2019-01-01から1年間の記事一覧

出かけます

新年まで出かけます 今年も終わり

傲慢に

一年が無事で良かった 何度も何度も繰り返し 停滞を続け やがては 現状維持すら困難になる 若き日に 去年と同じ今年など ありはしなかった 無事を感謝など しなかった 傲慢だった 傲慢でなければ 前に進めなかったから 年寄りの傲慢は 醜悪となり 迷惑の種で…

選べなかった残り

選ばなかった 選べなかった 選ばれなかった 望んで捨てた 望んで捨てられた 望めなかった 選択を重ね 選択にさらされてきた 思い通りにならずとも 自分の人生と言える程度には 自分で決めたものがあった 選べなかった生まれ育ち 今は 半生を少し選べる 後悔…

機械のない街

仕事を機械に奪われて あれも これも 人間は やることがなくなって 役立たずになって それでも 依然として 人間である 馬鹿だとか 無能だとか 関係ない 人間は いつまでも人間で 機械に使われるようになっても 機械のほうが偉いわけじゃない 便利かどうか決…

つまらない自責

つまらない こんなに恐ろしいことがあるか なんの制約も受けていない世界で 何か追われるわけでもなく 縛られてもいない 何もかもが 自由であるはずで 自分の人生は 自分で決められるし 自分の書きたいことも 思う存分書ける そう 思う存分 書いてきた はず…

配剤にしたがって

事を起こそうとする その時に 雲立ち込めて 豪雨が襲う あるところへ 出かける度に なぜか不運に見舞われる 確率では 全く合わぬ 巡り合わせ 自己暗示か 過去の記憶の過大評価か いや そんな簡單なものではない 天の何かが 全力に止めに来る 災害の発現 戦い…

分からないのはわたし

何十年付き添って 好みも性格も分かっていると思っていても 忖度しそこなったのは 数知れず 他人だけでなく 自分のことでさえ 気分や体調 普段なら思いもつかない振舞い 意志と論理では 支配できない 感情の起伏は 時に解放させると 心地良く 身を任せると …

コンビニのゲーマー

コンビニのイートイン 隅に座る三十代の男 コンセントをすべて使い スマートフォンを5台並べ ゲームを起動して 驚くべき速さで タップを繰り返す 時折メモを取り 再びタップに集中 のめり込む姿に 近づくのを躊躇する 彼の振舞いを横に コップ酒をあおる こ…

ネパール人の夫婦

場末の小さな店 ネパールカレー 若い夫婦の 日本語はたどたどしい 昼は旦那がカレーをつくり 夜は奥さんがやる 同じメニューなのに 味が全く違う ほろ酔いの夜に 立ち寄れば 子供が泣き叫んでいた 知らない街 異国の地で 客も全然いない ただ泣き声だけが 空…

懐かしき匂い

どの時代を思い出せど 匂いがまとわりついていた 家を整理し なつかしい品々に再会する ふと 立ち昇った匂い 脳裏を揺さぶる 昔が走馬灯のごとく流れ 言葉を失い ただ涙が流れた

婆の店

黒光りする板 煮染めたような 年輪の蓄積 一人で始めて 六十年 くたびれ果てた 人と店 おでんの 湯気だけが 立ちのぼる 時が止まっていた 女将は 九十と言った しみじみと ゆっくり飲んだ 常連は 皆死んだ ただ店だけが 残っているのだった 女将の 昔話に付…

鋭角の流れ

削り上げ 磨き上げて 純度を高める 絞り込み 尖らせる 無駄のない カタチのモノ 美しく 完全で 壊れやすく 繊細 きれいだけれど 弱い たゆまぬ研磨は 一つの傷で 終わるのか 純粋さを求めて 先細っていく 尖れば 壊れずにいられない 太く 強く 広く 大きく …

豊年取り

冬の最中 生暖かい夜 緩んだ 忘年会の喧騒をよそに 一人 街の活気を飲み下し 彷徨を重ね 気分は浮つく 厄災もなく 進展もない 一年が過ぎて 安寧と 少しの悔悟 人生の味わいそのもの 何事もないことの 良さと辛さ 辛さは 年を経るに連れ 薄れ ただ歳を取り …

雨に打たれて

冬の雨は 雪よりも重く 霧に覆われた世界を しとしとと 濡らしてゆく 雨に打たれ 染み込んでくる寒さ 誰もいない夜 とぼとぼ 坂を下る 背中に降る雨を感じて 迫りくる寂寥 煤けて 点滅するアパートの蛍光灯 ここに一人だけ 月も見えるぬ夜

不断のままに

続ける 何も思わず 後悔や 反省を飲み込んで 困難も 怠惰も振り払い 自制も 躊躇も忘れ 雨の日も 風の日も 何が見えてくるのかなど 分かるはずもない 薄く 1ミリの層が重なって 厚みを持つ それだけを信じて 続ける 何が変わっているのか 気配の欠片もなくと…

無意識のあふれる夜

体の芯まで 冷えてくるような夜に 遠くから 子供の泣き声が聞こえる 忘れていた昔を 召喚する 感情の塊だった あの頃の無意識を呼び戻す 生き物の本能に 訴えてくる呼び声が 心を震わせる こんな寒い夜に 記憶の蓋は開き ドロドロに混ざった感情が流れ出すな…

げんこつ煎餅のような生

拳ほども大きくて どこから口をつけたら良いか 見当もつかない 取っ掛かり 歯を立てても あまりの硬さに 歯が立たない 悪戦苦闘のげんこつ煎餅 それでもなお 醤油の焦げた 香ばしさと 飴色が重なった 濃い褐色の肌合い 焼きしめ上げた いかつさの佇みに 食べ…

小さな旅に

何十年も住む土地の 隣の街へ 穏やかな小春日和に 住宅街の坂を登る 知らない路地 未知の風景 すぐ近くなのに 新鮮な体験 漂ってくる旅情 小さな酒屋で 一杯引っかければ 気持ちは浮いて 異邦人の面持ち 酒はすすみ 旅の気は高まる 食堂でホイコーロー 若き…

隠れたいけど見つかりたい

およそ自分に自信を持てず 愛情が受け入れられるなんて 信じられない 気になって 人の周りをうろちょろし つかず離れず 照れ隠しの愛想笑いで 表情を固め はたから見れば 滑稽なほど まとわりついて 離れない あの人に 見つかりたいけれど あの人に 見つかり…

目的を失った歯車

まどろみの中 何かをつかんだ 手に入れたと思った 真実の欠片を 起きれば もう憶えていない 追い求め 探し求めたものが 何であったのか ただ探し ただもがき 目的すら 見失っても 探索をやめられない 止まることが できない病 ただ続けている 続けていること…

理性より感情で

計算して 書けない 前もって 準備して 内容を吟味して 構成を考えて 筋を通して 計画通りに 練り上げる そんな 綿密な文章が 書けない だらしがないのは 分かっているが 書いているうちに 湧き上がる 発想に支配され 言葉は 流れ流れて 骨格も溶解し テーマ…

旅のこうよう

旅に出れば 高揚する心 旅を想い 旅に酔い 旅を詠い 旅に人生を重ねる 短く 仮初の生き様が 旅にあり 旅人という仮装は 自由と放任と 望洋の浮雲をもたらす 知らない土地に赴き 異人となり 生活から解き放たれる 旅に出ている間 心は洗われ 生活は天日干しに…

歌を想えば

気分転換でも 暇つぶしでも 詩を書いているのなら その時は当事者で 真剣に書いていないからダメだとか 遊びだと馬鹿にしたところで 文学の裾野は広く 動機など千差万別に 名作は成立する 作品そのものをよく読めば 切実さがあるか否かは すぐ分かり 意外な…

心のスケッチ

耐え難き魂の爆発と 積み上げた文章の裏打ちと 文学は 二つを両立させねばならぬ コツコツと努力して 描けるようになるほど 精神は平坦ではない 自分の中に蠢く想いを 何の苦もなく表せるほど 言葉は単純ではない 精神的な格闘と 言葉を操る鍛錬 どちらが欠…

出かけます

出かけます。 10日ほど。

人の紅葉

季節の移り変わりは コンクリートの林にも訪れる エアコンや 様々なテクノロジーで 超克したと思っても 季節は人に差し込み 人を揺らし 人を変える 日の暮れ方に映る 紅の空よ 胸の奥まで響く 寂寥を運ぶ 年の暮れ 葉が色づき 木枯らしが吹けば あとは 忙し…

心で跳べ

心身合一が理想でも 体と心は いつも上手くいくものではない 体は心に引っ張られ 心は体に引きずられる 病や疲労が 心までも萎縮させ ついには ポッキリと意志を折る その前に 壊れる前に 手当てして 体を維持し 心を奮い立たせて 跳べ 気持ちが萎えた時 い…

生活が、帰ってくる

3ヶ月籠った 何も見なかった 何も聞かなかった ようやく戻ってくる 私の生活 心を飛ばして 夢を見て かなたの街へ 飛び立てば 心の炎に 火がついてゆく パッションも ドリームも 対象がなければ 燃やせないもの ここではないどこかへ 夢を探しに 現実を超えて…

ボウイチの街

ボウイチの住む街は 貧しい都会 たむろするホームレス 大きな外国人街 夜にはネズミが動き回り 朝はカラスが餌を漁る ボウイチは 街を歩き回る 百貨店では買い出しの行列 公園では炊き出しの行列 ボウイチは この街が好きだった 金持ちも貧乏人も ヤクザも外…

ボウイチの先生

ボウイチの故郷は 山の奥 小学校と中学校は一緒で 生徒は五十人 先生は五人 雪が降り積もると 誰も街に出られない 先生は気分屋で 冬の間 教室でよく酒を飲んだ 憂さ晴らしに よく子供を叩いていた 雪に閉じ込められ ボウイチは憂鬱だった 先生は遊ぶのが好…