2019-12-13 婆の店 黒光りする板 煮染めたような 年輪の蓄積 一人で始めて 六十年 くたびれ果てた 人と店 おでんの 湯気だけが 立ちのぼる 時が止まっていた 女将は 九十と言った しみじみと ゆっくり飲んだ 常連は 皆死んだ ただ店だけが 残っているのだった 女将の 昔話に付き合い 杯を傾け 白菜を頬張って また酒を飲んだ 人が無くしてきたものが 残っていた