2017-01-01から1ヶ月間の記事一覧

怠惰な夢

日常から離れたいといつも思っている 人生を旅に例えるなら 平坦な道をひたすら歩くより 劇的な風景を追い求めたい たとえ身を危険に晒しても 興奮や熱狂を味わいたい 取り返しがつかない傷を負い 後悔のもとに余生を送るとしても 余力を持って人生を全うし…

生きるための言葉

妥当性や合理性 多様な語彙 複雑な論理 そんな言葉が世の中をまわすとすれば 自分自身が生きるための言葉は それにどれほどの情熱を込められるかに尽きる 頭がいい スマートだ 賢い 理路整然 そんな言葉はもう捨てた 求めるのは生命の発露 喜びと哀しみ 怒り…

都会人の私

自分はかけがえのない一人だけれど かけがえのない一人は60億人いる 人間はありふれていて ベルトコンベアーのように目の前を流れていく その中の一人さえ 私は知らない 無関心と非接触 断絶と孤立 都会の人間は交換可能で それはモノと同じ 気に入らなけれ…

残照

列車の中 もう陽は沈んだ 色を失った風景 空は薄明るい 横たわる雲 腹に当たる夕陽 あかく輝くように 一つだけ浮かんでいる 遠ざかっていく 列車も 残照も すべてが闇に沈む前 色あざやかに浮かぶ雲が せつなさとあこがれを 私に抱かせた

留守

3日出かけます

縁側の猫

子供のころは 今よりいろんなものが街にあった ごみごみした小路 野良犬 浮浪者 やくざ 傷痍軍人 たちンボ 露天商 吹き溜まりのように集まってきて 肩身は狭いながらも 見える所にいた 彼らの存在は許されていて 危なっかしくても 少し怖くても 私たちは世の…

Edge of the Paper

人は紙の中で自由だ そう書いた しかし紙は無限じゃない 宇宙のように大きくない 肉体に限界があるように 紙の数にも限りがあって 私は安心し落胆し 諦観する 限りない浪費よりは 終末を予感しながら 緊張を持って生きるほうが マシなのだろう 地の果てまで…

一つの雲もない 青空だった 地上に立ち並ぶビル ざわめき 子供の喚声 視線を上げるだけで 全て消えてしまった 何もないのが 怖かった 遠くの木 揺さぶられる枝 空にはもっと強い風が吹いているのだろう それが見えないのだ 全てが空で 空しか見えない 空が降…

ペンと紙

白い紙の上に インクの線が走る 絵も文字も自由自在 誰もあなたを止められない 書きたいように書ける 仕事やお金や 友人や家族や 人には多くの制約があって 人生は簡単に自由にならない それでもペンと紙があれば その中で私たちは自由だ 自由だと思って書く…

雪の帰り道

雪が降ると 田舎の村を思い出す シンシンと音がする 空から虫のような雪が降る 絶え間ない雪は 私を家に閉じこめた それでも 雪道をえんえんと歩いて 汗をかいて シンちゃんとタカコと 学校へ行った 帰り道 遊んで帰った しかし 何をして遊んだのか覚えてい…

苦痛好

人は痛みや苦しみに敏感だ 自分が欠損するのを恐れる 小さいことで悩む 欲しいものは 手に入れたらすぐ忘れる 無くしたくないものは 失っていないのに心配ばかり 人は自分を守る それは自分がいつか壊れるのを知っているからなんだ 明日か 来年か 十年先か …

ただ傷のみ

怪我をして 寝たきりの一日を過し 死を想った 仰向けに横たわり 目を閉じる 息を吸うたび 傷が疼く 大気が私に流れ込む 体は重力に沈んでいき 空が遠く高く 広がっていく 傷だけを感じる 何も考えなくていい 一つの痛みが 悩みと苦しみを開放する 最後には痛…

無痛

昨日 道で転んで 魂が抜けた 肋骨骨折 息をすると痛い くしゃみをすると痛い でも悲しくない つらくない 痛いだけ 心が動かない あれれ どうしたんだ もっと悲しめ もっと苦しめ もっと面白がれ 平然とするな 骨が折れたんだ 騒げ オタオタしろ そうしないと…

種をまく

種をまきましょう 十も二十も 百も二百も 種をまきましょう 命が一つでも輝くように 私たちが生きるのは 温室じゃない ふかふかに耕された土も 栄養たっぷりも肥料も 用意されていない ならば野の草花のように 十も二十も 百も二百も 種をまきましょう たく…

人 人 人

人 人 人 人なのです 私を悩ませ喜ばせ 世界に留めおき 世界から排除するのは 人なのです 人のために生き 人のために死ぬことを願い 喜怒哀楽を私にもたらすのは 人なのです 人は言葉でつながって 人は死んでも言葉が残る 言葉は私をもてあそび 何千年も苦し…

何処に生まれる

人は環境でつくられる 能力だって個性だって 活かすも殺すも 生まれた場所と周りの人次第 永山則夫を思い出す 同じ貧しい境遇に生まれても 人を殺さない人はたくさんいると言う だが 永山則夫が違う場所に生まれていたら 永山則夫にはならなかった 裕福な家…

何かする

食べることが好きだ 眠ることが好きだ 食べたいだけ食べられて 眠りたいだけ眠れれば 幸せだ だが そんな暮らしが続くと 物足りなくなる 食べたいものを我慢しても 睡眠時間を削っても 何かしたいと思うようになる 何かしたい 何かしたい でも何をしたらいい…

見上げる

寒い冬が終わり 雪が溶けて 暖かい風が吹き 夏の太陽が降り注ぐように 悩み苦しんだ季節から 精神が開放され 幸せの中に過ごし 熱狂の瞬間に至る 人生はそんなに単純なサイクルじゃない 喜びも悲しみも不平等で 絶望に命を落とす者もあれば 生涯を平穏にまっ…

Tension of expression

幸せのなかで発する言葉は浮かれている 不幸のどん底では言葉すら出せない どんな詩にも張力がある 喜怒哀楽に向き合う魂のエネルギーがある 真摯であればいい 導火線の火花のように 綿に染みる水のように 風に吹かれるタンポポのように どんな方法でも 言葉…

濡れた路面に 遠く街が揺らぐ 窓際でコーヒーを飲みながら 眺める外には行き交う傘 垂直に落ちる水滴 湿度が世界をくゆらせる ガラスの曇りが私と世界を隔て そして包み込む 合羽の女の子は 誰を待っているのか 冷たい水に打たれて ただ立っている姿 私は救…

極星

暗黒の中 一筋の光 寄って行く私 その光に身を焦がそうと 光に狂い 自分を滅ぼすとしても 他に何もないのだ 身を投げるしかない 今をためらっても 時は止まらないのだ 信じろ そして狂え お前の覚悟はお前だけが知っていればいい

哀しい夢

遠く聞こえるチャルメラ 夜も更け 蒲団の中 哀愁が襲う 子供の時 午睡から目覚め 隣に眠る母と 薄明るく差し込む暖色の光線を見て この世が滅亡してしまうのではないか そう思ったことが幾度もあった 夢から醒めた 強烈な寂寥感 この哀しさが人生そのもので…

嫌好

思い通りにならない 願いが叶わない 話したいのに話せない 食べたいのに食べられない 望んでいないのに痛い 逃げたくとも逃げられない 死にたいのに死ねない 生きたいのに生きられない こんなことを考えている人が何億人もいて 生まれて死んで 生まれて死ん…

山篭り

山の中で一人生活していると 人が怖くなる 夜 家の周りを徘徊する獣 落ち葉を踏みしめる音 水を張ったバケツが揺すられる ネズミなのかウサギなのか イノシシなのかサルなのか それとも世に捨てられた人間か 物音が近づき 玄関の引き戸を開けて 家に入って来…