2017-10-01から1ヶ月間の記事一覧

不全 変態 予感

コーヒーは黒いけど真黒じゃない 海は青いけど真青じゃない 血は赤いけど真赤じゃない 僕は人間だけど真人間じゃない 完全へ到達できない色彩と 意志を透徹できない人生を前に 精神はドロドロに溶解し 形質を保てず 外へ流れ出す 耐えられず 己を繭のごとく…

軽薄で健康なこころ

ちょっと雨が続いただけで ちょっと外に出られないだけで ちょっと洗濯ができないだけで すぐに憂鬱はやってくる 繊細というか 弱いというか 気分は小さなことで変わり それに右往左往するのがもどかしい 私の気持ちはわがままで 私の思うとおりになってくれ…

いつかのためのルーティン

本当に書きたいことは 垂れ流しのようなルーティンから 生まれ出るものではない 思いもよらぬ衝撃 書かねばならぬ衝動 書きたいという意志によってこそ 読むに適う文章が生まれ出る ではなぜ毎日書くか スポーツ選手が試合に出られなくても トレーニングする…

モヤモヤとした停滞のなかに進む

悩みも不安もなく 心身ともに健康 快活で力が湧き上がってくる そんな時は 一年に何度もない やることに追われたり 悩みを抱えたり 身体がどこか不調であったり あるいは 原因は見当たらないのに どこかだるい やる気が出ない そんな何とも言えない モヤモヤ…

デパートの食堂

昔のデパートには 上の階に大きな食堂があって 大人も子供も 年寄りも赤ん坊も ご飯を食べた お父さんのビールから お子様ランチまで 何でもあって 誰でも入れる ラーメンも スパゲッティも うな重も ハンバーグステーキも 今となっては 専門店で食べるもの…

私は駄作を忘れない

言葉を毎日書けば 上手くいかない日もあるし 書くことがなくて 空っぽの自分に失望もする それでも ひねり出して 表した言葉が 残念ながら 納得できないものであったとしても それはそれは愛しい 愚作でも駄作でも 私の日々を反映し 葛藤も苦悩も 織り込んで…

初めての味

初めてコーラを飲んだ時 美味しいとは思わなかった 初めて烏龍茶を飲んだ時 美味しいとは思わなかった 初めてビールを飲んだ時 美味しいとは思わなかった だけど飲んでゆくううちに 味に馴染んで 味が分かるようになった 食べ物に限らず 初めて体験は 良いの…

徒労の叫び

徒労にどこまで耐えられるだろう 一生懸命 育てた果実が 風に水に流され 耕した土は 水浸しになり これまでかけた 時間と手間が 水泡に帰す 泣いた 泣いた 叫んだ 叫んだ どうにもならない現実 時間は巻き戻せない 備えておけば良かったと どれだけ悔いても…

非常時の享楽

雨降り続く休日 家に篭る 十万年も百万年も昔から 生き物は雨宿りして 天気を待つ 暴力的な降雨は 行動の自由を奪い 屋根の下 不安と鬱屈を抱えながら 有閑を持て余す時は気だるく ただ待機せねばならぬ 拘束の一日は 怠惰で甘美である 幼い頃 風邪を引き 昼…

未来を描く

次の食事や映画 旅行に買い物 未来とは 些細であっても 期待に満ち 欲望や夢を叶えてくれる 明るい展望を描いて 生きてゆきたいものなのに 未来に希望が持てなくて 過去の甘美にすがりつき 未だ昔を想いながら ゆっくりと 沈降する人生の退廃 年をとるほど …

街燈照らす家路への旅

今日もまた 雨が滴る寒空に 白い息して 道をゆく君 俯いて 泳ぐ視線に 先は見えず 道に流れる 雨水を避け 交差する足 靄に浮かぶ 赤い頬 歩けども 歩けども 暮れゆく秋は 追いかけ 闇は迫り 雨はまだ降る それでも 君は歩き 人待つところへ たどり着くか 街…

動く身体が意思を支える

朝から晩まで忙しくて やることばかりが目について どこを向いているのか 分からなくなり 充実しているのか 消耗しているのか ふと我に返る日常で いつかの虚無を思い出し いささか迷いはするものの 動き続けるわが心臓と 空腹を伝えるわが身体の 生命活動を…

風狂の街

冷たい風に 暖簾がパタパタ音を立て 街ゆく人は襟を立て 早足で通り過ぎる 赤いぼんぼり 遠い嬌声 ガード下の路面電車 湯気たてる屋台 冬の気配が 巷に流れだし 風の寒さとともに 人はせわしなく 動き回る 建物の内と外に 気温の隔たりが生まれ 冷たい頬を緩…

夢魔ネコ

ダラケきって 昼寝しているネコ 突然 ウ~ンウ~ンと 唸りだす 静かに近づいて そっと手をにぎる ネコは再び スヤスヤと 寝息をたてはじめた どんな夢を見ていたのか ネコだってうなされる ネコだって大変だ

好きの日々

好きな気持ちは ゆれ動く そこそこ好きだったはずなのに いつの間にか 好きでたまらなくなったり とても好きだったのが 日常に馴染んで なんとも思わなくなったり する ある時に 理由なく 歯車が噛み合って 一気に好きが吹き出すと 寝ても覚めても そのこと…

気だるい夜

滴り落ちる雨音 野良猫の鳴き声が遠く聞こえ 静かな夜がしっとりと更けてゆく しとしと降る雨が 周りを覆い 暗い部屋で まどろむにつれ 薄いヴェールの 繭の中のような 安堵と静寂と 時が止まったような錯覚 このまま いつまでも 毛布の中で 惰眠を貪りつづ…

水の味わい

水を買うなんて馬鹿らしいと 二十年前には思っていたけれど 今ではお茶よりもジュースよりも 水を買って飲む 水の味にうるさいわけじゃない むしろ味がないことに 水の価値があって 透明で色の付いてない存在は エネルギッシュな主張の合間で 自分を素に戻し…

秋の夜の音

透き通った 秋の夜空に 遠く聞こえる 風の音 子供の頃 暗い外灯を抜けて たどり着いた記憶を 呼び起こすように 風は遠くから 時間も空間も超えて 私の胸に吹き込んでくる 風呂屋の湯気が漏れる雑踏 桶の転がる響き 汽車の汽笛 火の用心の拍子木 記憶の中 ノ…

ゴミ拾い

毎朝 道をほうきで掃いて 向こう三軒両隣 ゴミ一つ落ちてない きれいなことは良いことだと せっせと掃除する 誰に言われたわけでもないのに 立派です 実に立派です きれいさ 清潔さ 潔癖さ それを保てるのは 自分を律しているから それが偉いことは 重々承知…

自分の心なのに

ふと思い出す過去 何気ない記憶 旅先で切符をなくしてしまったこと 今になって どうして蘇るのか ちょっと残念だったけど さして心痛めたわけでなく 些細なミスだと 割り切ったはずなのに 頭の隅にこびりつく 自分の心なのに 自分の意識なのに コントロール…

人に話せる

目の前に人がいて 私は言葉を選ぶ 喜ばせるか 悲しませるか 一生で ただの一度 すれ違う人に どんな言葉を贈ろうか 有り体の言葉なら 忘れさられて 消えてゆく 歯の浮くようなヨイショも 罵り嘲る言葉も 人は求めない 求める言葉など 分からない ならば 一生…

私の正義≠正義

心のうちに信念や 正しさを持つと 人は自信を持って生きられる しかし 自分に正義があると信じ 自分こそが正しく 他人が間違っているのだと 思い込んだとき 人は他者に対して 傲慢になり 横暴になり 糾弾し 抑圧する 自分の正義は 相手の正義とは限らない そ…

世の灯り

暗い夜道を照らす 一つの外灯 歩みを進める者にとって どれほど心強いだろう 漆黒の闇や 座標のない海を渡るのは 不安と困難に 押しつぶされてしまうから どんなに小さい星であっても ほの暗い外灯であっても それを頼りにできるなら 人は祈るような気持ちで…

流れる

湧き上がり 流れ出す 水のように この世に生まれ 何も知らず ただ生きるなら 生まれたての 小さい流れは 急流で 斜面を早く下り 他の流れとぶつかるごとに 少しずつ太くなり 徐々にゆるやかに 大きく 穏やかになるのでしょう 人の波に呑まれ 時の流れに沿っ…

秋風秋雨・・・

一雨ごとに寒さ増す 雨上がりの森を歩けば しっとりと湿った 落ち葉と まだ残る緑から 匂いが立ち上る 葉の陰のきのこ 水滴とともに落ちるどんぐり 冬支度へ向けた 山の装い 歩きまわり 風呂へ入れば ぬくんで ゆるんでゆく四肢により 身体が冷えていたのが…

寒初の布団のなかの私

朝に晩に 寒さを感じる時分 もぐりこむ布団は 温もりの心地よさを 思い出させる それは 人の数だけ多い街で 無機質な生活のなか ふとした人情に触れた 温かみにも似て ずっと前から 知っていた 分かっていたはずなのに どこかに忘れた 私の中の 良かったもの…

自由の悩み

穴を掘りなさい 掘り終わったら 埋めなさい 穴が埋まったら また掘りなさい 目的のない行為 無意味さ 徒労 これほど人を疲弊させるものはない だが人は 目的を与えられて この世に生まれてくるわけではない 何のために生きるのか それが分からないまま 人生…

秋快辞

風が 空が 大気が澄み 金木犀が香り 木々が色づいて 落ち着いた 出来上がりの 快い季節 もったいない この時を 何に使おうか

壊れゆくまで

いつか壊れる 全てのもの 手持ちのコップ テレビ 時計 住む家まで 壊れる必然には 抗えずとも 丁寧に 投げ出さず 使うのなら 古いことの良さが 現れる 磨き込まれた手摺りや 渋みのある革製品 木目が黒光りする家具 そして おそらくは 人生も 自暴自棄になら…

鳴き猫

夜 猫が鳴く オワーン ニャオーン ヴーヴルル 時に赤ん坊が泣くように 言葉なく女が叫ぶように ウォーオーウー エ゛ーイ゛ー ニャーニ゛ャー ヴャー 声は高まり 緊張感を増す 一瞬の静寂の後 ギャワワアw ヴャニャオーーー 激しいぶつかり そして 一匹の逃…