2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧

人はいつでも被害者になれる

メディアの記事で よくある事件 ハラスメントを受けた その後 あの時の記憶が蘇ってきて いまだにまともな社会生活が送れない トラウマ こんな記事を読むたび 傷が疼く 場合によっては 反感すら覚える 誰にでも 思い出したくない記憶の 一つや二つはあるだろ…

甘露

数年ぶりの再会 重ねる杯は止まらない 頭は痺れ 時を忘れ 痛飲よどこまでも 夜も開け 狂った頭で啜ったラーメンは 胃の腑からあふれる 嘔吐 嘔吐 水を飲めば 嘔吐 空になった胃に 唾液が流れ込んだだけで また嘔吐 頭痛 胃痛 狂おしい乾き 眠りたくとも 眠れ…

いつもいつも勝利

よく眠れた 勝った 朝飯が旨かった 勝った 快便だ 勝った 天気もいい 勝った 散歩に行く 勝った 昼寝が気持ちいい 勝った 銭湯は最高だ 勝った 晩酌がいつも旨い 勝った もう毎日 勝ちすぎる 勝ちすぎて勝ちすぎて 勝利が当たり前になって たいした喜びもな…

マスクを付けない悪者

もう悪者でいいよ 社会的破綻者でいいよ マスクをつけないと 金玉を隠さないのと同じくらい 非常識と言われる 顔ヌードで 恥ずかしげもなく歩く人と 避難される 人々は 感染の恐怖と引き換えに 驚くほど安易に 自由と多様さを 手放してしまった 感染のリスク…

記憶の匂い

思い出せば 記憶とともに 脳裏に香る 学生服を来て走った 雨上がりの夏草の匂い 北海道の涼やかな風の下 照りつける太陽 なびく若草 遠い遠い 祖母の部屋 学生アルバイトで通った 浅草の倉庫 西の島の さびれた漁村にぶら下がる干物 記憶が匂いを呼び起こし …

よく観ておけ

憎悪にまみれた世の中で 政治家の声だけが 響いている 人々は飼い馴らされた犬 主人の顔色を伺って いつも液晶画面を眺めている 上から滴る情報が クソの役にも立たないと 分かっていながら テレビは繰り返し 不安を増幅し もはや煽られていることにすら 気…

飽死感

今日もよく人が死んだ 毎日毎日 あきれるくらい死んでいる こんなに死んでいるなら 死は当たり前のはず なのに 一人死んだら大騒ぎ 死にそうだったら大騒ぎ 死ぬと言っては大騒ぎ 人が多すぎるだろ 自分が生きたい 自分が死にたくない それなら分かる 誰かが…

人の営み

死人のように 動かなかった人が 頭を上げ 言葉を使い始め 顔に赤味が差す 饒舌に 愉快に 生き返った 前を向いていた 闇を抱えながらも 渦巻く厄禍を 飲み込んで 考える意思を失い それでも 自分で生きようとしていた おそろしく 愚鈍に見えるのであった それ…

移ろい

不満も満足も すべて心のなかにあるけれど 赤子が転んで 泣き出すように 刺激は 常に外からやってくる 環境を変えれば 心根が変わり 心根を変えれば 行動が変わる 心身合一の原理は いまだに偉大であり 悩ましさも苦しさも 自分の行動で変えられるはず そう…

満たされぬこと

満たされぬこと 可能性に満ちていること 満たされぬこと 渇望の中に足掻き藻掻くこと 満たされぬこと すでに終わった未完の過去 満たされぬこと 届かぬ思いを胸に抱いて寝ること 満たされぬこと 生き永らえて命を持て余すこと 満たされぬこと 何も分からぬま…

旅欲

どこだっていい ここではないどこかへ この街を抜け 知らない人の住む街へ くたびれた炭鉱町 さびれた漁村 山奥の温泉 雨漏りのするアーケード この日本で もう永くはない 失われる風景を求めて 人々の生きた痕跡を探し 傾いた夕陽を眺めながら 一杯の酒を …

匂い 盛る

広がってゆく 目に見えない 鼻腔をくすぐる 花の香 夕映えの歩道橋 鉄路に響く振動 薄暮に染まり 視界は閉じゆく 花の匂いだけが 辺りをつつみ なまめかしい春の なまあたたかさを彩る 遠く 遠く 暮れてゆく日よ はるか昔から 変わらない 花の香とともに

ラーメンの善意

一杯のラーメンを 50年作り続ける 大手チェーンや行列店 旨い店は幾らでもあるだろう だが彼らには 商店街の片隅で 淡々と ただ続ける 偉大さも恐ろしさも 持てはしない 半世紀続くというのは 恐ろしいことなのだ 大波も小波も 次々登場してくる商売敵も 不…

笑いとともに開く

この気違いじみた騒動も 終わりに向かう 街に人が戻り 公園も 居酒屋も 笑い声が溢れる 銭湯の湯船に 若い男が一人 マスクをして 浸っている 初めて見た 気狂いも ここに極まれば 奇行もアートに 潔癖症もユーモアに転ずる あの銀座の路上を 雑巾がけしてい…

好人物に心情なし

適度に我がままで 他者に寛容 決して無理せず 柔らかい物腰でありながら 言いたいことが言える 自然体でいても 人との距離は振れず まるで水平器のごとく 苦もなくバランスを取って生きている 人格者で怒った姿を見たことがない 我慢しているわけでもなく 柳…

コロナ口(ぐち)

今日の感染者は 一桁だった それなのに 緩めるな 外に出るな もう一踏ん張りだ 感染爆発を阻止するため 東京が二週間後のニューヨークだと言って 始まった緊急事態 解除へのハードルは いつの間にか 届かないほど 高くなってしまった あれ あれれ 日本より 1…

はかなき夢

遠い宇宙で ひとりぼっち 眼球の上のごとき 大地に 降り立つ 戻れない 酸素はもうない 残りの命は 30分かそこら さて どうしよう このまま 塵となって消えるだけなのか 30分で メモでも書くか いや 何を書いていいんだか 分からない 何をすればいいんだか 分…

自粛・自縛・自爆ゲーム

まだだ これからが大切 いつになっても この言葉 たった10人の感染者 油断は禁物のリピート 知事はホクホク 毎日テレビに顔が出て 選挙の前の大宣伝 新規感染者10が インフルエンザだったら どうなんだ 結核ですら ここまで騒がない もうメチャクチャ 今日か…

溜り水

傾城の無気力に洗われ 鈍磨極まる精神 鬱屈と倦怠が 脳に巣食い 停滞の粘りに侵され 動けず 今が不快で不快で どうにも堪えられない 蝕まれた精神は 逃げ場なく 血の巡りに乗って 体内を循環し 末端でピリピリと 痛みの信号を発している どうにも つらい 逃…

夜鳴き猫

気だるい夜に 猫が鳴いていた 街灯の明かりが並ぶ ひと気なき夜に ミャオーん ミャオーん 遠く 長く あとを引いて 響いた 星は出ない 暗い方へ 猫は流れていき 鳴き声が 遠ざかってゆく 寝床まで届く その声は たまらなく もの哀しく なつかしく 昔から聴い…

風にのって

丸い なまった あたたかい風は 植えたばかりの 稲を揺らし 皐月の光の中 駆けてゆく 南から 夏が押し寄せ 韜晦の春は 役目を終え 震えは止まり 衣を脱ぎ 汗が流れ出す 手をひろげて 体で浴びた 夏の気配を 憂いなど 馬鹿馬鹿しく ただ射してくる陽線 風を孕…

恨世抄

恵まれない育ちをした 片親だった 虐待された コミュニケーションをとってもらえなかった 金がなかった 学歴がなかった 容姿が醜かった いじめられた 自分を被害者に仕立て上げるのは 実に簡単 立ちどころに材料を探し いくらでも理由をつける 被害者として …

変容鮮歌

成長なる幻想の下 変化は限りなく 10万年前の脳にも IT技術が詰め込まれ 振り落とされないため 置いていかれないために 無我夢中で走り続ける 馬鹿にしたくとも この流れから外れたくとも 船は出てしまった もう降りられない 残る命 枠に収まるか 外れて飛…

普段に戻れ

もう飽き飽きしたろう 人が日々生まれ 死んでゆく その摂理を歪ませる力など コロナには無かった インフルエンザの代わりに 普段の風邪の代わりに コロナが現れ 500人を越える人が死んだ だがコロナが無くとも 同じように人は死んでいたのだ 自ら社会を歪ま…

そろりと緩め

落ち着いてきた世 人々は病に慣れ 先のことを考え始める 動き出す ゆっくりと しなやかに したたかに ようやく 自分のことが考えられそうだ 自分のことだけ 逡巡していられる この世界の 異物という異物が 排斥されず 放置されるだけの 時が帰ってくる ただ…

もう怖いんだ

この国の今には わたしがずっと忌避してきた 苦しさの塊がある 法律に基づかない締めつけ 自粛という名の命令 重箱の隅をつつくメディア 相互監視の社会 自らを厳しく取り締まり 恐怖に支配される データを分析せず 根拠もない 8割削減のスローガン なぜ8…

田舎のコロナ

コロナに罹る者がいて コロナを忌避する人がいて 罹った者には罵詈雑言 忌避する者にも罵詈雑言 県外から来るな 県外ナンバー入店禁止 こんな忌避への罵詈雑言に 怒る者いて罵詈雑言 やれ 自分の判断だから批判するほうが間違っている やれ 自衛のためには当…

非常時の春

この全体主義の空気はどうだ 電車は 誰も乗せずに走っている シャッターを下ろした店 ひと気のない駅 今日もまた 感染者が叩かれている 粛清の対価として 捧げられた生贄 人の心は荒み 歓楽街の嬌声は消え スピーカーが 自粛を連呼している あたたかく 花咲き…