2019-10-01から1ヶ月間の記事一覧

生まれ落ちて

生まれ落ちて 人の醜さに触れる時 今いることの後悔と これまでの我が歩みが 白々しく 無意味に思え 生は空虚となった わがままと嫉妬は それなりで収まるなら 人間らしさと 時には可愛らしささえ 演出する だが 恨むほどに強まるなら 人は嫌気がさし 近寄り…

冬が来た

冬の気配 その徴は 色づく葉でも 朝晩の冷え込みでもなく 大きく息を吸い込んで 鼻の奥に届く 痛みにも似た つんとした冷たさ 大気が澄んで 冷えてきて 息をするたびに感じる 毎日生きて 毎秒吸って ただ繰り返し 繰り返し続けて 変わらぬつもりが 確実に変…

見方

バラの花は育てられなくても バラの花に 美しさを見つけるのはわたし 世界を創造できなくても 世界の中に 居場所を見つけるのはわたし カラカラに乾いた砂漠に 水を撒くのが不毛だとしても 疲れ痺れきった脳髄に 言葉をかける 現実を変えず 現実の見方を変え…

幸福の下に文学は育たぬ

満ち足りたなら 訴えることなどない 飢餓も 渇望もない精神から 燃える言葉など 出てくるはずもない 強く 切実に どうしても 表さずにはいられない 魂の叫び 生きたいのに 生きれぬ 生を飛び回りたくとも ままならぬ 自分が生きているんだと 言わずにはおれ…

抜け殻

魂は どうしたら消耗するのだろう 人と摩擦を起こすことか 押さえつけられ 苦しめられることか 世に出て間もない 子供の目は キラキラと輝いて見えるが 年を経るにしたがい 輝きは摩耗し 鈍り 動かなくなる 何にでも 楽しい思いを乗せられたあの頃 未来は明…

雨中移動

豪雨は 全てを奪ってゆく 目の前は水のカーテン 轟音の世界 走った 車に全てを託した 行きの道は通れなくなった 人のいる場所に出たかった 濁流が暴れている 側溝は噴水 水の中を 走った すれ違う車が 煙を吐いた 道が水に埋まってゆく 追い込まれ 追い詰め…

箸はつなぐ 食べ物と口をつなぐ 箸はつなぐ 食べ物を挟めば 二本の間がつながる 二本の棒きれ ありふれた雑器 毎日 何千回何万回 箸を使わぬ日はなく 箸を要らぬと思ったこともなし これほど必要とされながら 箸はただの道具であって 交換可能で 決して主役…

きつつき

叩く どこかで 叩く音がする 真夜中の マンション ひと気もなく 寝静まった闇に コンコンコンと 叩く音が響く 聞いていれば 聞いているほど 胸の奥から 抑え込んでいた感情が 顔を出す 過去の記憶 遠くを夢見ていた追憶 焦燥に駆られ 心を焦がした夜 キツツ…

迫りくるもの

前から ずっと見えている 時を経て 近づいてくる 私は自由だ だだ広い 何もない空間で 思うままに跳ね 描ける はずだった 今でも見えている だいぶ近くなった 分かっている 終わりは必ずくる 見ないようにしていた 不安を忘れようとしていた 最後だけ見てい…

凡庸であっても

悲しいかな 上手く書けない 怠惰と 才能のせいにして 悦に浸るのはいつものこと 凡庸は 惰性になびいて 毎日 意味を持たぬ文を 生産し続ける ダメであっても 好きなら良かった くだらなくとも 自己愛をひたすら確認していた 今はもう 好きか嫌いかも分からな…

荒れ狂う涙

わがままな人がいて 喋りだすと止まらない 相手の話は遮って 同じことを繰り返す 話す度 相槌を打つのにも疲れ 下を向いて 黙っていた 他の誰かと 話していると どうして私の話を聞かないのか なぜ私を無視するのか 泣いて 叫んで 荒れ狂う いや あなたが嫌…

バビ猫

バビ猫は いつも寝ている 大きなイビキをかく 臭い息を吐く 毎日毎日 ゴロゴロと 腹を出して寝ては 出された餌を食い またイビキをかいて眠る 何もしないし 人にも構わない 寝ていなければ 座って 窓の外を見ている 話もしなければ 鳴きもしない 寝ている時…

Free ride

ただ飯 ただ乗り 無料と聞けば ワサワサと集まってきて 欲望を発散する皆さん そして フリーライドを 意地汚いと批判する皆さん 人が良い思いをしているのを 間近に見て嫉妬する皆さん 公園の炊き出しで 人を睥睨する皆さん 仕事もしないで ただ飯にありつく…

やる事

一日中 馬車馬のようにこき使われて 疲労困憊 延々と続く単純作業 肉体労働の単調なリズムは 屈んだ腰に 丸めた肩に 鈍痛をもたらし それはやがて 背中を 鉄板入りのガチガチにしてしまう 悲鳴なき悲鳴を 終わること無き労働は 人を機械へ変え 感覚も感情も…

自棄の時期

ああ もうたまらない 堕ちていく 欲望のまま 抑えきれず こらえきれず いつまでも どこまでも ひたすら 堕ち続ける 自制など忘れた 着実な歩みなど考えたくもない ただ欲望だけが 体に残り 半端なまま くすぶり続けていた どうにかしなければならなかった 堕…

災難の時 我欲の群れ

嵐は去り 澄み切った 眩しい空の下には 瓦礫が転がっている 傷は 陽射しを浴びて 染み行き 隠れていたものを 暴き出す 惨禍ではない 喜劇だった 人々が 抑えていたのは みすぼらしい心根で 愚かで 根源的で 力強いのだった 罵倒と専有を繰り返す 獣の群れは …

子供風呂

銭湯に 子供連れた親子来て 子供が風呂に入れない 水で埋めて 水になるまで 埋めて 子供はやっと風呂に入る 子供でなかったら きっと文句を言ったろう 子供だからって いくら埋めても 良いわけじゃない でも 言えなかった この子の 最初の銭湯が 楽しい思い…

ホームレスは死んでもいいのか

昨日台風がやってきて 台東区は避難所に ホームレスを受け入れなかった 酷い話と憤慨するも ネットの世論は区政支持 やれ税金を払ってないのに 救う必要はない やれホームレスが避難所に来たら 衛生面や安全面が心配 こんな意見ばかり並んで高評価 心から 絶…

がらくた

役に立つのは 本当に大事なのか 大事になものは 役に立つのか あなたの心の宝物は 役に立っているか 役に立たなければ 大事じゃないのか 表面的で のっぺりとした 馬鹿の一つ覚えの 役立つ至上主義 大事だと思って集めたのは すべてガラクタだったよ 錆びた…

漢字とともに

杜甫も李白も 忘れられた世界で 漢字だけが残り アジアの片隅で生きている 文字が絵で 一つで意味を持つ エネルギーを詰め込んだ 複雑で秩序ある表象 太く 長く 思考を縛り 絞りに絞って 練り上げた デフォルメの結晶 暑くても 熱くても 文字一つで 気持ちが…

暴風前夜

幾つになっても 台風が来る前は 血が騒ぐ こっぴどくやられて 家の屋根がめくれようと 電気が止まろうと 水道が止まろうと ルーティンが壊れる愉快は 心の奥に燃えていて ボロボロになって 涙を流しながら その不幸が 同時に快感でもあり 信じがたい悲劇の中…

子規から碧へ

有象無象の世にあって 秩序を作りたい人がいて 秩序に身を置く気持ちよさと 秩序に縛られる窮屈さと どちらも人は持つけれど 秩序はわたしの為にはない 規則を作る面白さは 人を支配する気持ちよさに似て たった五七五でさえ 言葉を縛り上げる快感を持ち そ…

食べ続けよ

耐え難き 空腹の時を超え 食事が始まる 口の運ぶ毎 快感が喉を通り抜け 少しづつ 確実に 腹に溜まっていく 満腹間近 腹がきつくなった まだ食べ続ける 旨さは いつの間にか 苦しさに変わる 食べて 詰め込んで 行き着くところまで止めない 苦しみは 行き場を…

足蹴にされた表現の自由

表現のために人を殺してはいけない 表現のために人を殴ってはいけない 表現のために 煽り運転をしてはいけない スピード違反をしてはいけない 表現にマスクをしてはいけない 表現に覆いを被せてはいけない あちらを立てればこちらが立たず 人を不快にする表…

図々しさと図太さと

人の言葉を聞かないで オウム返しに聞き返す なぜだろう たった今 説明したばかりのところを 繰り返し尋ねている この人は 馬鹿なんじゃない この人は 能力がないんじゃない 無礼であるが 悪意はない 図太い 強い 多少の草などもろともせず 草原をかき分けて…

Passionを思い出すために

情熱のない表現など ガソリンのない車 体裁だけ整って いくら待っても疾走せず 走らず 動かず 錆びゆくのみ 心のガソリンを満たすには 喜怒哀楽を思い出し 人を見る気持ち 自然に感じる機微 感情の揺れを 身に受ける日々を 取り戻すほかなく 安穏さの中に の…

喪明け前

人は皆 必ず死ぬ 死は平等で 理不尽 必然の別れ 受け止めるには重い それでも 受け止めないわけにはいかず 生きている限り 時は過ぎ行く 色がなく 味気ない日々を 幾多も過ごし 過去を振り返っては 戻らないと嘆く 嘆き 自棄になり 当たり散らし 疲れ果てた …

雨の匂い唄

黒い雲が立ち込めて 生暖かい風が吹く しっとり湿った この大気 雨の匂いが 満ちてきて 空から 水が溢れそう いよいよ水滴落ちたなら 家路へ急ぐ足も駆け 空が破れる寸前の 下でうごめく地の証 立ち込めて 降り込めて 叩きつける雨音に 土の匂いが上ってくる…

無力の中に生きる

世の人に相手にされず 怒り 絶望し 疎外感を持ち 自分を無力に感じようと 己が生きたいと 思う日々を 忘れてはならない 空も太陽も 風も水も あなたを差別しない 誰かの上だけを 照らしはしない 世界はあなたのためにはない それでも 世界はあなたを受け入れ…

只管惰眠

どうしてこれほど 眠れるのだろう 10時間寝て 起きて 飯を食って また寝て 昼飯を食って 寝る 何日も何日も 寝ては起きてを繰り返す 快眠の快感も果て どこまでも続く眠気に 抗えず 何も考えられないままに 眠る 眠ることは 気持ちが良くて 世界とわたしの …