2022-02-01から1ヶ月間の記事一覧

死の憂鬱

人が死んでいく 当たり前の 必然であったはずの日常を 戦争が変えた 疫病の死は やむにやまれぬと 己を納得させる されど 人為的な 殺意がもたらす死によって 死にたくない人々が死に 若者が死に 子供が死ぬ 最規模な殺人が 世界で行われている今 兵器が 人…

眠り

眠りにまさる薬なし 眠り 忘れ 眠り続ければ 何も思わぬ このまま いつまでも 寝ていられるなら なんの悩みも 苦しみもありはしないだろうに 二度と起きないとしても

獣の祭り

犬がBANBANと鳴けば 猫はNONENONEと鳴く 朧月夜に 爆撃機飛び 動物園は 獣の鳴き声に満ち 火の手上がる 丘の向こうは 艶めかしい 明るさを放っている 獣臭と 獣声にむせながら ジャングルの中を 明かりの方へ 麻痺した頭で 近寄っていく それは死の誘い 近づ…

悪の雨

暗黒に染まった曇天より 無慈悲に 理不尽に 雨が降り注ぐ 死が 無秩序に 訪れ 悲鳴と 怨嗟が 地に満ち 悪の雨は 降り止むことがない この空は かつてないほど 絶望に満ちて 日も差さず 禍だけをもたらす 上を向けなくなった顔は 道端の瓦礫に 目を落とし 暗…

苦しい

苦しい 苦しいって 客観的に見たら 全然苦しそうじゃない 寝ているだけ 食べて 寝て 何もせず それで 苦しい 苦しいって 分かってなど もらえそうにない だけど 苦しいのだよね 苦しいから 何もできないし 苦しいから 身動きが取れない 縛られて 身を固める…

狂乱の渦中

冷静さなど糞食らえ 何も分からず 何も見えず 人から避けられ 睥睨されていることさえ 気づかず 己だけに耽溺し 藻掻き 足掻き 自分を中心に 全てを判断し のたうち回っている 気遣い無用 配慮無用 自分のことだけ考えて 世界には 自分しかない 自分が無くな…

没頭

世界が見えなくほど 没頭している時が もっとも深く 世界に入り込んでいる

繁忙

忙しいのは良いものだ 嫌なことを 考えずにすむ まして その忙しさが 金や成長につながるなら 言うまでもない

雨に打たれて

雨に打たれると かなしい 冬の冷たい 雨に打たれて 吐く息は白く 視界は狭まる 靴の中に 襟元に 雨は染み込んで 冷たく 何も抵抗できない 打たれながら 歩き 冷気と露は 浸食し 体の芯だけが 熱く ますます 心は閉じこもっていく 歩く 雨に打たれて 歩いて …

山が動くなど あるのだろうか 海が割れるなど あるのだろうか それが あるのだ 人々は 山々を船でめぐり 海底を闊歩する ゆるやかに流れる山並みは しだいに裾野へ広がり 海は開拓され 豊かな作物を実らせる 四海のすべては 人の手の内 雷に乗り 風を漕ぎ 海…

回帰

離れては戻り 戻っては出てゆく 飽きて 居られなく しかし 居場所がない 循環こそ もっとも重要な運動で 出て戻る度 少しずつ 刷新される 停滞を恐れ 退屈にうんざりし 非日常には 居続けられない そんな回帰を 続け 回帰に飽き 別の循環をはじめ 再び回帰し…

不自由

なんでもあり なんでも手に入る 思う限り なんでもできる 神のごとく モノもヒトも 好きなように 支配し 心さえ 思うまま動かし できないことなど 一つもない 苦労したければ できるし 心配したければ できるし 号泣も 淪落も 堕落も 嫉妬を買うことも 恨ま…

意味

意味が欲しくて 意味を求め 意味を探し らしきものに入れ込んでは 失望し それでもなお 意味が欲しくて いつまでも 彷徨い 何も手に入らない 探して無駄なら 作ればいいと 勝手に こねて いじくって つくった泥団子を 眺めていれば 元の土と変わりがない 意…

切る道具

作品があり 作品を取り巻く文脈がある 作品を知るなら 背景を知れと 知ったかぶりに説かれるが 背景の知識に酔って 作品を見ない愚か者が多すぎる ミソジニーだの ホモフォビアだの あまりにも あまりにも安易に使いまわして 悦に入っている感想文が もはや…

社会を振りほどけ

社会など 何の魅力もない 中にいて これほど否定したくなるものもない 社会の役に立てと 言われながら 社会が役に立ったことがあったのか 無自覚に 社会生活を営み どれほどお世話になったかと 恩着せがましく言われても 嫌いなものは仕方がない それは 身の…

破綻の手前

怖ろしい怪物が 口を開けている 今にも 食らいつきそうな 口の周りで ダンスを踊り はじめは 恐ろしさに震えても いつしか 踊るあいだに 慣れ 馴染んで 恐怖は吹き飛んだ だが 状況は変わらない あと一歩 あと一押しで 奈落の底に落ちてしまう そう 今日なの…

里の鳥

山の端に沈む太陽 辺りに闇が降り始める 影の中を 白い鳥が 一羽 また一羽 西へと飛んでゆく ゆったりと 同じリズムを刻み 暮れゆく時に合わせ 西方へ 飛んでゆく 里は静か 川はゆったり流れ 夕餉の香り漂い 一日は 終わろうとしている 鳥は 里の上を 淡々と…

無駄な日々

今日も一日無駄にした 今日もなんにもしなかった 世界では 毎日多くの人が死に 不幸に喘ぎ その日を生きることさえ ままならない生活が 遍在しているのに だらけた どうにもならなくて だらけた 美しさも 醜さも 全部あった 怠惰も 勤勉も 空虚も 贅沢も 今…

ルーティンの日

ルーティンは落ち着く マンネリと言われようと 怠惰と腐されようと 同じことをして それが 少しでも前進につながったりしたら 心は安定し 自分を肯定でき このままの今を 疑いなく過ごせる 所在ない不安も 空虚なかなしさも 忘れていられる 同じことをして …

怠惰の恐怖

退屈よりも 怖ろしいものなど あるのだろうか 死や病のほうが 怖ろしいだろって 孤独や離別のほうが 悲しいだろって 苦しいものを挙げれば いくらでもあるように思っても 絶対に避けられない死など 生のうちの恐怖ではなく 未来への不安でしかないし 孤独も…

日常を取りもどせ

もうすぐ 今週にも ピークを超える 気をつけろ 気を抜くなの 大合唱をくぐり抜け 日常へ 少しづつ 回帰してゆく これでいいのだ 心配なく出かけ 飲み食いし 笑い酔った日々 戻ることより大事はない 一歩 また一歩 近づきさえすれば 心は平穏を取り戻せる 汲…

どうで死ぬ身だったのか

石原慎太郎の訃報には 納得がいった もう書いた 不幸な死でもない 西村賢太の死は 受け入れられない まだ書けた 私小説の面白さを 今の時代でも見せられた 早すぎる 文体も ナルシズムも 自己破壊への衝動も まだまだ 掘りさげて 書き続けられた 書いたもの…

別れ

別れもまた日常 いくつになっても 別れることばかり 今日も一つ 土地と別れ 人と別れ 少しだけ 感慨にふけり 諦めたのだった 自分と別れるならば このように別れたい ふと脳裏をかすめた

ネットの日常

今日も繰り返される ネットの中の罵詈雑言 オレのほうが偉い 自分のほうが上だと 手を替え品を替え レトリックを駆使し 様々に理論を援用しつつ 婉曲に人を馬鹿にし 差別はいけないと差別し サル山の醜悪な争いを 繰り広げている ある者は誰かに仮託し ある…

捨てられること

比べられ 切り捨てられる残酷さよ お互いがお互いを選び 関係を終わらせるのも 相手次第 平等な間柄に思われるが そうではない 歳をとり 就くべき仕事にも就けなかった者にとって 藁にもすがる思いで 手に入れた職 嫌なら辞めればいい そう言われても 辞めら…

見過ごす

毎日 人が死ぬ 毎日 人が倒れる 分かっていて 見過ごすことが大事 なぜなら 出来もしないのに 正義漢ぶって 正論を振りかざしても 何も変えられないだろ 何もしないよりマシだと 善へのベクトルを 無批判に全肯定して 著しくバランスを欠いた 正義に傾倒し …

痒い

触れられると むず痒い 治せない患部 痒さは 実のところ おとなしい 痛みでもある 擦れば しだいに 痛みを覚え さらに擦れば 痛さで触れなくなり 腫れ上がる そうなる前の むず痒さ どうにもしんどくて 痒さを覚えている間 内省的になり 痒さに耐えている間 …

わたしを忘れる

わたしは わたしを忘れた 人波の喧騒を聞きながら 腰掛けたまま 話すことも 考えることもなく 揺蕩っていた わたしが何者で 何を言うのか どこから来て どこに向かうのか 生まれも 行く末も 存在すらも 忘れられて 幸せだった あるかないか分からず あろうと…