2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧

預かり知らぬ魂

ドアを出て 明るい陽射しを浴びたなら まぶしい世界に目がくらむ 明るさも 大気も 道端の石ころも 魂を包み込む 蕎麦屋の暖簾をくぐり 蕎麦をたぐり テレビの相撲を見ては またたぐる 蕎麦湯のとろみに 温まる 一口 また一口 燗酒に 蕎麦がき 蕎麦の香りに …

意味がない

意味がないと 寂しい 役に立たないと 悲しい 本当は そんなことないのに 意味は元々無いし 人は車より電気より スコップより役に立たない でも人は人 猫は猫 居るだけでいいでしょ そう思いたいけれど うまくいかない

悪と戦う

差別と戦うはずが 排除していた 敵を駆逐し続け 攻撃の挙げ句 誰も近寄らない 平和な孤独が訪れる あれもダメ これもダメ ダメ出しを続け ダメを潰していけば 良くなるという幻想 結局は ダメを見つけることに長け ダメばかりが目に付き 周りをダメで囲まれ…

疲れた

疲れた 何もしていないのに 何も考えていないのに 疲れた 病なのか 飽きたのか 退屈なのか 疲れた むせかえる夏の上気 生ぬるい風が 夜に流れる 汗はうなじを伝い 祭ばやしが遠くに聞こえる 昼の喧騒の名残り 熱気の名残り 活動の名残りが 疲れとなって 身に…

今日のかぐや姫たち

夢も目的も見失えば 現実はただの虚無でしかなく 努力だの 積み重ねだの 向上だの 己を変える労力が 白々しく 真っ逆さまに 堕ちてゆくだけ そんな終末に向かうだけの人生には 過去の記憶だけが拠り所 美しくも はかない 若かりし日々の夢 叶わなかった希望…

外へ

心身を震わせる 衝撃に出会うこともなくなり 出会いを怖れ 出会わぬよう 隠遁する 傷つくのを怖れて 人に会わぬよう ダメージを怖れて 引きこもっているなら 見返りなど受け取れぬ 危ないからと言って 子供を外に出さないのなら 子供は一生子供のまま もう …

差別に苦しむと言う

差別されたと言う 差別主義者と言う 問題発言 看過できぬ そうやって ろくでもないオヤジを 社会から葬ってきた人々は 主張できない沈黙の多数より 恵まれた生活をしている 社会的に地位があると 差別されれば文句が言えて その他の大勢は 分かっていても 声…

不可解の恐怖

突然 見知らぬ人に殴られたり 呪いの言葉を吐かれたり 自動車で追い回されたり 理由もない衝動による 破壊が目の前にあるとき 理由がないため 何倍も 恐ろしい 恨みつらみ 因果関係があり 悪意も暴力も 理解できるものなら それは 私の認識の範囲 意識の縄張…

軋む体

バーベルを支え 上げる足腰に広がる 鈍痛と痺れ 体を壊す 錘によって 効果的に 筋肉を破壊し 再生による 肥大化を目指す 運動の反復による破壊 破壊の反復による肥大 肥大する筋肉に 人生は埋め尽くされていく 老いを迎え 全てがしぼむ中 肥大する筋肉は 若…

歩けども歩けども 歩けども歩けども

歩けども歩けども 歩けども歩けども たどり着かない 道は果てまで 星は満天 幾晩 歩いたか 歩けども歩けども 歩けども歩けども 歩き疲れても 歩くだけ いくら歩いても 何もない どこまで歩いても 地の果ては見えず 終わるまで 歩いても 終わりはない 歩けな…

若者の酒

まだ二十歳にもなっていない 若者が居酒屋にたむろっている 甘いジュースみたいな酒を飲み 大声で笑い 笑うと必ず手を叩く オヤジばかりの酒場で 悪目立ちする彼らには 周りの様子など 伺う素振りもない 楽しいのだろう 楽しくないわけがない 飲み始めたばか…

酒の間に

腹に溜まった 昨日の酒が 今日も臭気を 上らせる 目が回り フラフラしながら 駅へ向かう朝道 無くなって 解放されて なお寂しい 一杯 また一杯 明日がなければ 酒も進む 哀しくなんかない 酒が飲めるのだから

親の踵

何十年経っても 忘れない まだ満足に歩けなかった歳頃 親に抱きつこうと よつん這いで近づくと 踵で顔を蹴られた 何度も 何度も 蹴られる度 親が離れていき 遠くなるのが悲しかった 泣いた それを思い出すと 今でも涙がこぼれる

レトロ趣味

惣菜パン 駄菓子 街の中華 長屋 共同便所 焼き鳥の匂い 夜行電車 連絡船 路線バス なつかしい なつかしいって 生まれてもなかった奴に言われても きれいになって 汚くも 臭くもない レトロ風味の最新サービスを楽しんでも あの頃には戻りたくない 絶対に い…

家を壊す

家を 壊してゆく 畳を放り 床板を剥がし 根太を 垂木を 腐った木々を バリバリと 打ち壊してゆく 破壊の快楽 愛着からの離脱 慣れ親しんだ家は 半日で壊れた 壊れて また作って 新しい家として 住まう あっけないものだな 家も 人も なんの感慨も湧かない

でかけます

4日ほどでかけます

嫌なドラマ

ああ 嫌だ 津波の映像 振り返る人々 苦しみから 立ち上がった人々 全てが 一つの方向からだけ 光を当てられている 見る前から分かる 見なくても分かる 共感と同情に引き込もうと 安いメロドラマを作り上げ 批判できないよう 雁字搦めにしている ああ 嫌だ 人…

ネコの哀しさ

俯いて どこを見るわけでもない 何を考えているのだろう わがままで 自由に振る舞えるといっても 狭い家の中 餌は催促せねばもらえない 生まれてから 死ぬ日まで 同じ種にも逢えず 外を眺めては 鳴いている 衣食住の心配はなくとも 生きがいは持てまい 喧嘩…

忘れる時

76年前の今日 東京が焼け野原になったなんて 10年前の明日 東北が津波に呑まれるなんて そして今 非常時の最中 戦争もしていない 災害も起こっていないのに 外に出られず 花見もできない 世界が終わらないだけ 厄災もなくならない 人生が終わらないだけ 不幸…

三寒四温

春が来る前は 海が荒れる 春が来る前は 風が乱れる 花粉舞い 黄砂落ち つわりのごとく 不調に見舞われ 頭は重く 洟水垂れ 喉は辛い 季節変わり 生命息吹き 伸びてゆく 体も変われと促され 老骨軋ませながら 外に出る 三寒四温 目まぐるしい変動に 振り回され…

渇望

追い求めて 探し続けて 地の果てまで走り 世界を見渡しても どこにもない そうだった 何を求めているのか 分からなかった 分からないのに 飢えている 満たされない思いに 満ち満ちている 気を紛らわす あれやこれやに いくら手を出そうと 渇望は 治まらない …

言葉の依代

不安は消え去った 不安がないことが 不安である 己を鼓舞し 精神の絶壁に立たせ 泣きながら 歯を食いしばり 一葉 一葉 絞り出す言葉 適当な 安全地帯から曰う 無難なメロディーが 敵うはずもない 精神を削り 命を擦り減らし 己を言霊に憑依させ 刻みつける …

アリとキリギリス

枠の中で 磨き上げたテクニックは 枠の中で輝く 一歩外に出れば 素晴らしいものが きらめいている あれも これも 手に入れたい 中途半端に手を出しては 何も手に入らない 分かっている 隣の芝生は青い でも 何も手に入らなくても 世界の広さを知りたい 世界…

嘘元気

身近な日常が 欲しいときもある 幸せが己の近くに見つけられるのだと 思いたいときもある 掌の幸せ 日常の機微 詩を読むって そんなことなのかい はてしない空想 大いなる嘘 イメージに酔いたくて 紙の中に 没入する 嘘でいい 嘘だからいい 日常なんか ふっ…

感情の彼方

感情の振り子が 今日も揺れていた 右へ左へ 風に靡く花のように か弱く その場限りの震え 泡が浮かんでは消え 背に当たっては上る 温み水に 体を漬け 丸まって 何も考えないようにしていた ただ 電気のように走る 感情の起伏に 反応してしまうのが 厄介だっ…

無意味

意味がないから 辛い 意味がないから 苦しい 意味が欲しくて 意味が欲しくて 生きる意味も 苦しむ意味も 与えられたかった 与えられて 再び苦しみ 反発して 苦しみ 敗北して 苦しみたかった 意味という紐を 手繰れば 進む方向は おのずと決まる 羅針盤がなけ…

のたうち回る

死に向かって のたうち回る人生 苦痛と試練に のたうち回り 凡庸と無難に のたうち回る どちらも願い どちらにも不満 堕ちてゆく虚無の中で やはり のたうち回っているのだ 藻掻き 足掻き のたうち回るのが 生命の発散なのだ

ステレオタイプ

使いまわし続けた言葉 いつも同じ 繰り返すだけ 多様で繊細で 工夫をこらした表現は面倒だから 楽に流れ 定型のストックを抱えて ルーティンを回す そうして幾歳月 ステレオタイプに浸食されて 言葉に襞がなくなった 抑揚も ニュアンスも 感情を表す表現も …