2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

山が来る

もうすぐ 山が来る かつてない 大きな山が 眼前に 立ちはだかる 越えるか 避けるか 戻ろうか 頭の中で 山はどんどん大きくなる こんな時は いつだって怖いのだ 大声で響く やまびこを聞きながら あと何日か立てば すべて 終わっているのだと 己に言い聞かせる

幸せの涙

今ここに 幸せがあるならば 幸せとは 不快と苦悩から 解放されている時 としか 言えない 何もない 困っていない 辛くない 淡白な 味も素っ気もない 空気を吸うかのごとく そこにある幸せ これを まあ良しとして 辛い時に思い出し 人生を歩んでいくのかと思う…

木綿淡白

ボロ着て 絹着て 木綿着ず 日常の物足りなさ 歯がゆさ 退屈さ いつか復讐されると 分かっているのに 日常が味気なくて ついつい 蹴飛ばしたくなる 木綿豆腐だったら 毎日食べても飽きないのに

私は言葉

言葉を吐き出し 残すことで 私は私を見ている 辛いとき 嬉しいとき 書いた言葉によって 私は私を思い出す 私という人間は 言葉の中に入り込み もはや言葉でしか 想起できない あの日 あのとき 何を考え 何を思っていたか 私は 言葉によって 私を思い出す 言…

書いた言葉

書かれた言葉に 寄り添わねばならぬ 紙の上の言葉は 近づいてきてくれない 聞き返すことも 説明を求めることも できない だから あれこれ考えて 表現にも 意味にも 接近し 言葉の文脈に合わせる 疲れようと しんどかろうと 他に方法はない 一方的 ときに高圧…

足を漬ける男

その男は 湯船の縁に座り 足を漬けていた 1時間も 2時間も 座っているのだった 邪魔であった 我儘に思えた 鬱陶しかった 男は 毎日来て 毎日足を漬けている たまに 座禅の真似事や 印を結んだり ブツブツと 何やら唱えたりしている 2時間も浸かってから 桶に…

スマートでクレバーな軽蔑に立ち向かう

薄ら笑いを浮かべながらの 曖昧な返事 バツの悪そうな態度 やんわりと 拒絶された時の 相手から出る 面倒くささ 嫌悪感 蔑み 嫌なものだ ああ 嫌なものだ 壊したくなる はっきりさせたくなる それが 事態を悪化させると 分かっていても 適当なあしらいで 遠…

振るえる花

外に置かれた ひと差しの花に 風が吹きつけていた 海辺の風が 塩辛く 砂の混じった 痛く 冷たい 空気の塊が 花弁に 葉脈に当たっては 振るえていた 曇天の下 緑と黄色の 小刻みが振動が 止まない 茎は曲がり 今にも折れてしまう その刹那 ふと 風が止む 陽が…

孤独の海に

孤独の海に 突き放されて ポチャンと落ちた 心の音が 頭の中に鳴り響き 体も心も止まった 拒絶 すなわち 孤独への道標 世界中の どこにも 誰も 私の傍に立つ人はいなかった ただ一人 いても いなくても 意味なんてないじゃないか どんな都会に生きようが 山…

この海に

波が打ち寄せている 何もない 浜辺に 風は寒く 空は灰色 ただ波だけが 打ち寄せることをやめない 叫んでも 嘆いても 何も変わりはしない 反復の中で 変わる季節を待ち 再び戻る日に また願う 願っても 願っても 打ち寄せる波はやまず 彼方に見える 水平線だ…

自己観想

内省 できない 放蕩 堕落 怠惰 好き 自由が好きと言いつつも 楽したいだけ 他人の足を引っ張る はみ出る 打たれる 嫌いになる 付き合わない 寂しい 悲しい 落ちぶれる 穴の底から 空を見上げているばかり

サンチューのパー

三杯飲んで 昼寝して コロナコロナと どこへも行けず 飲んで 糞して 寝てるだけ 布団を転がり 頭を振れば 脳みその隙間から ミジンコの唄が聞こえてくる 泡立ち スカスカの 液体のような 軽く 空っぽ 歯ごたえも 噛みごたえもない 歯ぎしりもできない 穴から…

50年ぶりの叫声

一口食べただけで 思い出した 50年前の この場所を 騒ぎ立て 酒を呷って 出てゆく者 次から次 入っては呷り 呷っては出てゆく 汚くて 危なくて 勝手だった 50年ぶりの この味 50年ぶりの 風味 50年ぶりの 嬌声 50年ぶりの 50年ぶりの 繰り返し 呂律も回らず …

場末の酒場にて

暗く 汚い 場末の酒場 つけっぱなしの テレビの声だけが大きく 人は皆 下を向いて 酒を啜っている 中華鍋を振る音 焦げ臭さ タバコの紫煙は 油まみれのダクトに吸い込まれていく 一杯 また一杯 素性の知れない酒 翌日に頭は痛くなる でも 安酒を飲みたい時が…

人がいない

買い物も食事も 何不自由なく 街には人が溢れ 道路はつねに渋滞 それなのに もうずっと 人と話していない 円滑に 問題ないはず 人と話さなくても 会わなくても 砂漠 大海の孤独 いや 孤独でもない 麻痺 人と繋がらず 寂しさもなく 淡々と 消耗してゆく人生 …

今日もコロナの雨が降る

街中に コロナの雨が降り注ぎ 人々は 家路を急ぎ 見えない不安を マスクで示し 街を沈めている 分からない だが 確実にある そんな居心地の悪さに いらつき 攻撃的になり 人が人を避ける 見えないのに 避けられると 分からないのに 避けよと言われ できるの…

狂い咲き

歳とり 落ち着いた暮らしのなかで ふと 羽目を外すとき 溜め込んでいた狂気が 爆発する圧力 日頃の静謐に比し 弾ける衝撃は 若者より強い 馬鹿にしない 馬鹿をしない いやいや 馬鹿をしたい 馬鹿になって おかしくなって 今日も明日も すべて放り投げて 遊び…

偶然に訪れる

楽して だらだらしながら いつか とんでもない僥倖が降ってくるのではないかと 夢想を重ねて幾年月 そんなもの あるわけなかった 宝くじですら 買わねば当たらぬ 突然来るのは 不幸ばかり 雨に降られた 大雪に閉じ込められた 台風で動けない ハチに刺された …

雨中訪問

篠突く雨の中を 歩いていた 白い息を吐き 指先まで凍えながら 歩いていた 死に向かう 人に会うために どこを見渡しても 人っ子一人いない 緊急事態宣言の街は 沈黙の風景 私の会う人は 音信不通 店の前に行き 張り紙を見て 立ち尽くす もう何度 同じことを繰…

人が人であるために

人が人であるために 夢を見て 人が人であるために 未来を描き 人が人であるために 妄想に溺れ 人の顔は いつも 前を向いている 現実に生きるつらさよ 夢は 人を生かす幻 遠き大地へ 人を駆り立てる源 現実がなくても 夢があれば 夢を追っている間だけは 人は…

変化が変わった

変わる世界に 胸ときめいていた頃 変わっていたのは 自分だった 目まぐるしい変化 次々と訪れる 新しい環境と人間 肯定していた 恐怖もなかった いまは 変わってしまうのが怖い この歳で 変わることは 常に 悪い方にしか 向かわないから だから 良い方向への…

空わっしょい

新規開拓も 挑戦も やらなくなって どれだけ経ったろう 年賀状に 今年の目標を書いていた過去 いまは 送られて来た年賀状を読み ため息をつくばかり 目指すものを 失ってしまった 生きる意味も 生きる張り合いも 溶けてなくなった だが 生きている 今が今な…

二度目の緊急事態

穏やかな日常が 遠ざかる 耐え忍ぶのが つらいのではなく 失われることが 耐え難いのだ もう戻ってこないのではないか 人と人とが 気兼ねなく会える日々は 呑気で無邪気で 感染など気に留めなかった 懐かしい過去へと 追いやられてしまうのか 変わるのではな…

許容精神

ルールが緩めば 無秩序が到来する ルールが厳しければ 居心地が悪くなる 許容精神 人の振舞いを どこまで認めるか 厳格な世界が 厳密な世相をもたらし やがて 重箱の隅を突き 人のあら捜しが 始まるように ハンドルの遊びがなければ 世の中は回らない ゆるく…

去りゆく人々

一人 また一人 去ってゆく 変わらない日々など なかった 明日が良い日と 信じられたのは いつのことか なくなってゆく 失われてゆく 日々と 人と 言葉 残すには 時間がない 記憶すら 曖昧に ぼやけて 韜晦の余裕すらなく 焦点が合わず 立ち尽くすのみ

冬の湯浴み

風呂釜壊れ 薬缶で沸かした 湯をかぶる 立ちのぼる湯気 ひろがる寒気 鳥肌 温かくて寒い湯浴み 二度としたくない だが 懐かしさとともに 思い出すだろう

車窓にて

電車の窓から 目に入る こちらに向かって 手を振る人 田舎の人は 無邪気だねーって そんなの 当たり前だろ 見ず知らずの 他人だから 手を振ってんだよ

場末の酒場に預言者来たりて

場末の酒場に 預言者来たりて 未来と終末を説く 限りなく広い世界の 隅の隅で 酒を片手に 呂律は回らず こんな預言者が 街の酒場に 数多く 一杯の焼酎と世界を 天秤にかけては 顔を赤らめている 一時の預言者は 狂人の成れの果て 古来より 変わらぬ 哀しいか…