2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧

空腹の夜

腹が減る ああ 腹が減る ひとたび 体を壊せば 何日も 食べたくないくせに 明日の朝まで 我慢しろと 言われた夜は 長く伸びる 水を飲み 腹膨らませても 空腹の飢餓は 満たされはしない ああ 腹が減る 眠れない夜に 空腹を抱え 日が昇るのを待つ 蒸し暑く 汗滲…

ビニールハウスの薔薇

悟りすました顔に ニヒルな態度 人生の肝要を 知り尽くしているように 決まりきったことだけを 繰り返している 臆病者め 自分が描いた イメージの虜となり 世界を貧弱で 矮小な像に作り変え 一人悦に入っている バラの花に 虫食いがないとでも思うのか シミ…

独白の前

書き言葉は すべて独白 それでいながら 独りごちるものではない 独白であって 独白に陥らず 個であって 個で完結せず 私事であって 私にとどまらない 意味は二の次 言葉の 音とリズムが 魂に呼応して キレて 伸びて 芯にまで届き 剥き出しにする 言葉という…

風当たり

炎天の向こうから 吹き渡る風 エアコンの冷風と 雲泥の差なのは どうしたわけだろう 天然の 熱交換システムが 地に落ち 降り注ぐ熱を取り払い 蝉の喚く公園に 熱帯夜の喧騒に 等しく吹き渡ってゆく 刹那 なびく髪 揺れる葉 そして 何事もなく 暑さに浸る 陽…

残雪まだら模様

汽車の駅を降り 橋を渡り 田園を過ぎ 水を遡り 山に入り 森を抜け 高山を歩けば 雪渓に 埋もれる岩石 霧が下から迫り 死神が舞う 冷たく 濡れた風の中 視界なき 極高の地に ツェルト一枚で耐える 真夏に凍った カチカチの雪 砂利と雪と 踏み締め 山を照らす …

心の痒み

何か問題があるわけではない 心身ともに健康 人付き合いもそれなり 生活に不安なく 安定した毎日 なのに それなのに 悶々とした何か もどかしい 心のどこかに 魚の骨が刺さったように このままではいられない 不安と焦燥の ほのかな香りが 胸の奥から 流れて…

漱石の残り香

則天去私と 漱石は言ったけど 私に塗れた小説を書き 死してなお 漱石の名は残り 去私などと 程遠い有様 漱石ほどに 私の隅の隅まで 暴かれた 作家も少なく もはや 作家というより 私人としての振舞いが あまりに知られた 有名人ですらある それでもなお 個人…

天球の下に

狭く 暑苦しく 破れかぶれの日常に 身を置くからこそ 己の身体と かけ離れた はるか 遠い時空に憧れる 数万年 数百万年も前に発した 星の光が 地に降り注ぐ 海の向こうからやってきた 風が 草原をたなびかせる 青い虚空から 陽が注ぎ ずっと変わらない 地上…

ふわふわ

あるかあほりっくのように よいよいで たのしくやりたい きおくはおぼろげ ときはなく ふわふわ さめれば おもくて くらくて だるいから いつも くものうえで ちゅうにういて ふわふわ よろよろ ちからがはいらないから にやにや だらだら いつも よってる …

ストを手放した国

このところ数十年 ずっと給料が下げられて 少しでも文句を言おうものなら 困った奴だ 仕事があるだけでも有難いだろ 働かせてもらってる身で 文句なんか言うな 会社の言いなりどころか 労働者が 労働者を潰す 奇特な社会が 姿を現している ストもデモも反社…

山月記症候群

己の望まぬ姿に 変わり果て こんなはずではなかったと 過去を憂い 過去に囚われ 残り少なってゆく人生を呪う 自惚れていた 怠惰だった 己が悪いと 自嘲を繰り返し 自分を責めては嘆き 堕ちてしまった今と自分に 哀しく酔っている 馬鹿な自分 駄目な自分 責め…

歌はいずこへ

言葉は流れ流れて 歌は変わり 気持ちが離れ 時代は変わった 愛だとか恋だとか 好きだとか嫌いだとか 歌は若者に育まれ 若者のために生まれる 染み入る歌詞 聴かせる歌 涙流れる曲は どこへ行ったのか 気持ちを込めた歌は どこにあるのか

避暑蝿

誰もいない 夏休みの学校 降り注ぐ蝉の音を背に 長い廊下を歩けば 差し込む日が肌を射す 部屋に入る刹那 ドアの端に 蝿が一匹 隙間から漏れる エアコンの冷風に じっとして 身を当てている 生命のけなげさ 虫までも欲しがる涼 暑さが再び迫り 汗が額を伝った

匂う記憶

太陽が昇り落ち 巡る四季の有様を 説明など出来ぬ 理由なく 原理もわからない しかし 生活も 我々の存在も それなしには 成り立たない 磯場で 早朝に上がる朝陽 山の端に沈む夕陽 じっと見ていた あの空気の匂いが 記憶ととも刻みつけられて 始発電車に揺ら…

投げ出したい頃

手繰り寄せる日々に 手垢がついた頃 離れたくなった 暮らしを噛みしめることは 足枷にすぎなかった 飛ぼうとして 飛び上がれず 抜けようとして 動けない いつしか 身体を精神が縛りつけていたのだ 一定のテンションをかけ 転がり落ちないように 安定を保って…

夏の夕陽

暑い暑い 熱射の大気の中を 陽が落ちていく 寺の参道 木々の合間から きらきらと 陽の光がさざめき 敷石を オレンジ色に染めている 風が吹けば 揺れる木々が 夕焼けを見え隠れさせ 街場の夕暮れは 生ぬるい風にまみれて 石段の向こうに広がっていた

一歩一歩

追い込まれ 疲れ果てた先に見るのは 夢なんかじゃない 目の前の一歩 目先の目標 これをやって 飯を食う これをやって 眠る 考える余裕などない 一歩一歩 その先が 終わりに近づいていると信じて 疲れた体に鞭打ち 眠い目をこすって 汗だくで フラフラになり…

自然の辞

自然の摂理は 実によく出来ている 暑い夏には スイカやトマト きゅうりやなす 水分たっぷりの野菜や果物が 旬を迎え 我々の喉を潤し お盆の午後には 雷と激しい雨が ざっと降って 夕食の発汗を いかばかりか 和らげてくれる などと 自然を礼賛するのは 己の…

意欲減退のムシ

脳みそから 意欲が垂れ流れ スカスカの空っぽで 何のやる気も出ない いっそのこと やめてしまおうか 無意味だし 空虚だし 面倒なだけ こんな気持ちで 体を動かすつらさ 苦しく痛いのではなく ただただ ダルく 鬱陶しく 気持ちが乗らない 病名はなくとも 誰も…

垂れる

どこからともなく 生まれ出て 一点に しずかに ゆるやかに 誰にも気づかれず 留まることなく 集約し 玉となった液体が しなやかに 長く 長く 伸びて 粘性を帯び 時の流れを緩め ついには 伸び切った水脈と切れて 地表へと 落下する 落ちた水粒は 地で弾じけ …

美文耽溺

美しい文章は どこから湧き出ても 美しい 醜悪な魂に宿り 犯罪を寄す処とし 原稿が血に塗れたとしても 美しい文章は 凛として 其処にある それは 虚栄心や自己顕示欲により バラまかれた金が 人を救うように いかなるクズの手に寄ろうと 良いものは良い 聖人…

人に遭う

世界は縁で 成り立っている あの時 あの人に出会って 変わった 人に会うことは 常に 期待と不安 緊張と安堵が入り交じる どうして こんな平凡なことに気づかなかったのだ いつでも どこでも 名刺を配っている馬鹿野郎 下手な鉄砲打って 当たりを期待しながら…

夏の風よ

夏の風よ 昼下がりに ふと我を思い出させる風よ 夕暮れに 暑さを払ってくれる風よ 夜明け前 誰も知らぬ間に 秋を運んでくる風よ 暑さに火照った体は お前に身を任せ 滴る汗を とめどなく流す 蜻蛉飛ぶ 川のほとりで 草木が揺れ 水面が波立つ セミの嵐の中 一…

非正規哀歌

暮らすための労働は 労働のための暮らしとなった 働くために生きて いつの間にか 絞りかすになっていた 給料は下がるばかり 家も体も朽ちてゆく 結婚をし 子供を育てられる そんなまっとうな人々とは 切れた 働いている時間は それほど変わらないはずなのに …

清潔の代償

清潔のために 生活は犠牲となり 会話は途絶え 人の生き方は変わった 巻き込まれ 仕切りに閉じ込められ 外出は 警戒を要し 外食は 危険な行為となる 人をバイ菌のように扱い 触れず 話さず 近づかず 狂っているね これほどまで 生活を売り渡して 人を猜疑の眼…

夏の音

夏が来た 暑く激しい 夏が来た 肌は焼け 喉は涸れ 目はうつろ 水を飲むだけ飲み 腹が膨れ 何も食べたくない 風のない部屋 床に横たわり 動けず 外から音だけが流れてくる 揺れる木々 蝉の声 子供たち 生命の活動が 聞こえる このまま 耳だけになって 干から…

日常の地獄

誰かが誰かを 虐げれば 虐げられた人は 他の誰かを虐げる 資本の論理が生んだ 弱肉強食 日雇いのオイラは 安酒を呷り 酔っ払って クダを巻いては 公園の猫に 逃げられる お金を貰って 我慢を強いられ プライドを売り払い 人に頭を下げる その精神の歪みは 下…

おしゃべり禁止

おしゃべり禁止 施設の至る所にあった 張り紙 憂鬱な 収容所 街が 都市が 膜に覆われている 国が 旅行を勧め 旅先では 来客拒否 なんて面白いのだろう 生活が苦しい このままではやっていけない でも 他所からは来るな 田舎の田圃道 歩く人も 自転車も 炎天…

夏の駅

炎天下に 立ち上がる陽炎 踏切の遮断機が降りると 遠くに 汽車が揺れる 陽炎の中を 走り抜け ホームに影とともに 滑り込んで 出た後には 誰もいない 照りつける日差し 蝉の声 ひと気ない駅には 夏の香り漂い 郷愁とともに いつまでも 脳裏に刻みつく

ハラスメント

組織の圧力と 人間関係によって 人権など たやすく踏みにじられる 物申す権利も 機会もない 組織に都合の悪いことは 隠蔽され どれほど理不尽であろうと 組織に従わなければ 陰湿ないじめと 表に裏に 退職を促す恫喝の対象となる 痛いほど 分かっている 中小…