酔い醒めの水

酔い醒めの水は
いつだって

渇いた口腔に
いつだって

麻痺した時と
酔い惑った脳髄を

癒やす
甘露のごとく

壊れたかけた時間と
行き場を無くした己に

染み入るように
いき渡る

飲み過ぎた夜の水は
いつだって
旨くて

この恵みの有難味を
摂受するために

泥酔の愚行があったのかと
思えるほどに

私を
震えるほどの
満ち足りた感覚に
いざなってくれる

頭痛く
眼はショボショボ
胃がもたれ
平衡感覚はない

それでも
水の有難味だけ

生き物の源の本能か
細胞に染み入る慈悲か
泥酔という愚行への救済か

これから
いかばかりの
不快に耐えねばならずとも

一杯の水に
頭を垂れる

この刹那こそ
紛れもなく
生を噛み締めている