ひとり泣く者

電車の中
若い女性が泣いている

下を向いて
すすり泣いている

どうして泣いているのか

どんな不幸が
彼女を襲ったのか

何もできない
傍観者の私

ただ
世界に
不幸があることだけが分かる

この電車に乗っている
何百人の人も
都会に暮らす
何百万の人も

それぞれが
泣いて笑っている

一つ一つの人生は
重たくて

重たい人生が
何十億もあるから
ありふれたように
見えてしまうけれど

それでも
一人の切実な刹那を
目にすれば
人はおろそかにできない