宮仕え悲歌

酔って
勝手なことばかり言う
老人の悪徳よ

わたしは
背中に寒気を感じながら
薄ら笑いを浮かべ

目の前の
老害の愚痴を聞いて
頷いている

心にもない世辞
一分一秒ごと

わたしのなかで
私の大切なわたしが
死んでゆく

酔って虚ろな目と
よだれの垂れた口

顕になった攻撃性
哀しき性

老人を
送り届けた後

わたしは
酒を飲まなければならない

わたしのための酒を

付き合いで
わたしを殺し

溜めたストレスを酒で発散し
わたしは傷んでゆく

傷んで
仕事にありついて

いつか
わたしもまた

今日の老人のように
なるのかもしれない

あるいは
老人のようになる前に
壊れるのかもしれない

我慢するのが宮仕えとは
よく言ったもの

水の中で
息を止めて

辛抱を重ね
はい頑張りました

こんな歪な
頑張りかたを

世の人たちは
当たり前のようにして

社会は回っている

当たり前であるはずなどない
だから
当たり前のように振る舞って

歪さを
覆い隠しているのだ