記憶の匂い

思い出せば

記憶とともに

脳裏に香る

 

学生服を来て走った

雨上がりの夏草の匂い

 

北海道の涼やかな風の下

照りつける太陽

なびく若草

 

遠い遠い

祖母の部屋

 

学生アルバイトで通った

浅草の倉庫

 

西の島の

さびれた漁村にぶら下がる干物

 

記憶が匂いを呼び起こし

匂いは郷愁をかき立て

 

郷愁は郷臭として

記憶に刻まれている

 

あの時の

あの頃の

 

匂い

 

現実にはない

頭の中だけで香る

 

匂い