2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

プラットホーム

駅に立ち ホームに佇み 列車を待てば 街のざわめき 風の匂いが 流れてくる 行く場所も決まり 立ち去る間際のこの街で 一瞬の郷愁が 胸に響く 列車が入り ベルが鳴り 今見る風景が 流れてゆく プラットホームは 別れの場所 思い出の溜まる場所 切なさにしばし…

スクリーン

白く 光沢を持った 大きな布 影が映れば 泣き笑い 実体なく 現実でない 光と壁 広大な空虚を求めて 椅子に座り じっと動かず ぽかんと口を開けて ただ観るのみ 時を過ごす 一枚の布

寒さに思いて

肌寒さに 人恋しく 熱燗啜り 涙こぼれる 寒さとともに 思い出す 雪の降る道を 一人 帰った あの夜の 凍てつく心の 寂しさよ 刺す風も 心に届かず ぼんやりと 白んだ世界に ただ一人 灯りつく 家々を過ぎつつ 思い出す脳裏には 孤独とともに 熱い血が滾ってい…

理由が欲しいのか

単純化するなと言う 人々の主張が 単純化批判へと 単純化されている 差別をなくせと 言う人々が 意見の違う人々を 敵視する 物事には すべて理由があると言われた 逆だ 物事に すべて理由をつける人がいるだけ 生物が繁殖するのも 世界が変わるのも 人がいな…

透徹の頂

寄らず 寄せつけず 生まず 生やさず 削ぎ落とし 尖らせた 先端が 細くなり 触れたら 壊れるほど 突き詰められた それは 眺めるだけで 誰も触れず 近づけず 人を遠ざける 美しくも 危険で 感嘆しても 距離は遠い その頂を見せて 悦に入る人生 濁った魂には 清…

魂の依代

広く世界を見渡して 現実を変える思索も 一日の一瞬の 小さな出来事の詩作も 同じことだろう 技巧を弄し 小難しく知ったかのような 事情通のごとき 言葉の羅列 言葉を操りながら 言葉に操られ 地位を得たいと望み 地位に釣られる そんなスカスカの言葉に う…

猫との関係

猫と暮らしていた 飄々と そっけなく 食べ物だけやって 適当に 勝手に 気ままに お互い 干渉もなく 猫は庭で遊び どこかへ行っては戻り ただ飯だけをねだって フラフラしているのだった そんな関係も長くなり 当たり前になり 気にも留めなくなった頃 猫はい…

駄目の中で生きろ

困難に立ち向かえ 逆境をはねのけろ 腐るほど 言われてきた これらの言葉 成功者の影に 困難に困窮し 逆境を跳ね返せなかった人間が どれほどいると 思っているのだろうか 人には 耐えられる困難と 耐えられない困難があり どう頑張っても 無理なものは無理…

童心の場所

子供心に思う昔は 美化された子供心 あの時 美しくも 懐かしくもなく 何も思わずに 見ていた 分からないことすら 分からないまま なんでもない風景が 脳裏に焼き付いて あれから 数十年 何度も何度も 上書きされて それでも残ったイメージが 不思議と浮かび…

書け

書けない時に 書くためのHOW TOだって なんてくだらないのだろう 書きたくなければ 書かなければいい 書きたくないのに 書かねばならぬ仕事をしているなら 書きたくなくても 書け いいもの 素晴らしいもの 自分を投影しているもの そんなもの どこにもありは…

言葉との別離

言葉が離れてゆく ともに生き 命をつないできた 言葉が いまは郷愁のなかにしかない すでに わたしの言葉は 役目を終え 旅立っていたのだろう 残り香を嗅ぎながら 未だ傍らにあると勘違いしていた もうないのだ 終わっていたのだ わたしは獣になって 心臓を…

憂鬱の風景

丘に上がり 振り返って 眺めれば 蜃気楼に揺れる街 豆粒の人と車 ミニチュアのビル 遠く遠く 目の霞む はるか彼方まで 街は拡がり 人の波は途切れず ダイナミックな 箱の羅列は いつまでも続きそうだ 人の営みも 木々の緑も 壊しては 再生を繰り返し その中…

秋の夕べ

しっとりと降る雨に 秋の匂いが乗る 肌寒い夕べ 日は短い 虫の声聞きながら 入る風呂には 湯気あふれ 空へ立ちのぼっていく 暮れの前の 穏やかな季節が もうそこまできた

うまく生きられない

うまく出来ないなんて いつもある うまくいかない そういうこともある うまく生きられない 物があっても 金があっても 友達も 仕事も 地位も名誉も いくらあっても うまく生きられない それは 満たされない ということでなく つかめない わからない 羅針盤を…

岸壁に立つ

岸壁に佇み 強風に舞うカモメを眺め 白波立つ 一面の海に抗っていた 海と空とカモメと 風と波 起立する自己 ただ それだけ 寂しくて 侘びしくて 冷え切った皮膚の内に まだ温かい血が巡る それが 私なのかもしれない

明日の浜辺

暗い夜で 星一つない 生暖かい風と 寄せては返す波の音 この浜辺に 陽が昇り 美しい朝焼けが 見える この闇が 訪れる歓喜の 前奏として 単調な波を 送り 疲れに痺れた頭は ただ 音を聞くのみ 明日が来るのだと 疑いもせず

多様性の配慮

多様で皆が生きやすい社会なんて 誰が決めるのか そんな言葉だけ ひとり歩きして やくざも ホームレスも いなくなった 多様の中に 含まれなければ 多様な社会の 一員として 認定されなければ 多様性から排除される きれいな言葉と きれいな見た目 八割の人の…

秋来ては

川面に映る 木漏れ日揺れて 清流の冷気 いよいよ厳しく 葉の色変わり 枯れ葉降り積む 釣り人一人 岩場に立ちて 水面を眺め 糸を垂れ 過ぎゆく時は 緩やかに 淵に揺蕩う 葉のごとく 秋は来たれり

港町の朝

潮風吹く 最果ての街 海猫の鳴く声が 響き渡る ひと気なく 海鳥の糞が 散らばる岸壁に 朝日が当たり 波が当たれば 漁から帰る エンジンの音聞こえ 潮の匂いとともに 活気が立ち上がる

空高く

空高く上がり 雲一つない青の中 昼と夜の 明暗の点滅だけ 日が落ちれば 眼下の雲海は 紫雲となり 夕映えに輝き 夜は 満点の星を浴びる 空気は澄み ひたすらに冷たく 生命の気配なく 己の息だけが聞こえる

着陸態勢

可変する翼 海と空 震える羽根 浮き上がる風 まだ まだ 辿り着かない 水平線の彼方に沈む 夕陽を浴びながら 闇に覆われた街へと 沈んでゆく 一直線に伸びた スポットライトが 滑走路を照らし 光を目がけて 昼と夜の間を滑っていく

感じるもの

風の匂い 潮騒の音 肌を刺す湯 降り注ぐ木漏れ日 いま ここに ある それを確かにする わたしはわたしで わたしだけでなくて わたしではなくとも わたしは感じている 感じることで わたしは生き 感じることで わたしは確かめ 感じることでのみ わたしはわたし…

刹那のもとで

無気力と怠惰 そんな己に対する失望 失望すること自体 誤っていやしないか 意味なき唯物の世から 意味を探り出す毎日 上手く出来ない虚無 社会と交接できない落胆 意味が強すぎて 意味に縛られ 無意味を恐れる だがしかし 意味から離れ 何もないまま 終わる…

わたしなのか

魂という欠片に つながれた 操り人形 もはや 魂すらあやふやなのだ なにかに あやつられ 自ら決めていると 思い込み わたしだけの 自分だけの 感情や 葛藤があると 勘違いして あくせく動き回り 価値を求める 蟻や蜂 豚や馬は 如何に生きているか あれらと同…

何というかなしさ

この悲しみが 自分だけだなんて この悲しみで 自分だけでないなんて なんて悲しいのだ 私の想いが 私だけのものであり 私の想いが 私だけのものでない 私は私であって 私でない ちっぽけな やがて絶えてしまう 私だと思っていたのに 私は 私ですらなかった …

わたしの立場

目に見えない 線を引き こっからこっちは 味方です これより向こうは 敵になります 味方が叩かれれば 飛んでいって 擁護&擁護 隙きあらば 敵叩き 粗探し そのどこにも 中身なんて見えない 仲間だから守る 敵だから戦う 論理もなければ 柔軟性もなく ひたす…

季節

眠りこけ まどろみにまみれ 行けども 行けども 霞かかる 意識の中を彷徨い 朧げな薄暮に トイレに立つと 一つのものが 終わっていた 再び眠り まどろんだとしても 懐かしむことはあれど 受け止め 味わうには至らない

北国酔譚

肌寒さに 夏の終りを感じ 思いやるのは 北国のこと 寒風が 肌を突き刺す晩秋に 襟を立てながら 店に駆け込む 湯気を立て まどろむ熱燗と じゃっぱ汁 脳は蕩け 記憶は朧げ いつまでも 猪口を上下して 上気した顔で店を出れば 寒風に酔も覚める

旅にまみれる

いつの間にか 疲弊し 摩耗していた 肉体と精神は 無自覚に 動きを止める 一歩 外へ出て 空気を吸い 草木の匂いを感じ だらけ 寝転がり だがしかし 存分に楽しみ 日常と異なる 疲労を抱えて戻る 普段の床で 旅の疲れを味わい 思い切り寝て 日常に回帰した時 …