2017-09-01から1ヶ月間の記事一覧

はじける

薄く脆弱なところに エネルギーが溜まって 溜まって 堪えきれなくなった時 崩壊は訪れる 溜まった力は 箍を外れ 四方八方に 発散し たちまち消える その無秩序の 開放的な快楽と 一瞬の躍動からの虚無は 興奮から無への 乱れきった発露で 常に求められ 常に…

言葉の単純さと複雑さ

楽しいとは言うけれど 人と会って話すのも ふらりと旅に出るのも 美味しいものを食べるのも 素敵な映画を観るのも 心のなかに起こる気持ちは それぞれ違う 楽しい気持ちに嘘はないが 様々な違いは楽しいの一言では分からない 人は言葉を操っているようで 実…

松本清張の売れた時代

松本清張の作品は 事件が起きて 捕まる犯罪者が個性的 辛く苦しい人生を歩んで 社会で成功した人 罪を犯していても 犯すだけの理由を持つ人 焼跡でパンパンをしていた 癩病で迫害され放浪せざるを得なかった お涙頂戴で しかも罪人に同情する話 これが売れた…

コーヒー

コーヒーは黒いけど真っ黒じゃない 苦くて苦すぎず 渋くて渋すぎず 酸っぱくて酸っぱすぎず カップ一杯二杯飲むなら 美味しくて 本も読めるし 話も弾む 三杯四杯 五杯六杯 飲み続けると いつしか動悸が高まり 胃が重くなって 飲み過ぎを後悔する それでもコ…

赤ちょうちんと演歌

演歌の歌詞は 泣き言と恨み節 そんな言葉は好きではないが 演歌を求める人がいた 赤ちょうちんで飲む酒は 酔って全てを忘れるため 楽しい歌や楽しい酒は 若い人のもの 一人で飲む酒に 苦労の染みた歌が流れて 何の解決も得られず 同じ明日が来る 好きじゃな…

言葉の往来

銭湯で壁の向こうに おーい もう出るよ いま髪洗ってる じゃあ10分くらいしたら出るよ 分かった 言葉のやり取り 姿は見えず だが脳裏に浮かぶ 夫婦で銭湯に来て 一緒に帰って 買い物なんぞして 夕ご飯を作って ちょっとお酒飲んで 他愛のない話をして 寝る…

カレーうどんを食べるたび思い出す

幼い頃 親の実家を訪れて 母が出かけていた折に 祖母が出前を取ってくれた カレーうどん おいしく食べていたところ 予定が変わって母が帰宅 私と祖母が食べているのを一瞥 離れにいるからと 母は一人で席を立ち しばらく経って訪ねると 乾麺茹でて レトルト…

グラスの水滴

氷を入れたグラスに 水を注いでかき回す グラスの外側についた水滴 ある人は結露するという 私はグラスが汗をかくと言う 私にとっては大事な違い どちらが良いかと言うことでなく 言葉が体につながるか 言葉に実感が持てるか 言葉を自分の手の内に使えるか …

あと一つ

あと一つ あと一つだけ 欲しいんだ 欲張りじゃないんだ ただ一つだけ 手に入れば良いんだ ここで諦めると もう終わってしまうんだ これだけは 頑張りたいんだ あと一歩で ぶら下がったロープに 手が届くんだ 自分が頑張れるのか 自分を信じられるのか ここが…

繊細な配慮より寛容で適当

こまやかな気配り 繊細な配慮 心を砕いて 相手を気遣う 気遣えば気遣うほど 細かいことを気にして 相手は恐縮し 緊張する こんなのは気配りではない 気の利いた自分を見せたいだけ いろんな心配りはあるが ときに鈍感で いい加減な性格に 人は安心する 鷹揚…

見まもる

野良猫の子が 庭に来て遊ぶ 子供の可愛らしさ 無邪気の微笑ましさ 代わりに 庭の草花は蹂躙された 看過できず 子猫に近寄る そのとき 目の前に立つ 母猫 わたしを睨み 威嚇する間に 子猫はワラワラ逃げていった 誰に教わったわけでもないのに そっと子を見守…

心変わり

ゴキブリを 叩き殺した その手に持っていたのは かつて 尊敬した人から もらった本だった 自分が悲しい

自然の子

雨と風と太陽の光は 誰にも等しく降り注ぐ 一人一人の人生など 意に介さず 平等で 無慈悲で 全てを包摂する世界 そんな大地に立ち 誰もが一人歩み 降り注ぐ陽も 荒れ狂う嵐も 身に受ける 虫や獣の 殺伐とした 生き様を思えば 人の一生は それなりに恵まれ 面…

多様性

多様だってことは 金持ちも貧乏人も 障害者も犯罪者も 好きな人も嫌いな人も どこの国にいる人も 自分と違う考えの人も 存在を認めること その理屈はきれいだが 自分にとって嫌な存在を認めるのは きれいごとじゃない だから 多様だってことは 時にイライラ…

投壜

小さな言葉を 小壜に詰め 海に流す 誰に届くのか どこに届くのか 誰にも分からない 波に揺られ 時代を 場所を 飛び越えて ただ小壜は揺られ 拾われるかどうかも 知れない ネットの大海を 無数の小壜が行き交い 行方知らずの言葉は 漂い続ける それは 届けと…

自転車に乗れた頃

初めて自転車に乗ったのは 小学校に上る前 おっかなびっくりで 危なっかしく ふらついたけど 30分も経てば 楽しくなって ペダルを漕いで 世界が広がった その時の気持ちは 憶えている だけど 自転車に乗る前の気持ちを 私は忘れてしまった 嫌々乗ったはずは…

ハレの祭事

心ときめかせ 山車や神輿を待ち望んだのは 過去の追憶となり 祭り囃子を聞くと 郷愁が頭をもたげる リンゴ飴 ハッカ飴 金魚すくい 水玉風船 子供は無邪気に楽しみ 大人は子供心に帰る 心が入れ替わる出来事を 一年に少しだけ用意して ケとハレを往復し 精神…

力士

田舎の湯治場で 相撲部屋の合宿にはち合わせた 風呂場は力士で埋まり 排水口には泡が盛りあがる 浴槽に入ったら お湯が三分の一しか残ってない それでも 良い気分だった 巨人の世界に迷い込んだような 奇妙な困惑があり 同時に 力士の体が発するエネルギーに…

オウムの夢

オウム「水をくれ」 私「分かった」 オウム「水をくれ」 私「分かったからちょっと待って」 オウム「水をくれ」 私「だから待っててよ」 オウム「水をくれ」 私「・・・・・・」 オウム「水をくれ」 私「・・・・・・もう」 私は仕方なく 器に水を入れて カ…

爪と髪

伸びて伸びて どこまでも伸びる 切り捨てるのが前提の身体 いつも切っては 煩わしくて この髪を この爪を 便利に使えないかと思いながら そのまま 数十年も生きてしまった 少しづつ白髪が増え 爪はしなやかさを失い 爪も髪も 自分そのものだと 信じられるの…

緊縛と弛緩の安堵

片腕を枕代わりの うたた寝の安楽 頭の重さ 圧迫される腕 血流が止まり 痺れる手前 鬱血の不快感が襲う 姿勢を変えた刹那 腕に血が巡りはじめ たちまち不快は解消し 腕にあたたかさが戻る 緊縛から緩和へうつる 安堵と安楽 身体は常に 不快で危機を知らせ 危…

出発の扉

いろんな出発があった 朝の大気のなか 眠い目をこすりながら 学校や会社に出かける 眠れない日も 充血した目で家を出た日も 有閑な午後 ふらりと散歩をした時も 人との出会いを楽しみに ドアを開けた日も わけも分からず 家を飛び出した日もあった 気持ちが…

高齢口禍

かつて 東京タワーが世界一高かった時 高く伸びる塔は 発展と豊かさの道標で 成長していく自分と 変わる世界は 希望に満ちた未来だった そんな社会の空気だった けれども 実際は貧乏で 田舎に暮らし 赤いほっぺで鼻水垂らし 何度も拭いた袖口が テカテカに光…

日常 精神 起伏

生活に疲れる 世の中に嫌気がさす 誰もが味わう気分 このままでは 泥に沈んでしまう 疑心暗鬼が深まる 負のスパイラル そこから抜け出す方法 ネガティブな感情を紛らわせる手段 本当に些細な いつでも遭遇するような 小さな言葉や振舞いによって 日常を取り…

ワイン酔

ローストビーフ スモークサーモンのサラダ カマンベールチーズ トマト バケット ワインを飲む 白を飲んで 赤を飲む 場末の酒場で 酔いつぶれる 日本酒に比べると ワインには 陰鬱なイメージはなく むしろ 社交的で華やか ボトルを開けるから みんなで空ける…

幸福受容

幸せな瞬間を思い描く 炊きたてのご飯に納豆とみそ汁 学生時代通った店へ再訪の時 お気に入りの作品がかかる映画館 好きな作家の本を買って読むこと 一番の好みは 旅に出て 温泉に入って 一息つく時間 湯気を吸い込む その匂いで 旅情が身に沁みこみ いつの…

ひとり泣く者

電車の中 若い女性が泣いている 下を向いて すすり泣いている どうして泣いているのか どんな不幸が 彼女を襲ったのか 何もできない 傍観者の私 ただ 世界に 不幸があることだけが分かる この電車に乗っている 何百人の人も 都会に暮らす 何百万の人も それ…

ご飯を食べる

夕方にふらりと入った定食屋 ビールで餃子を突いていると ニッカポッカの男が二人 魚フライ定食と ニラレバ炒め定食 ご飯大盛りで 出てきた定食は丼に盛った白飯 お新香で一口 タレで一口 フライを少しかじって一口 もりもりご飯を食べる ご飯おかわりくださ…

障碍なき酒場

私は目が見えません 私は耳が聞こえません 足がありません ダウン症です ガンが転移しました そんな人達が酒を飲みに来て 騒いでいる酒場 足を引きずり 2時間もかけて通う者 ビール片手に 壁を相手に ただひたすら喋っている者 みんな満たされなくて それで…

涼翳

秋風が吹けば 一雨ごとに 涼しさは増し 夏の弛緩した空気は 真綿で締め上げられるように 清涼で乾いた大気へと 置き換わってゆく 空気は 冷たくなればなるほど 身を刺すように 鋭さを備え 我々もまた 無防備ではいられず たくさんの衣を着けて 冷気から身を…