50年ぶりの叫声

一口食べただけで

思い出した

 

50年前の

この場所を

 

騒ぎ立て

酒を呷って

出てゆく者

 

次から次

入っては呷り

呷っては出てゆく

 

汚くて

危なくて

勝手だった

 

50年ぶりの

この味

 

50年ぶりの

風味

 

50年ぶりの

嬌声

 

50年ぶりの

 

50年ぶりの

 

繰り返し

呂律も回らず

 

酔って

思い出した断片は

 

壊れた蓄音器にも似て

同じところを

グルグル回っている

 

50年ぶり

50年ぶり

 

それでもなお

 

忘れていたのに

 

思い出したせいで

 

忘れたくない気持ちが

蘇り

 

50年ぶり

50年ぶり

 

同じことを

繰り返すしかないのだった