触れられると
むず痒い
治せない患部
痒さは
実のところ
おとなしい
痛みでもある
擦れば
しだいに
痛みを覚え
さらに擦れば
痛さで触れなくなり
腫れ上がる
そうなる前の
むず痒さ
どうにもしんどくて
痒さを覚えている間
内省的になり
痒さに耐えている間
原因を振り返っている
痒い
むず痒い
どうにも厄介だ
いっそ
思い切り
掻きむしり
傷だらけにして
即物的な快感と引き換えに
痛みにのたうち回ろうか
いや
ここまで我慢したのだ
痒いというのは
治りかけということだ
このまま辛抱すれば
痒さも治まり
元に戻れるのだ
だが痒い
掻くか
掻かざるか
このくだらない往復に
時も手間もとられ
わたしは
いつまでも
夢中なのだ
