憎悪にまみれた世の中で
政治家の声だけが
響いている
人々は飼い馴らされた犬
主人の顔色を伺って
いつも液晶画面を眺めている
上から滴る情報が
クソの役にも立たないと
分かっていながら
テレビは繰り返し
不安を増幅し
もはや煽られていることにすら
気づかないほどに
非常時の気分を満喫している
善良な小市民の老夫婦
茶の間でテレビを見て
旦那は引きこもり
妻はスーパーと家との往復
それが何ヶ月も続き
その家は血に塗れた
彼らは良心に従い
狂ったのではない
たんに
端に
単に
馬鹿だったのだ