離していた事実を 突きつけられた 片手に収まる 板切れ一枚で 生活を賄い 娯楽を堪能する 遠…

小さくて無意味な傷の記憶

貶められたり 騙されたり 嫌な心に触れて 悩ましい夜を何度も過ごした やがて忘れて 笑えるようになったのに いつかの 舌打ち一つ 言い回し一つ 些細なことであるはずなのに ずっと残るものもある 大怪我から立ち直って 歩きまわっているのに なぜか 指に刺…

あなたを追う夢

夢の中で歩いていたのは 確かにあなただった 後ろ姿も 横から眺めた歩きぶりも あなた以外に 考えられない 私は確信していた あなたは 顔を向けてくれなかった 追いかけて 追いかけて 池のボートを漕ぎ 地下街の雑踏を抜けて あなたの後を追った 湖面には 黄…

増税、我慢、美徳、内ゲバ

消費増税が間近になり 報酬は税金の分だけ減らされた 国の通達など 田舎の労働者には 通用しない 文句を言えば お払い箱だ 酒の席 愚痴が始まる しかし 金のことはご法度 口を滑らせた途端 仲間から攻撃が始まる そんなこと言うもんじゃねえ 嫌なら辞めろ 働…

空腹の夜

疲れ切って 寝てしまい 夜中に空腹で起きる 水を飲み 再び床についても もう眠れない 食べ物はある 近くに買いにも行ける ただ億劫で 食べるのが面倒で 布団の中で 心は過去を辿っている 空腹の夜 冬の風吹く夜 一人 体を折り曲げ 夜明けを待つ日 何も持たず…

安息地

子供の頃 駄菓子屋や公園で やることもなく 時を潰し 友達と 過ごしていた 今 コンビニのイートインコーナーに 子供が二人 電源を使い ゲーム機をいじりながら 中国語を話している 異国の地 遠慮もなく 店の品も買わずに クーラーの効いた店で ただゲームを…

Shooting photo is Shooting you by eyes

どこもかしこも あふれかえる画像 撮られまくる 風景 食べ物 あらゆる人 公然とレンズを向け 当たり前のように シャッターを切る まぬけなスナイパー 姿も隠さず 臆面もなく 撃ちまくる視線 撮られるほど 引きつる顔 作られた照明 演出された記録 記録はやが…

仕方なくても書いとく

しどけなく 生きている言い訳に 歌を歌ったり 絵を描いたり 言葉を連ねて 書きなぐったり するのでしょう 戦争や 災害や 理不尽な不幸 思うままにならない出来事 矛盾と葛藤 不信と絶望 こいつらは いつ何時だって 襲ってくる 残念ながら 世界とはそういうも…

表現とは

西の方で 展覧会が中止になり いろんな人が騒いでいる 表現とは 芸術とは 右も左も 140字でアートを定義しようなんて なんて軽くて 薄っぺらいんだろう 軽薄な表現に 皆で真剣になり 矢のようなスピードで タイムラインは流れてゆく その真剣さ その必死さが…

つまらないから恐ろしい

大事なことは いつだって 身近にあって 当たり前のことだから ないがしろにしがちだった 大切さに 気づかなくて 踏みにじっても 平気でいて ようやく分かった時には いつものように 手遅れで 限りない後悔と悔悟に 復讐される 日常と習慣 ルーチンワーク 染…

開かれているほど閉じて

開かれれば 開かれるほど 言葉や映像が飛び交い どこかの誰かが 世界中に簡単に 発信できれば出来るほど 誰でもどこでも すぐ読めて見つけられるほど 言葉は 人の目を気にして 安穏で波風立たぬ 歯ごたえのない 金太郎飴になっていく 便所の落書きでさえ も…

芸術の名の下に

表現の自由という言葉一つで 何をしてもいいのだなんて 思ってやしないか 表現は自由か お前は自由なのか 政治問題を持ち込んだのが自由か 国民感情を逆撫でするのが自由か ちゃんちゃらおかしい 芸術で人を殴れるか 芸術で人を殺せるか 旋律のない騒音も 戦…

言葉を掘る

サラダを みずみずしいと言えばおいしそう 水っぽいと言えばおいしくなさそう 若者に 君はこれからだと言えば期待の現れ 君はまだまだだと言えば未熟者との評価 同じ事象も 言い方一つで意味が変わる 起こった出来事 ここにあるもの 見て感じるのは 人それぞ…

食べすぎの後に

食べ過ぎてしまった 後悔と自責の念を 人は いつから持つようになったのだろう 食べ物のない時代なら 腹を満たす機会は 今よりはるかに少なくて 思い切り食べられた 満足を心に抱いて 眠れただろう 節制と自己管理の時代 日々の食事は 腹八分目 食べたい物も…

傷をつけて生きる

失敗もする 粗相もする 人を不快にさせたことなど 数知れない 怒らせたり 憎まれたり 悲しませたり 泣かれたり 人前に出るなんて もう出来ないくらい 恥ずかしいことをしてきた このまま ひっそりと 誰にも迷惑をかけずに 生涯をまっとうするか いや そうで…

日本の夏

灼熱の太陽の下 高校球児が走り回り 広島に原爆が落ちて 長崎に原爆が落ちて 8月15日に 終戦記念日を迎える 甲子園の時は止まり サイレンが鳴り響く 汗を滴らせ 俯いて棒立ちの人々 お盆の最中 日本中で死者を弔う 戦争の敗北 死者の慰霊 何年経っても 変…

夏の音

草むらをかき分けて進む ガサゴソと 大きな音を立てながら 降り注ぐ蝉の声 飛び回る羽虫 アブやハチの低音 蚊の高音 生命の音に満ちた夏の山は 陽射しさえも 音を立てているように強く 空は青く 緑は濃い はっきりと くっきりと 明快なほどの エネルギーとと…

絶食

最後の食事は終わった 日が暮れ 夜を通して 眠り 覚醒し 生気が満ちるほど 空腹はつのる 日が昇り 暑さが増し 汗が流れた 口の周りは渇き 空腹も増す 時が経ち 消化器は麻痺し 身体のエネルギーは枯渇した 何も考えられない 何もしたくない 断食明けの 一杯…

影が招く

静かに目立たず ゆっくりと 着実に忍び寄る いずれ 私たちは 皆 覆われる 片隅に住みつき 脳裏に浮かんでは消える 暗い 暗い 闇の向こうから 手招きする影 蓋を閉じ 目を背け 逃げれば逃げるほど 忘れられず 一人俯いて 内観の折 影は 甘い香りを漂わせる 恐…

ピークアウト

人生の絶頂は いつだったろうか 目的も快楽も 意味も変化する人生で もっとも輝いたのは いつの日だったか あるいは まだ頂上は訪れていないのか 期待と不安 未知への鼓動 いつだって 未来は明るいと 思いたいものだ だがしかし 若かりし日を思い出せば 今で…

秘密基地幻想

少年の頃は 家々の隙間や 路地を駆って 道ではない通り道を 探していた バラックや 粗雑に建てられたアパート ビルの谷間 境界線や空き地 曖昧で粗雑な都市計画に 恩恵を受けて 誰もいない 誰も知らない片隅に 居場所を求め 秘密基地に憧れた 大人の目が届か…

お前は眠りたいのか

眠いのか 眠りたくないのか もうずっと寝られない 起きているのか いないのか 昼なのか 夜なのか さっぱり分からない ウトウトしただけで 布団から出ていく 眠い はずなんだ 休みたい はずなんだ 眠れないんだ 休めないんだ 油の切れた機械みたいに ガタピシ…

頷いて従ってほしいのか

うん と言って欲しいんだね そうだね と言って欲しいんだね あなたは 終わることなく喋る どこまでも どこまでも 人の話も聞かず 都合なんて考えない ただ自分のことばかり いつまでも いつまでも わたしに尋ねたことでさえ わたしの答えが終わらないうちに …