2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧

愚行礼賛

警句ばかり書いて したり顔をするよりは 愚行を繰り返し 何も学ばず 失敗を重ねるほうがましだ 自分が何者でもないという 予感にさらされ続けた者は 何をしても 徒労としか思えない 無気力と無関心 人生の長さを持て余し 皮肉と嫉妬を 友として 自分への失望…

踏み固めた土より飛べ

発想も 創意も ただの思いつきで 世を渡れるほど お手軽に 生まれるものじゃない 人の喜怒哀楽を 刺激する言葉 共感を呼びながら 同時になぎ倒す言葉 人を狂わせる言葉は よく磨かれ 研ぎ澄まされた鋭利さを持たねば 輝かない 研ぎ石に刃を擦りつけて 大地を…

シャボン玉落つ

夕暮れの街 ビルの谷間 風は止み 熱が底に溜まる 上から 大きなシャボン玉ひとつ 落ちてきた まっすぐに ゆっくりと 頂も見えぬ ビルの上から 街の底に シャボン玉だけが 落ち続け 人も 車も 街も 時間さえも 止まり 時空のエアポケットに落ちて 音も色も 感…

正直を愛す

正直が好きだ 人の顔色を窺って 心にもない言葉で 喜ばせるより 思ったことを 口に出せる人が好きだ 美辞麗句を連ね 相手を褒めそやす そんな奴らは 相手を下を見下した途端 あっという間に 態度を変える 好きも嫌いもないのだ 得になるか ならないか 偉い肩…

沈む夕陽に

今日も 日が沈んでゆく 弱くなる日差し 赤く染まる空 色を失い 紫雲たなびく ただ一つの 光源が落ちるのに 我々は どれほどの 意味と 文脈と 想いを 乗せて見たことだろう 暦も 時間も 発明する前から 終わりが やってくるのを 教えてくれた 抵抗も 逃亡もか…

酔いが降りてくる

うっすらと 黄色味がかった 液体 わずかなとろみが 舌に転がる 鼻に抜ける 発酵臭 甘くて 苦くて 渋くて 飽きない ダレた口の中を 食べ物で濯いで また飲む 飲んで 食べて 飲んで 疲れていたはずの頭は 軽快に 回り出した 愉快な発想が 次々生まれ 舌もよく…

愚鈍者

鈍感だなんて言うなよ 鈍いやつだって 馬鹿にするなよ 繊細な感覚の持ち主で 身の回りには こだわって集めたものばかり 手に持つもの 振舞いの一つ一つに 理由をつけて さぞかし 意味のある生を送っているように のたまわる でも実際は ピリピリしているだけ…

若者よ傲慢たれ

若者よ 大人たちは言うだろう 人を敬い 皆と融和し 謙虚で 自制心の効いた 立派な大人になりなさいと そんな言葉を 聞く必要はない 彼らは 君を物分りの良い 制御しやすい 言うことを聞く存在にしたいだけだ 人が人を尊敬できるのは そんな簡単なことじゃな…

時のブランコ

誰もいない公園で 老婆が一人 ブランコを漕いでいた 前に 後ろに ブランコが 揺れるたび 時は遡り 老婆は少女になり そしてまた 孤独な老婆であった 軋む鉄の鎖 変わらないリズム 振り子は止まず いつまでも 老婆は ブランコを漕いでいた 歳をとった体に 染…

記憶に沈む

かつて訪れた街が 思い出深い場所が 変わり果ててしまった 多くの人が跋扈し 派手な装飾の店が並ぶ あるいは 人の姿が絶え 自然に還ってしまうかと思うほど 荒れ果てている 変わるのは当たり前 人が住んで 動いて 変わっていく ただ記憶だけが 変わらなかっ…

わたしの生が長かったなら

わたしの生が長くても わたしが二倍生きられても 私の人生は 少しも変わらない 50年が100年に 1000年に伸びたって 面倒事を遠ざけ 余裕のある限り 怠惰を貪って 何一つ 極めたり 突き詰めたりしない ただ楽をして生きたい 少しの称賛と金 何もしない余裕 ど…

トカトントンが体を打つ

今日も一日が終わった くたびれた 重い足 痺れる頭 朝起きて もう疲れていた 足を引きずり 外へ出て 何かするたびに 息が切れた なぜ しなくてはいけないんだろう なぜ 疲れているのだろう 何一つ分からない ただ疲れている 横になっても 心拍数は減らず 眠…

液体粘度

トロリ トロリと 口から垂れ 滴る液体は 長く 長く伸びて 皿に落ちていき 時の流れすら 伸ばしてみせる 流れは止まらない しかし 緩慢で冗長 ゆっくり ゆっくりと 見せつけながら 決して 逆らわず 急がず 媚びない 停滞を予感させて 留まることなく 落下しつ…

心のかたち

誰もが持っている 信じている 心の有様 どこにあるのか 本当にあるのか 分からない心 心が痛むのは 本当に痛いのではない 心苦しいのは うめき苦しむのではない 誰に聞いても 心はあると言う いま ネットで 有象無象の文学に AIが書いた文字列を 紛れ込ませ…

助けてくれた詩人より

文学に肩書なんかいらない 知識も教養も いやみったらしい講釈も解説も 格好つけの道具立てだ 疲れて ヘナヘナした時 救ってくれたのは ポーやパウンドや オーデンだった 自由 権力からの自由 他者からの自由 現実からの自由 エネルギー 言葉に精神を乗せる…

匂いの懐かしさ

沈みゆく夕陽を 眺めていると 失ったふるさとが 思い出され 胸が 締めつけられる もう無くなってしまった 数々の愛着 飴色に馴染んだ色合い 丸く柔らかい手触り そして 古めかしさを香り立てる 匂い わたしの時代は すべて過去になってから 匂いを帯びる 思…

前向きである精神

人は 誰かのために生きるのか 何のために生きるのか いくら悔やんでも仕方のない 過去との確執を振り切り 前を向いて 生きたいと願う では 前を向くとは何か 金を稼ぐことか 人とつながることか 誰かの役に立つことか 過去を忘れるため 忙しくすることか 役…

悪あそび

クスクスクス いけませんね どうにも悪いことばかり 覚えてしまう 良いことを知り 学んで 良い人間になれるかもしれないと 思っていたのに 悪事はどうにも楽しくて 悪だくみばかりして 天の邪鬼になって 人の期待の逆を行って それがなんとも 愉快愉快 誰か…

努め

努力は 貴い オリンピックの金メダルも 宇宙飛行士になるのも 努力の結果だけれど 人それぞれ 足を一歩踏み出すのも 声を一言発するのも 瞬き一つするのだって 状況によっては努力 大きくても 小さくても 努力は努力 だから 努力は誰にも出来る 自分が頑張っ…

宮仕え悲歌

酔って 勝手なことばかり言う 老人の悪徳よ わたしは 背中に寒気を感じながら 薄ら笑いを浮かべ 目の前の 老害の愚痴を聞いて 頷いている 心にもない世辞 一分一秒ごと わたしのなかで 私の大切なわたしが 死んでゆく 酔って虚ろな目と よだれの垂れた口 顕…

休みの朝

小学生の 日曜の朝 少しでも 早く起きて テレビを見て ご飯を食べて 遊びに行くのが 楽しみだった 楽しみで 楽しみで ワクワクして 日曜が早く来て欲しくて 友達の家に 遊びに行きたくて あの頃は 疲労や憂鬱なんて言葉は 知らなかった 休日は遊ぶ日 休日こ…

見えない紐

誰もが どこかと 見えない糸で 繋がっています 繋がっているのは 分かるのだけれど どこに伸びて どうなるのか 分からないのです 絡まって 雁字搦めになったり 命の綱だと思って 身を預けたら切られたり 妙なところに 引っかかって救われたり 思いも寄らない…

過去をうつろう

過去を振り返っても 意味がない 意味がないってことを 軽く考えすぎていた 取り返せない 取り戻せない 変えられない 挽回できない なにもない それなのに 人は記憶と経験しか 自分の手の内に 持たないものだから しがみついて すがりついて 過去に頼り 過去…

吐露

押し黙れば黙るほど 表現への欲求は高まり 隠せば隠すほど 押し込めば押し込むほど 感情は出口を求め 吐き出したくなって 爆発する 嬉しいことや楽しいこと 自慢話に夢中になっても 本当に打ち明けたいのは 悩みや苦しみ 溜めてばかりじゃ 心は重たくなるば…

一日がはじまる

まだ重い瞼 だるい頭 朝食の準備 包丁の音 始まりは 格好良くなどない 漫然と 眠気を残して 一日は起動し ほとんど 何事もなく終わる 安寧なのか 停滞なのか 守っているのか 何もしていないのか 意味は いくらも作られる 今はただ この強い眠気を振り払い 立…

時の亡者

起きていれば 未来を夢見て 眠ったならば 過去の夢を見る 未来がなくなり 夢を失えば ただひたすら 過去に追われるばかり 追われ 追い詰められ 押しつぶされて 現実さえ失って 過去にとらわれた 哀れな囚人となる もはや 零落の風合いも 落ち行く快楽も 愚か…

風来の言

乾風過り 熱波立つ 渇咽に 見上げる空は 虚無が靡き 遠き草木は 砂の向こう ただ吹く風は 音を響かせ 灼熱と孤独を 煽り立てる 時が止まり 記憶は遡る あの夏 痛々しい暑さと 胸に疼く痛み 若き過ち 取り戻せぬ過去 熱い風が 吹き渡るたび 思い出しては また…

あの素晴らしい時をもう一度(笑)

人から失格の烙印を押された時 反発と攻撃性 自分を否定したくない思いが たちまち昂り 冷静さを失い 我を忘れる 時が経ち 自問自答し やはりダメなものはダメ 自分は愚かだった 社会の中で生きて行けぬ 自己否定に囚われ 無力感と絶望の 苦しみから抜け出せ…

ただ在る

一人 ただ在る つながりもなく 孤独も感傷も 喜びも悲しみもなく ただ在る 在ることだけが たしかで 意味はなく 価値もない 在る しっかりと 在る このまま 誰にも気づかれず 無くなるまで 私だけが 私の在ることを 知っている 在るだけで 満足できない時や …