幸福の下に文学は育たぬ

満ち足りたなら

訴えることなどない

 

飢餓も

渇望もない精神から

 

燃える言葉など

出てくるはずもない

 

強く

切実に

 

どうしても

表さずにはいられない

 

魂の叫び

 

生きたいのに

生きれぬ

 

生を飛び回りたくとも

ままならぬ

 

自分が生きているんだと

言わずにはおれぬ

 

そんな欲求と抑圧の狭間こそ

文学の居場所であるべきで

 

悩み無き者が

したり顔で知識を披露したり

 

文字を組み合わせる芸を

見世物にするのは

 

児戯にも劣る

腐った魂の露呈でしかない

 

生きる苦悩を

味わいながら

 

自分の存在を

肯定も否定もできず

 

立ち止まっている今

 

縋りたくなる言葉を

霧中で探す