2018-07-01から1ヶ月間の記事一覧

寂寥の隙間風

不意に起きた夜半 布団の中 闇に包まれ 中空を見つめる 家族の寝息 いつもと変わらない夜 それなのに 堪らない寂寥 ひとりぼっちの一刻 孤独と無力に 胸が締めつけられる 世界中の誰もが こんな寂しさを抱いて 歩み寄る死に 恐れおののいて ひたすら悲しい夜…

風来の種

いつもの街に 一陣の風 匂う大気 季節変わる 草いきれ 立ちのぼる 旅への憧れ 風のように 身軽に 風のように はやく 風のように 跡を残さず 吹かれるように 季節になびいて 飛ばされてみたい 何も考えず 曲にならない歌を口ずさんで しがらみも こだわりもな…

毒親

なんでもかんでも口を出し 隅から隅まで子供を見張り 自分のことでもないのに ああしなさい こうすればいい 子供が成功すれば わたしの言う通りにしたからだ 失敗すれば 言うことを聞かなかったからだ どんなに理性的に話しても 監視と支配は止まず 粗暴な態…

夕凪

雨だれの 音の懐かしさ したたった液体の 艶めかしさ 染みて 広がって 溜まって 乾いて 埃が落ちた大気に 湯気になって戻る 陽炎揺れる夕方の 雨上がりは さわやかな刹那の後の 蒸せた空気 アスファルトの匂い 草の香 風なく 人なく 時が止まり 蝉の声と 汗…

ヒダル神憑く

酷暑の陽を浴びて 三十分 顎に汗滴り 虚ろな目 空腹も渇きもなく 何も口に入れたくない 動けず ただ汗流れ ダルく 億劫 考えたくない 考えられない 頭痛からの ホワイトアウト そして 寒気 ガチガチと鳴る歯 震える身体 尿意 痙攣 失神 冷たいタオルと 点滴…

好きに生きれ

たくさんの物事が 見えて 聞こえて 見たくないもの 聞きたくないことに 蓋をして 閉じて 籠もって 自分だけ見ていると 必ず 自分のことも嫌になってしまう 何もできない 邪魔者 こんなもの 要らないじゃないか そりゃぁ 世の中の大概のものは あってもなくて…

慣性のそして流浪の言葉

その言葉は 身体より出て 人にまとわり 人に寄り添い 人をあらわし 人に向き 場所を越え 時を飛んで 発した身体が亡びようと 言葉として立ち 美しく 猛々しく 禍々しく 人を酔わせ 人を狂わせて 人へ還っていく その還流に嚥まれ 流されているのだから たっ…

夜のレンズ

朧月夜に響く 哀愁の音 老婆一人かがみ 丸眼鏡拭く 使う当てのないレンズを から拭きして 磨いて 磨いて 磨くことしかできず 磨いても 何もならないのに いつまでも 磨いている 無意味で 退廃の匂う反復 だが きっと 自分が同じところに おさまれば 同じよう…

酔いどれの転がる街

夏の宵に 酔いどれが ゴロゴロ ゴロゴロ 転がって 繁華街の 道端は だらしなく 汚くて ろくでもない シャッターの前では 寝転がり ガーガーと 言葉なく わけも分からず うめいて 憂さが晴れたのかどうかも 分からずに 酒の毒を 無防備に浴びて 蠢いている 私…

夏の陽臭

陽に照らされ 汗滴り 濡れたシャツを 陽はなおも照らし シャツが乾いては濡れ 乾いては濡れて 照り焼きのように 汗と脂が染み入り 最後に乾けば 塩を吹いて 炎天下の 即席の干物となる シャツには 体から出た匂いと 陽のよく当たった 香ばしさで 臭く 汚く …

酔い醒めの水

酔い醒めの水は いつだって 渇いた口腔に いつだって 麻痺した時と 酔い惑った脳髄を 癒やす 甘露のごとく 壊れたかけた時間と 行き場を無くした己に 染み入るように いき渡る 飲み過ぎた夜の水は いつだって 旨くて この恵みの有難味を 摂受するために 泥酔…

汗たれて

日照りの坂 引きずる足 汗の玉 顎より垂れ 肘から落ち シャツはビシャビシャ 木陰のベンチ 汗は止まらず 足元の蟻 鳴きわたる蝉 何も考えたくない 考えられない 熱の溜まった 大気に埋もれ 逃れられず そのとき 一陣の風が ただ一時 風が吹いて 草の匂いを運…

己は何か

無限の闇に浮かぶ 天球に住まいて 恒星の光と 隕石の水で 偶然の確率が 必然化するほどに 膨大な 時を費やして 有機物を生み 進化を重ね ヒトになり 生命をつなぎ 私がいる 意味も 理由もなく ただ今ここに 在るだけ なぜ どうしてと 問うても 正解などなく …

わらべの郷愁か

もうすぐ 来る しどけなく あでやかに 包まれた 幼さの香る たいせつな 卵の殻を 無きものにする 抗えない甘美と もの哀しさ 祭の後 ポツポツと 家路につく ひとけの薄い暗がりで 屋台で買った笛を吹けば ピーッと鳴って くるくると 紙筒が伸びて 戻る 何度…

まっすぐな線

まっすぐな 一本の線 そんなものは 有り得ない 全ての線は まっすぐなようでいて 必ず歪み いびつな凹凸を持つ まっすぐは 一次元の概念で まっすぐは 認識の中に 意思の内に潜む まっすぐな 生き様などなく 右に左に 折れ曲がった人生にも まっすぐに生きた…

被害者になること

大きな傷を負わされ 人生が傾いてしまったら 世を恨み 人を恨み 何かを呪わずにいられない 呪詛 報復 あいつを地獄に落とすためなら 自分はどうなったっていい この辛さを 誰かにも負わせたい 負の感情に沈み 人生は淀み どこまでも 堕ちてゆく そんな被害者…

大災害も小災害も被害者にとっては同じ

激甚の 特別の 非常の 災害 過酷な 辛苦に 苛まれる 同じ時 田舎の 一軒の家の火事 家族を失い 住む処失い どうしていいか分からない どちらのほうが苦しいか そんなことは分からない 比べるべきか 分からない 比べられる ものじゃない どっちも悲しく どっ…

私の高校野球

地区予選 炎天下 冷凍庫から取り出した ペットボトル 一気に飲んで 腹下す 通路横のトイレ 遠い歓声 応援曲 陽射しを逃れ 塩吹いたシャツに 冷や汗流れ 絞り腹垂れて ぐっしょりと 全身に行き渡る疲労 暑い夏 汗が吹き出る 誰もいないトイレ 濡れたシャツに …

野蛮な心地よさ

強く 速く 大きく 弾けるように 飛び出し 空いっぱいに 拡がり 向かうところ敵なく 蹂躙を重ね 一つの色に染めて ためらい一つなく 一直線に 一面的に 激しさと 強引さで 一切の妥協を認めず 異物に容赦せず 怨嗟の声を無視し 徹底的に弾圧し それはもう 小…

忍び涙

背中に面押しつけ 震え 五秒後 何事もなかったかのように 笑顔で手を振るキミ 引き止めなかった 何もできなかった 強張り 固まっていた 理由も聞けず 慰められず 泣かせた あれから幾星霜 思い出す度 私は傷つけた 罪人だったのではないか 自らの過ちが 頭を…

陽射し

ただ強く 屈託なく 透過する 熱エネルギーが 地に染み 温まり 夏が広がり 空の青と 木の緑を 強く 濃く 生命漲らせ 疲弊する弱者との コントラストを くっきりと 分からせる 強く 厳しく 生への叱咤のごとく 陽が降り注ぐ

Blindness

見えない 分からない 不安と焦燥 頭をもたげる臆病 人が見えず 己が見えず 居場所が見えず 人生が見えない 立ち止まり 縮こまり そのままうずくまるか 手探りで 行きたいほうに 進むか 不安を覚える心を 噛み砕き 弱き人の遍在を 照らし出す営みは いまはい…

ただ走る

走る どこへ なぜ どうして 走る わけも分からず 走る 逃げるように 走る 振り切るように 迸る肢体 流れる汗 燃える体 向かう風 どこまでも いつまでも 終わる日が来るまで 体横たえ 走れなくなるまで 理も智も振り切って 跡を見ず 走れ

良いものなのになくなっていく

かつて農閑期に 一週間や十日 湯治に赴き ゆったりと楽しんだ時間は もう失われつつある 湯治と言っても 東北の寒村の ほっかむりした爺や婆が ただ風呂に入るだけとしか 脳裏に浮かばないと 貧相に思うだろうが 漁師は新鮮な魚貝を 農家は採れたての野菜と…

セルフィッシュとエゴイズム

セルフィッシュであるのは簡単だ たんに我儘に 自分本位に振舞い 他者を気に留めず 何も考えずに 己の利を第一に 欲望に従えばいい エゴを通すのは セルフィッシュとは違う エゴは 自分を押しつけ 相手に自分を認識させ 自分が何者であるか 分からせること …

止水

それは穏やかで 静かな水面 波風立たず 鏡のように 空を写し 自らを誇示せず ただ在る 川に流れる 水のように 常に動き 縁にぶつかり 岩石との摩擦をくり返し すべてを飲み込み 豊かに濁り 海へ注ぐ 静寂の水と 動的な水 一見 きれいなように見えても 腐って…

日本の夏の空の青さ

梅雨明けの空は 濃い青と 雲の白さが 強い日差しのコントラストに 浮かび上がる 日本の夏 快晴の下 いつも蘇るのは 終戦の日 生命が繁る エネルギー溢れる 暑い最中 人の死と 敗戦の記憶が いつまでも いつまでも 空の青さに 悲哀の色合いを与え 日本の夏の…

やさしさと言う何か

甲斐甲斐しく面倒を見て やさしい人だと思われながら 面倒を見るという口実で 相手を思い通りにコントロールし 自覚し得ぬ 支配欲を満たす人もいれば 何もせず 人と付き合うのが苦手なようで 人をよく観察し 裁量を持たせ 相手が自由に振舞うままにして 目立…

体の機微

梅雨の最中に 働き詰めて 気分を変えて 出かけてみれば 新鮮な空気と ゆるやかな時間 存分に リフレッシュできたと 思っていた ところが 街に帰って 日常に戻ると ダルくて 眠くて 時間さえあれば 寝ている 人の体は 頑張ってくれて 踏ん張り時に 耐えてくれ…

ツバメの巣立ち

宿の軒先には ツバメが巣を作り 子供たちは 親とたいして変わらなくない 大きな体で餌を待つ 梅雨明け間近 激しい雨のなか 親ツバメは 餌を探し 飛び回る 雨が降れば 鳥も羽を休ませると 思い込んでいた私は 天候に関係なく 空腹が生き物に訪れる 当たり前の…