2017-03-01から1ヶ月間の記事一覧

春の喧騒

冬の冷気が緩み 生命がうじゃうじゃと騒ぎ出す 羽虫が飛び カエルが鳴き 水が濁り 桜が咲く 雑多で混沌とした 鳴動の予感の下 人は別れ巣立つ 春は不安の季節 先は見えず 足元はおぼつかず 弛緩した大気に包まれ どこか上気している 喧騒が晴れ 五月の強い日…

精神飛行

自分には何もない 空っぽで せつなくて 疑い深くて 嫉妬深くて 足りないものに満ちている 自分には多くがある 食べるものも 寝る場所も 文学も音楽も 体も心も満たすものがある 満ち足りていて 満ち足りなくて あるものには心動かず 無いものの方ばかり向い…

不安、不定、不安定

いつからか不安定が怖くなった 若い時 変化は怖くない 学校が変わり 人間関係が変わり 仕事が変わる 変化には不安がないとは言わないが それは希望も内包していた 新しい学校 新しい友人 新しい仕事 変化は挑戦を伴い 成長を促し 自分を良い方向へ変えてくれ…

一生懸命

一生懸命は簡単ではない ボールを力一杯投げようと 頑張ろうとしても 投げ方が分らなければ ボールは遠くへ飛んでくれない 自分の中にあるエネルギーを ボールに伝える技が必要で それが分からなければ どんなに力んでも 力を発揮したという充実感は持てない…

生きるかたち

うらぶれた酒場で くだを巻く男 仕事が大変だ 明日も早出だ 上司がうるさい こき使う会社だ オレはよくやってきた がんばってきた 不満はあるが マシな人生だ いくつもの夢を抱き ことごとく破れ 都会の片隅に収まり 名を成すこともなく 努力もせず 毎日酒浸…

博打

ギャンブルはやらない だがギャンブル小説は好きだ 博打をしても 勝てるはずがない 負けを積み重ね たまに勝てば 儲けた金で博打をする 生かさぬように殺さぬように 徐々に金を搾り取られ いつか首が回らなくなるだろう それでも 損をすると分かっていても …

文学への憧れ

文学を読もうと思ったのはいつからか 小説も詩も 子供の絵本の延長で 何も考えずに触れてきたけれど ある時 文学という言葉を知って 憧れた その時の初期衝動は 立派な人になりたい だった 知識や教養ではなかった 人の気持ちを解かって 悩みや苦しみに心砕…

死者と夢

友人と遊んだ楽しい夢 それが覚めた時 ああ あいつ死んでたんだ と気づく こんなことが増えた 死は特別でない それどころか 夢も思い出も死者に覆われていき もう少しすれば 記憶の多くも 死者のものになる 若い頃 本を読み映画を観て 肉体より精神の世界の…

人に優しく

人にやさしくするとき 全く違う二つの気持ちが 背後にある 一つは 信頼に満ち 相手を大切に思って 気持ちを通わせたいという動機 もう一つは 信頼が崩れ すでに修復不能で 気持ちを通わせたくない 揉め事を避けるため 自分を守りたいという動機 丁寧に丁寧に…

人生は勝ち負けじゃない

人生は勝ち負けではない 願いが叶ったり 願いが叶わなかったり 時に白と黒がつくが 叶わないことばかり願えば 不満と不幸にのみ込まれる 願うことを放棄すれば 停滞と虚無に襲われる 昨日より今日を良くするために 今日より明日を良くするために どんな小さ…

トカトントンを想う

ただ生きるということが 並々ならぬと 気づいたのはいつからか 喜怒哀楽に一喜一憂し 雑事に追われ 叶わぬ希望を持ち 失望にさいなまれる なんと忙しいことか 不愉快は次々と襲ってきて それを取り除くことさえ 徒労でないかと思いもする 腹が減っては飯を食…

断絶の辞

穏やかな生活の有難みは 悲しいことに 失われるまで分からない 病気にならなければ 健康の有難みが いなくならなければ 人の有難みが 分からない 人との付き合いが苦痛で 縁を切りたいと 何年も考え続け その度に 関係が終わるのは一瞬だ もう少し我慢しよう…

大衆のもの

かつて 大衆という言葉は 我々の味方であった 大衆食堂 大衆文学 大衆娯楽 安い 安心できる 身近に手が届く 我々と共に在り 我々の生活を支え 我々が共有するものであった それが今 世間に氾濫するのは 差別化 一味違う ちょっと豪華な 他の人より 自分が良…

曇天に告ぐ

厚く垂れ込め 光を遮る雲よ 汝は 天蓋の最も下位にあり 地を覆い 而して 地に落ちず 空に浮かびながら 十全な重さを思わせる 汝は 我が精神に巣食い 蓋となり 視界を塞ぎ 目を曇らせ 迷わす 心沈み 陽射しはなく 気は淀む 雲よ散れ 我は風を吹かす 身が千切…

雑踏の中の憎悪

無関心がひしめく街頭で それぞれに揺れ動く個体が 怒り 哀しみ 苦悩し 嫉妬と劣等感を抱え それでも群れを離れずにいる 負の情動を 解き放つ機会を窺い だが行動せず 転換と欺瞞を繰り返し 自己を保存する 如何に生きようが 人の勝手で 人はみな一人なのに …

花粉症者の光

重度の花粉症だ くしゃみが止まらない 涙が止まらない 鼻水が止まらない 炎症になった鼻をかむたびに ティッシュに血が交じる 鼻が詰まって酸素不足で頭痛がする 鼻水が食道に常に降りてきて胃が持たれる 春はつらい いつも寝不足 いつも憂鬱 とてつもなく辛…

尊敬する人

尊敬できる人を思い浮かべる 飲み屋の親父 知識を持っているわけでも 教養があるわけでもない 美味しい魚を 安い値段で供す 働き者だ 朝起きて市場に行って 昼は弁当を作って売り 夜は飲み屋 たった一人で全部やる 休むのは元旦だけ 労働時間はそんじょそこ…

美しい悪夢 Traum + a

同じ夢を見る 昔の夢 朝から晩まで仕事をして ボロボロの雑巾のように 使い古されて 捨てられた それなのに あの頃の職場の夢を 繰り返し見る みんな良い奴らで 私を温かく迎え 信頼に満ち 笑顔が絶えない あの時 私が いつも見る夢のように 暖かい時間を過…

耐える

苦しいとき つらいとき 耐える 踏みとどまる その時は分からなくても ただ耐えていること自体 前進しているのに等しい そういうときがある ただし 我慢に我慢を重ね 死んでしまったら元も子もない 忍耐は善ではない 忍耐と徒労は違うものだ それを承知して …

震災はいつもある

理不尽な死に対して何ができるか 地震 津波 備えても完璧にはならない 我々の周囲には 常に理不尽な死がある 交通ルールを守っていても 突っ込んでくる車はある 道を歩いていたって 頭上から物が落ちてくるかもしれない 通り魔だって 突然死だって 死ぬこと…

焦燥

嫉妬は他者への否定的な感情 憂鬱は自己への否定的な感情 どちらも背後には焦燥があって 人はつねに誰かと自分を比べている 誰かが先へ進む 出世したり成功したり 結婚したり出産したり 自分に叶わないものを手に入れる 過去の自分と今を比べる 若くエネルギ…

ターミナル

乗り換え駅には 今日もたくさんの人がいる ただすれ違うだけなのに この熱気と活気はどうだ エネルギーが充満している 誰とも話さない 誰も相手にしないし 誰にも相手にされない 大勢の中で ときに孤独が際立つ それでもなお 多くの人の群れにいることの 安…

想起 苦悩 後悔

思い出しては後悔する 過去の記憶 なぜ抱えているのか なぜ苦しめられるのか 取り返しがつかない 忘れたいんだ この記憶とともに私が構成されていると考えただけで 私は私を否定したくなる 辛い記憶は誰にでもある 忘れたくても忘れられない その人に張り付…

苦しくとも決して卑屈になることなかれ

苦労することが良いわけじゃない 苦しんで回復できないほど傷ついてしまうことだってある 愛されて育ち 世の中を信頼し いつも笑顔を振りまいている 余裕がある人は素敵だ 一方でそんな人は 塗炭の苦しみにのたうち回る人生を 想像できないだろう 苦労するこ…

馬鹿にされて思う

人から馬鹿にされたり 見下されたと感じた時 自分がもっと金持ちだったら 社会的な地位があったら そんな態度は取られないのではないか と考える だけど 自分が金持ちで偉かったとしたら 人から親切にされても 心から感激せず 相手は金や人脈や出世が目当て…

祈ること

いつも祈っている 宗教に入信しているわけではない だが望みが叶うように 何かに願い祈っている 神様がいると思わないけれど 苦しい時ほど 痛い時ほど 取り除いて欲しいと ただ祈る その祈りによって 正気を保つ 祈るという意志が 私の中から現れて 私を導く…

空腹の詩

どんなに疲れていても 眠れない夜がある 動きたくない 何もしたくない 空腹だけを感じる 胃が渇望している 生きている 体が生きている 今まで厄介だった空腹が 私に生命の活動を知らせる 動け 動け 体よ お前は腹が減るのだ お前の臓腑は 今もお前に生きろと…

目の前に死

私の前に死にゆく男がいる 酒に溺れ 職を失い 家族は離れ そして酒に溺れた つやのない肌 紫色の唇 世界を怨む言葉 堕ちてゆく ただ堕ちてゆく男 もう酒も臓腑に落ちていかない その前で何が出来るか 星の数ほど揺らめく命のなかで この男が死ぬのに 私は関…

昔の夢

若い頃 朝から晩まで外にいて 仕事して フラフラになって家にたどり着き 水を一杯飲んで 倒れるように眠った 今 朝から晩まで蒲団の中で 何もせず ダラダラとネットの世界を放浪し 酒を飲んで 記憶をなくして眠る 今のほうが幸せだ 昔は忙しかった いつも眠…

立つ

私は立っている 地があり 天があり 風が吹き 人がいる ただ在る 心は動いて初めて在ると分かる 喜び 哀しみ 怒り 動かないところに 感激はないのだ 命という土台の上で 心が揺らめいて 生きているのだ 心を動かすために 体を揺するのだ ただ立っていると 揺…