2018-01-01から1ヶ月間の記事一覧

On the road

物事には 始まりと終わりがある 本も映画も 学校も仕事も 旅も人生も それぞれの 道の途中で 時に 止まり また 進む 難儀なのは 終わることは分かっていても それが完成とは限らないこと 突然の終焉 不本意だろうが 強制だろうが 無自覚だろうが お構いなく …

頑固な石

頑固な石 硬くて 固くて たたいても 落としても 割れず 頑なさに 閉口する へんてこな形で 何に使うことも出来ない 刃の形なら ものが切れるし 丸ければ 漬物石でも 平たければ 土台でも まな板代わりにでも なったのに デコボコして 丸くもなく 尖ってもな…

寒風残雪歩

今日も風は強く 身を縮め 街を歩けば 路地のそこかしこに 氷のように固まった 雪が残る 冷たい風は 人の身も心も 固く閉ざす 残った雪は 溶けゆく周囲の中で 意地を張る 頑なさを 思わせる ちょっとやそっとでは なくならない だが最後には 溶けて消えるのが…

銭湯がなくなる

この街の銭湯が また一つ廃業した 高い天井に 広い湯船 足を伸ばして浸かる 風呂の気持ちよさ そんなものは もう要らないって この時代は囁いているのか 今でも 子どもたちは お父さんと銭湯に来て 嬉しそうにはしゃいで 風呂に入っているのに 年寄も若者も …

酒の悪戯

健康は何より大事だが 人は健康のために生きるわけではない のっぴきらない付き合いで 遠方よりの来客で 時には自棄で ごくごく稀に 飲みすぎるのは 避けられない 飲む前の覚悟は 酩酊の中に忘却し 後悔だけが残る 鉛が埋まった頭 ズキンズキンと拍動が響く …

酒屋閉店の日

今日ひとつの店が閉まった 満員の店内 花束を贈る人 飲んで 飲んで 何百回も飲んで 店は淡々と閉まった 名残を惜しむ人は 店の前に佇み 手持ち無沙汰に 時間を浪費し 仕方なしに 他の暖簾をくぐる 知らない同士 酒酌み交わし 50年続いた 店の噂話を どこまで…

雪の後のまつり

雪のこる街は 未だ日常に戻りきれず 間引き運転や 通行止めが続くなか 人々は 仕事に買い物に遊びに 家を出てゆく 大渋滞の道路 バス停に並ぶ列 押しくらまんじゅうの電車 動くことすら叶わない 混雑と喧騒 刻々と過ぎる時間 人の熱気にのぼせる 焦燥はつの…

鍋つつく夜

豆腐に白菜 春菊にねぎ 葛きり 豚肉でも牛肉でも鶏肉でも 好きな魚介でも 醤油でも味噌でも ポン酢でも 好みで組み合わせ 鍋で煮る 湯気が立ち上り くつくつと煮える音 穏やかさと余裕のある 食卓の団欒 ちまちまと 食材を入れては煮て 時間をかけて食べる …

雪の夜

空から 白い粉が舞い降り 景色を 一色に染め 人の姿も消え 車も通らず いつもの喧騒が 嘘のように 街は 静まり返り 雪だけが 降り積もる 生物の鼓動なき 静謐は 冬が生んだ世界の 厳しさと美しさを際立たせ めぐる季節の 一つの極点が しんしんと 染み込んで…

つながらない回線

突然 ネットがつながらなくて プロバイダーに電話 オペレーターにつながるまで 数十分 つながって 設定の確認 再起動 他の部署に移動 移動して 同じことの繰り返し たらい回して その度に 長いこと電話口で待つ 結局 担当者から 電話がかかってくるという 翌…

安定と不安定

安定には山も谷もなく 不安定は平らでない 安定であれば明日を予期し 不安定なら予測不能な未来が待つ 安定は硬直で退屈で安心 不安定は変化し興味深く危険 落ち着きたいところを安定させ 変わりたいものを不安定にする 代わり映えのない朝食によって 確固と…

我家に残る戦後

戦中戦後 貧しかった母 ひもじさが生んだ信念 食べ物を捨てない 着る物を捨てない その他 捨てる理由がなければ けっして捨てない 戦争が終わり 爾来七十余年 我家の冷蔵庫には 賞味期限切れ食品が溢れる スーパーのビニール袋は堆積し 三十年は履いていない…

落陽の十分前

未来への期待 子供の成長 長期休暇 ボーナス 給料日 週末 仕事終わりの一杯 一時間後の昼食 遠くても近くても 将来を楽しみに待つこと 逆に 布団から出たくない 職場に行きたくない 嫌な人と会いたくない 働きたくない 体調が悪い 病気が気になる 老いへの不…

嘆きの機会

毎日のように通っていた 映画館が 喫茶店が 本屋が なくなってしまう 生活の一片が 失われた 空白に ひゅうひゅうと 風が吹き込んでくるような 寒々しさ 穴があいた 喪失感 今まで味わってきた 憩いのひとときは 二度と戻らない ・・・ しかし 私は知ってい…

空気のような自然のものの言葉

好きなものは空気です 好きな飲み物は水です なんて 言わない 好きか嫌いではなく わざわざ言うまでもなく 空気も水も なければ生きられず 大切と言う以上に 必須なのだから ありふれているが ありふれていなければならないもの 言葉もまた ありふれていて …

自由と自己規定

自由になりたい 何にも縛られたくないと 連呼しながら 住む場所を固定し 働き方を決め 話す言葉も 普段の振る舞いも ルーティン化して 人は己を 自由とは程遠いところへ 導いていく 縛ることで 自分とは何をする者か どんな存在か 固める 固まったら 逆に 自…

快眠辞

健康のうちで よく眠れた朝ほど 幸せなものはない ある時は寝坊し 目覚まし時計に起こされ またある時は 夜半に起き 悶々として眠れない おだやかな入眠には 心地よい疲れと 適度な食事と 悩みのない精神が 伴わなければならず 十分に眠り続けて 朝を迎え ま…

食べる

咬む 砕く 飲み込む 食べるという行為は 攻撃し 吸収し 専有する 暴力的な衝動を孕む 固い肉を引きちぎり 何度も何度も 咀嚼する 美味しいや不味いとは別の モノを取り込む欲望が蠢き そうした感情に支配された時 精神はバランスを失い 食欲の塊と化して ど…

大木のように

同じ場所で 逃げも隠れもせず 根を張り 葉を茂らせ 気の遠くなる年月を経て 生き残った古木 分厚い樹皮は 傷も裂目も飲み込む すでに勢いはなく しなやかさも失った 代わりに びくともしない太い幹と 何事にも動じない安定 ただ在る事 鈍く 強く 鈍重である…

ごまかす

透明から混濁へ 秩序から混沌へ 有耶無耶に 不明瞭に 自らの精神を ごまかしてこなかった者など いるのだろうか 規律や目的が 明確に透徹でき 真直ぐ前を向けた その心地よさとは 裏腹に 人の心には 闇が住み 傷が残る そんな辛さを 直視することは 絶対の正…

冬の雨は冷たくて暖かい

シトシトと小路に 滴が落ちる 冬の雨は 足元を濡らし 体を震わせる 湿った夜 凍らない 水の匂いが 路上から立ち上がり ゆるやかな寒気が 鼻を突いて 家路をいそぐ 足を速める アスファルトに散らばった 水粒の塊は 街燈を映して キラキラと瞬き 乾いた寒風に…

息を吐く

深く 大きく 息を吸って 目を瞑り ゆっくり 静かに 吐いてゆく 意識は 自然と 内に向かい 吐息と 鼓動を感じて 己を取り戻す どこに居ても 何をしても 手が動き 足が動き 自分が自分であると 分かるなら 落ち着いて 世界と対峙できる

夢と現(うつつ)

苦しい時や悩んでいる時に 悪夢は見ない 恐ろしい夢は 楽しい現実を送るなかに現れる 精神のバランスを取るかのように 無意識は働く そして 意志もまた 充実した仕事や暮らしの中で 意識することは稀で 窮地に陥り 現実に苦しむときにこそ 抜け出したい 変わ…

生活と言葉

生活が充実していると 詩や文学への関心は おざなりになる 辛く苦しいほど 詩へ 言葉へ すがろうと 思いを 吐露しようと 真剣に 表現を模索する 幸福な物語は 人を安心させる 悩んで 真摯に生に向き合う表現は 人の心を打つ 小手先の修辞では 決してたどり着…

寝正月

寝て食べて 寝て飲んで 寝て 寝て ダラダラ過ごす正月 実際は 年賀状の返事書きと 初詣やら 帰省やらで 意外に忙しない正月 ダラダラするのに わざわざ スケジュールを空け 意気込むかのように 寝惚ける そうしなければ ダラダラしていても あれやこれや や…

お腹が痛い

辛いものが大好きで たまに食べ過ぎ その夜中 お腹が痛くて トイレ行く スッキリ サッパリ さっきまで 痛かったのが嘘のように 気持ちがいい 横になれば ぺっこり凹んだお腹が 静かに確かに 脈打って 心地よい疲れと 眠気の中で 目を閉じた時 苦痛から解放さ…

繊細だから鈍感

いつも様子をうかがい 細やかに気配り よく気がつく 一語一句を噛みしめ 些細なことも忘れない くしゃみ一つで 風邪を引いたか気遣う 繊細であること 痒いところに手が届く人は 人の気持ちを慮り 常に周りに目を光らせる 有難く なかなか出来ないことだが 細…

楽園の初夢

不老不死 あらゆる快楽 夢のような世界に誘われ 遊び尽くし 疲れた どのような快楽にも 人は飽きる もうお腹一杯だ この楽園の終末は どこにあるのか そのとき 至福を謳歌していた この場所が 隔離された檻だと 気づいた 逃げられず 止められず 終わることが…