目の前に死

私の前に死にゆく男がいる

酒に溺れ
職を失い
家族は離れ
そして酒に溺れた

つやのない肌
紫色の唇
世界を怨む言葉

堕ちてゆく
ただ堕ちてゆく男
もう酒も臓腑に落ちていかない

その前で何が出来るか
星の数ほど揺らめく命のなかで
この男が死ぬのに
私は関わるべきなのか

分かっているのは一つだけ
この男はもう死ぬのだ

逡巡しながら
私は見ている
ただ見ている