2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

宵待ちの寝言

知識は筋肉と同じだ 使わなければ萎んでいく 知り得た喜びに酔い 調子づいて天狗になっても いつの間にか その知識はボロボロ 穴だらけになっている 終わってしまった人生の 余韻を愉しむ宴に 穴のあいた肴を引き出して 酔いさらばうも一興 断片でしかない …

政治的愚行に暗い先を見ること

ああ今日もまた コロナ患者は激増し 右へ左へ大騒ぎ あとしばらく増えれば すぐに騒ぎは収まるのに 政治家は 愚かな対応をしようとしている 英仏の先行を見て 真似ていれば良いものを 何かをしたがって やったふりをして 科学も知見も 参考にせず 民を縛るこ…

夜の泣き声

通りすがりの道端で 若い女性が泣いていた スマホを握りしめ 片手には 缶チューハイ 大声で 真夜中に 道路に座り込んで 泣いていた ここは都会の暗部 絶望と欲望の蠢く街 人の涙など あっという間に飲み込まれ 朝日が昇れば 何事もなかったように 街は動き出…

愚考

チリリン 自転車のベルが鳴る チリリン またベルが チリリン 再び鳴った 混み合う歩道で いらついているのが分かる 抜きざまに 舌打ちをされた オレは 自転車の後部を蹴り飛ばす 後輪はブレ ヨタヨタとガードレールに寄りかかる いきり立った運転手が向かっ…

崩れゆく肉体

なぜこんなに 糜爛した肉体が 忌み嫌われているのだ 腐りかけた末端には 蛆がたかり だらだらと 体液が滲み出ては 滴っている 饐えた腐臭 しかし いまだに 私の匂いだ 四つん這いの後には ナメクジのように 光る筋が残り 削れた肉片が 散らばる 私が壊れてい…

復讐の狂人

復讐心が暴れている 煮えたぎった憎悪が 世界を怨嗟で満たす なんと醜悪で 興奮を掻き立てるのだろう 怒り狂った人間の 止めどない濫行は いつまで見ても 飽きることがない 四方八方に喧嘩を売っては 失望を買い 離れていく周りに さらなる怒りを滾らせ ます…

被害者の不幸

被害者の特権が 猛威を奮っている 傲慢な被害者に 苛立ち 心なき言葉を 投げつける者たち そのことに 二次被害だと いきり立ち 負のスパイラルは 加速してゆく 被害者が 被害者の立場に固執し 復讐の徹底を求め 報復が行き過ぎても 過ちを認めない 被害者の…

彼の夢

夢ばかり見ていた 夢を見て 夢に溺れ 現実を見ず 現実を放り投げた いくつになっても 夢ばかり見て 地道な努力も 現実との折り合いも 何もなく 而して 何も手に入れていない 年老いて 遅いと嘆くのも あまりにも 哀れで しかたなく 未だに 夢ばかり見ている …

オミクロンの豊かさ

ここに来て 再び流行るコロナ禍 出歩くな 人と接するな 気をつけろ 感染するなの大合唱が ようやく 変わってきた ある者は 感染を恐れ ある者は 自粛による停滞を恐れ ある者は 社会の締めつけに反発する やっと バラついてきた すこしずつ 主張できるように…

生を飢える

検査を前の 絶食にあり 空腹が 波のように襲ってくる 飢餓 くるおしいような 気が遠くなるような 腹部にくすぶる 物足りなさと不快 しかし いつまで我慢しても 絶望には至らないのだ 飢えているだけ 生への渇望が増してゆく 日常の悩みは吹き飛び ただ ただ …

死者は蘇る

道を歩いているだけで 記憶に流され 一冊の書名に 死者の思い出がまとわりつく 遍在する死者に いつ何時 遭遇するかも分からず 記憶の再生は よく悪夢をもたらす 頭の中に棲む死者に 出会うのを恐れ 記憶の檻に捉われると 生は いないはずの死者に 搦め捕ら…

蟻の生

巣を突かれると 飛び出て いかなる巨大な相手にも 立ち向かい 死など 恐れる素振りもない 巣を守る 種を守る それは 己の命より大切だと わかるのだろうか 人ならば 兵士になってもなお 己の命と 己の使命の 間で惑う 己より大切なものがあると 信じる者がい…

裏切る体

脂汗滴り 悪寒に震え 体から力が抜けていく 何かを食べた報い 動けず 思考は奪われ 生命が遠のき 混濁した一個体は 物質化に抗い 小刻みに痙攣し続け 時の過ぎるのを待つ やがて終わりを迎えるまで 神経に尖った刺激は 与えられ続け 安らぎを求める精神は 疲…

記憶の尺度

到来する寒波さえ どれほどのものか 記憶によってしか 理解できない この寒さも 経験だけが判断する 酒の旨さも 人の良さも 記憶を頼りに 判断して 辛辣な記憶と 甘美な記憶の どちらに寄り掛かるか 気分で決めて いつの間にか 記憶に酔っている 世界を美し…

時の浪費

頭がいいとか悪いとか すでに興味はなくなった 美しいとか美しくないとか 正しいとか正しくないとか 輪の中に入れば 口角泡を飛ばし 人生がかかっているかのごとく 拘泥を重ねたものが さっぱりとなくなり 今は どうでもいい どうでもいいせいか さびしい さ…

夜に思う

眠れない夜は 思い出したくもない昔や いくら考えても 解決しようのない不安が 頭をもたげ 止めどなく溢れ出し 心が 恐怖と不快で覆われる 一度因われ 向き合ってしまったら 眠ることなどできない 忘れていたこと 忘れるべきこと 思い出す必要のない ささい…

停泊地

漂流している生 人はもともと 何も持たないものだから 心に錨を降ろし 安定を求める 家族に落ち着き 仕事に居場所をつくり 在るべき場所を 自分で決めて その中で 自由を探す ふわふわ ふわふわと 何も持たない 漂流者は 多くの者には 不安だから 本当は も…

拷問風景

自分のために 身内が拷問にあっていたら 辛いだろう 茹で釜に 半身が浸り 引き上げられた足腰は 赤を越えた どす黒さ 煮えたぎった湯に 再び入れられる間際 わたしは 傍観者で 何もできない 悲しむことも 苦しむことも 演技なのかと 思うほど ただ見ているだ…

なりすまし

変身願望の発露か 仮装趣味か 他者への憧憬が生む なりすましは美しい 自己卑下と 自己否定の末 己に対する 絶望から 自分自身で居られなくなった時 仮想空間で 仮装をするのなら それは 自分への恐怖と嫌悪に駆られた 人生の逃亡であり 逃げる先で 如何に遊…

当事者であれば

当事者でなくなってしまった 過去 振り返れば いくらでも 同じことを繰り返していた あの時 騒乱の渦中では 何をしても 新鮮だった 今となっては 飽いている反復も 無知ゆえ 新たな発見として 興奮していた 距離をとり 熱が冷めれば しらけきった 愚行だって…

蛇の葬列

炎天下 蝉しぐれが降り注ぐ路肩 蛇が死んだ 死してまもなく 体に蠢く寄生虫 蛇の中に棲む虫たちが 命消える体から 脱出しようとしていた 近づけば 蛇の想念が 回り舞台に乗って 押し寄せる かつて胃の腑に入れた 生命の行列 彼を恐怖に陥れた 動物の表象が …

季節を詠う

目の前の風景を 時季に合わせて描写する 描く対象を思いつかない 主体性を失った その場しのぎの書き物と 思いながら 重ねてゆくと 人生の陰影と 毎年の輪廻と あと何度 この季節に身を置けるかと 名残りを味わう感慨が 身に沁みて 同じ季節を 同じように 淡…

生きるための言葉

生きるために使う 言葉が必要だ 生きるために 言葉が必要だ しかし 言葉は うまく生きる道具ではない ストレスのはけ口だろうが 出世のおためごかしだろうが 目の前の障壁を ちょろりとすり抜ける 便利な道具ではない ザイルとピッケルで 崖を登る時 ただ登…

雪の上の風

雪を渡って 吹く風は 寒く冷たく 肌を刺す 雪を渡って 吹く風は 人の心に 襟を立て 背中を丸め 縮こます カチカチに凍った道 下を向いて 歩く人々 寒く冷たく 息白く 早足で行き交うことも 叶わず めったに降らない この街の雪に 戸惑いながら 足を滑らせ 手…

雪の日の足先

下駄で歩く 雪の中 つま先に 雪かぶり 足指は赤く染まる 冷たさも 痛みも 歩くうちに消え 感覚は無くなり 指先は パンパンに腫れ上がっている それを見るにつけ 痛覚の消失に代わり 不安が増し 血の巡る体に頼り 雪道を歩いてゆく 銭湯に着いた頃には 湯をか…

割れ竹

寒々とした 山々に木霊する パチン パチン 竹が割れる 冷え切った日だけに響く 乾いた破壊の音 寒ければ寒いほど 音は遠くまで届き 焚き火の暖かさを いっそう引き立てる 晴れて 枯れきった山には なにもない 音だけが響き 孤独を教え また 命がここにある …

死者への言葉

毎日 いくらでも 人が死んでいるのに 一人死んで なぜ騒ぐのか テレビでは ご冥福をお祈りしますだの 適当な 言葉を並べ 見ず知らずの 会ったことがない人まで 追悼の念を表明する始末 心に正直なら とりあえずの冥福など 祈れるわけがない 人はいくらでも死…

美しい山の辺

もう 何も 為さず 終わるのならば 焚き火を囲み 山の辺の夕日を眺めて 終わりたい 山肌を照らす落陽 木の燃える匂い 山陰は暗くなり 寒さが迫る その中で ほんのりと 温かい光が チロチロしている焚き火 一日が終わり 薪もあらかた燃えた 消えるのを惜しみ …