2020-01-01から1ヶ月間の記事一覧

夕陽のびる頃

温温と 貪りし日々も もう盛りを過ぎ 陽は 後ろ姿を照らしている 振り返れば 眩しく 前には 影が伸びた この影が ますます長く 大きくなるにつれ 空は 紅より藍に移り 天穹をあざやかに 彩ってゆく 私は 立って ただ見送るだけ やがて闇に包まれる この場所…

風邪

この世界がままならないのを なにより教えてくれるのは 病である 熱と悪寒 鼻水と咳 目の焦点は合わず 精神は散乱して 働かない だるく 辛く 而して 全てがそこそこの症状で 中途半端なぶんだけ 本腰を入れて 治すに至らず 厄介で ただ待つほかない 急いでも…

誰もが子供だった

どうして あんなに楽しそうなんだろう 道を歩いているだけ ご飯を食べているだけ ウンコをするだけで キャッキャと騒いで ニコニコ笑って まるで生きるのが楽しいみたいに 世界に笑顔を振りまいて 子供は生きられる 誰だって 子供だったはずなのに 今は生き…

どうせ

何も持たず 生まれ落ちて ごちゃごちゃ たくさん 身にまとわりつけ どうせ死ぬ時は 一人だけ なんやかんや 有象無象の 処世に四苦八苦したって どうせ終わる どうせ死ぬ 細かいことに クヨクヨするくらいなら やりたいように やっちまえ 今まで築いた人間関…

場末ブルース

寂れて 人もいなくなった酒場では なぜ 胸の奥が薄ら寒いのだろう 安い酒 安い肴 白熱灯に照らされた おでんの舟 酔って 気が狂っては 嬌声と 怒号が飛び交い 忘れたい過去が 蘇り 名無しの群れが 下を向いて 盃を傾ける 混乱と破綻 一歩手前の千鳥足 何も考…

田舎の酒

魚が旨く 水が旨く 米が旨く 而して 酒が旨い 日本に偏在する 田舎の美味 平凡なれども 飽きることなく 日々 土地の魚で 酒を飲む愉しみは 旅の醍醐味 一杯啜る度 一日を思い出し 一年を思い出し 一生を思う 田舎で飲む酒は 郷土の匂いがつき 穏やかで狭量で…

旅に打たれて

街から街へ 移動を重ね 休む暇なく 動き食べ 慣れない蒲団で 雨をしのぐ 旅の疲れ それでもなお 旅は楽しく 日頃 溜まった心の疲れは 旅でしか 癒せない 知らない土地 知らない言葉 知らない食べ物 刺激が神経を疲弊させ 目が回るほど 動き回ったとしても 旅…

出かけます

一週間ほど出かけます

白菜を絞り上げ

塩をした白菜を 樽に詰め ぎゅうぎゅうと 押して押す 磨かれた白 萎れる葉脈 ひたすら 憎しみを込めて 樽に押し込む 料理に愛情が 必要だとすれば これもまた愛 詰まるほど 押しつぶすほどの愛 愛は濃く 憎しみと怒りとなって 白菜の身をしならせ 腑抜けた水…

イカゲソを噛み締めて

大都会の駅前にある 安酒場は どうして汚くて暗いんだろう ただ安くて 便がいいだけで 不味くて 無愛想で 胡散臭い 宿木にする者たちは うつ向いて 内省しているようだ 安酒を啜り イカゲソをかじれば 汚さも無愛想も どこ吹く風 話し相手もいなければ ます…

焼き肉メランコリー

わがままで 図々しいと言われても そんなくらい生意気なほうが 世の中を渡っていく 会社に入り 叱られ続け 角が取れて 丸くなって 世渡りを身に着け ずる賢くなっても 気がつけば 小物でしかない ほとんどはそうだ ああ あの時 あの場面で 言いたいことが言…

愚行発狂

連れにお茶を出しておいて 私には 自分で淹れて と言う 怒り狂った たかがお茶じゃないか いや たかがお茶だから 怒りが収まらぬ 些細なところまで 差別を持ち込む心根が 態度の違いの あまりの露骨さが 人を人でなくする わたしは狂人になった やかんをひっ…

ただ酒だけが

頭痛 二日酔い 何をしても駄目 何も出来ない 何もしたくない 床に臥せり 待つ ただ待つ 全身の倦怠と 悪心が過ぎるのを 何も考えられないのに 時間だけを持て余す はやく今が過ぎ去って欲しい そのことにイラつく 前日の痴態 深酒の記憶喪失 すべてを出し切…

侘しき日暮れ酒

約束をすっぽかされた日暮れ時 公園のベンチに座り一人酒 しんしんと寒さと孤独が身に沁みて 暗くなりこわばる世界が狭くなる 回る酔い つき放たれ解き放たれた 気持ちよさ かわいそうな自分に酔えば 卑屈もまた酒の肴 被害者ぶっているだけで 自分の殻に閉…

雑譜

前と後 未来と過去 志向の幅 振れる心 乱れることを望み 乱れたら 逃れたいと願う 積み上げる日々 崩れ落ちる刹那 二項対立の果て 待つは無 くじけるな どんなに希望が遠く 望みが薄くても 怒りも 憎しみも 過程にすぎない 精神が揺られ 酔うて目が回ろうと…

言霊

心で願うばかりより 口に出した言葉こそ 本当のことになる 明るい 前向きな言葉を 思いなど込めず ただ適当に口に出しているだけで 気持ちは軽くなってくる 出てくる言葉に 本当か嘘かなんて関係ない 口に出し 耳に入る言葉こそ 何より強い暗示の力 言葉は …

闇の音

音がする カチリと 深夜 一人起き 眠れない カチリ カチリ 不穏を運ぶ音 記憶の扉が軋む音 一歩一歩 近づいて 蒙昧な腐海の 匂いを運んでくる わけも分からず 考える余裕もなく 押し込めた 過去の惨禍 忘れようとすればするほど 忘れられず 隙きを見せた刹那…

食あたり

当たった 生の魚貝が 当たった 激しい腹痛 発熱 下痢から下痢 眠れない痛み 離れられないトイレ この辛さ あと2日もすれば 嘘のように消える 分かっている 分かっている痛み 下痢するごとに ウイルスが 外に出る 体の中で繁殖し 痛みと熱で苦しめて 液体で …

強い言葉

物知り顔で 悟ったようなこと言って ふむふむと 相手の納得する顔を求めつつ 批判だけは避けようと 隙きのない 無難な どこにでも転がっている 耳障りの良い言葉ばかり 並べて くおりてぃー おぶ らいふ だの 文化的な生活 だの じゅうじつしたじんせい だの…

過去の召喚

全てを諦めたなら 過去は美しく わたしを慰めてくれるだろう 現実に負け 過去を引き出すなら その美しさは 今をますます貶めるだけ 過去の味わいは 現在という調味料に 味つけされ 甘く 苦く 心を酔わせ 時に 思わぬ襲来によって 人を狂わせる 過去がなけれ…

壊れかけて

今日の朝 パソコンの電源が 入らなくなった時 生活に影がよぎった 人生の大半 電子機器など持たなかった それがもはや 身体の欠損にも等しい 不安をもたらしている こいつが壊れたら 私はどうしよう ちょうど 小さい死のようで 不可避と 分かっていたけれど …

正月のアンニュイ

あまりにも あまりにも安定し 平穏な生活だから 空虚だ 何もしなくていい 何も考えなくていい 働かなくていい 動かなくていい 食べたいものを食べ 飲みたい酒を飲む 満ちて 足りて 幸せが抜け落ちた 欲が無くなって 惚けて まるでペットの猫のよう 一日中 布…

冬田

心が遠くなる 冬の空 雲は悠々と流れ どこまでも視界開ける 雀もヒヨドリも 電線に街路樹に集い 囂しく騒ぐ 低い陽は 長く差し込み 山肌を照らし 影を伸ばす 田の中に立てば ただ一人 陽を背に受け 風を友に 家路につくだけ 枯れ草の匂い流れ 寺の鐘鳴る

欠格の辞

浮ついた暦の上を遊び 年中しがない日々に追われ 忙しいはずが 何も残らず 虚無の中 ただ時は流れる このままが続き 蕩けてゆく人生 躍動と激情は どこへ行ったのか 何かを探し 何かを求め 何をしているかも 分からず 遠くへ続くと思っていた道は 間もなく狭…

匂いのしない冬

今年の冬は 生暖かい 風も吹かず 木も揺れず 霜も降りず 霜柱も立たず 土の匂いも 鼻をつく 風の寒さも ちぎれるような 耳の痛みも 緩慢に包まれ 五感を麻痺させる 穏やかさと しどけなさと 気だるく うららかな日々よ 匂いの立たない街の 片隅には 今日も …