2019-02-01から1ヶ月間の記事一覧

旅の前夜

夜汽車に乗って 旅に出る 夕暮れの街 駅の喧騒 列車は ゆっくり滑り出し 流れる車窓が 私を誘い 明日の土地を 夢見ながら 眠りにつけば 一日は 幸せに暮れゆく そう 明日に期待を持ち 床につくなら 旅の枕も 抜群の寝心地 明日はやってくるのだから あとは夢…

お客様相談室

昨今の サポートデスクだの 相談センターだの 案内も小さく 連絡しても つながらない まるで 相談するのを 諦めて欲しいかのような アクセスの悪さ やっとつながったかと思えば 部署のたらい回し 目的の場所に着くまで 延々と待たされる 着いたら着いたで 事…

命の気配

風ぬるくなり 雪融けて 若い緑が 一斉に吹き出し 大地を覆い 花咲き乱れ 虫飛び交い ツバメの子が育ち 全天に エネルギーが満ちて 春が 押し寄せてくる 繁茂する命が 止め処なく溢れ どこまでも 隙間なく 増えて 大気に 身体に 染み込んでくる季節が 間もなく…

老いの子供っぽさ

子供の頃 何も考えずとも 学校に上がり 中学校 高等学校と進み 嫌々でも 勉強し 知らないことを 覚えて 体は成長し 世界が拡がり 前に進んでいる そんな感覚があった ある歳を超えると 進んでいるのか 停滞しているのか 後退しているのではないか とすら 思…

ぶんたん湯

今日の銭湯は ぶんたん湯 赤ん坊の頭ほどの ぶんたんが プカプカ 湯船に浮かぶ 手に抱え 間近で見れば 無骨なヘタ やわらかくも分厚い肌 湯船の中 目を閉じ ぶんたんの 匂いを嗅ぐ グレープフルーツに似た 苦味と甘い芳香 海辺の斜面に 一面に実った黄色の玉…

乗り越えられない壁

たくさんの 乗り越えられない壁 努力や根性で 何とかなるなら 人は 皆偉人になれる 壁があれば 努力で乗り越えようと する人もいるが すり抜けようとする人 当たって砕ける人 逃げ回って その場をしのごうとする人もいる だけど 絶対に逃げられなくて 乗り越…

奇妙な朝の邂逅

まだ暗い 早朝の散歩 人影少なく 空気澄む 信号を渡る最中 すれ違った男が ワアァッッ!! と脅かしてきた ふえぇえ 変な声を出した私 それっきり 男は去っていった と思いきや 二三分後 同じ男が 追いかけてきて にいさん 一緒にキャバクラ行かない? と言…

AKBの顔

アイドルと言えば 山口百恵や 松田聖子 南沙織が頭に浮かぶ そんなに人間にとって はじめてAKBを見た時 そこら辺にいる 特別でもなんでもない 普通の女の子が 歌を歌っていると思えた おニャン子クラブより 体育会系の 選挙でも集票を目指して 芸能活動をす…

白河の水の清きに

清潔のため 殺菌して 感染を防ぎ 衛生を守る いい話だが 清潔が義務なった途端 窮屈な世間が 眼の前に現れる マスクをして うがい手洗いは義務化 ゴミ一つ落ちてない街 邪魔なものが排除される 心もきれいでなければならないと 犯罪は厳罰化 職場恋愛禁止 不…

水温む朝

厳寒の朝 歯を磨けば 口をゆすぐ水が 歯に沁みる 今日の朝 同じく水を含むと あれ ぬるい 冷たくない 意外な変化に 春を思った 季節は巡り 知らず知らず 我々の 時は進んで 気づけば すでに目の前に迫っている ゆっくりと しかし止まらず 微細な変容の重なり…

言葉の実

きれい事しか言わない人が どこか胡散臭く思えるように 毒ばかり吐いているのも うんざりさせられる ピカピカに光った靴 泥にまみれたサンダル ピカピカだけで 生きるのは疲れるし 泥の中で 暮らせば鬱屈する 灰色の 日常の 中にいて 夢や 希望を 心に描いて…

燃え尽きないで燃えている

長い長い 仕事を終え やり遂げた充実感は 未だ湧かず 代わりに 忙しくなくなって 手持ち無沙汰で ポッカリと穴が空き スカスカの妙な寂しさと 日常への手応えのなさだけが 胸の中を 吹きすさぶ 燃え尽きたのか いや そんなことはない もっと出来たのか いや …

何も考えずに

山のように 仕事を積み上げ だらけて いよいよ 締切が迫る 追い込まれる精神 動き出す身体 走り出したら もう何も 考えられない 眠らず 休まず 一直線に ひたすら進み 削り取られていく 己を感じながら 走ることを止めず どこまでも 駆けて 崩れながら ボロ…

神は細部に

一生懸命つくったものと 適当につくったもの 八割まで 内容は変わらない いい加減に切った 残り野菜を フライパンに放り込み 塩加減は目分量 これでも それなりの味になる 日々の生活は そんなもの ところが 気まぐれのせいか 野菜をきれいに切りそろえ 調味…

春は冬の終わり

寒さが底をつけば 立春 いまだ寒く 背中震わせ 肩縮込めて 歩く道 冷気の中にも 緩みがあり 陽射しは 一日一日と 長く 強くなっている 春は見えずとも 春の到来が 予感できた時 暦は 春と記す 現在より 未来に開けた 季節感 古の人が 心待ちにした 春のあた…

子供のみる世界

絵本を開くと 不可解になる いきなり頭が 爆発したり シャガールみたいに 空を飛んだり 消えて無くなったり 猫が話したり およそ 現実では考えられない どころか 空想であっても 思いつかない世界 台所で 料理をしようと 包丁を探したら 三日かかった こんな…

死者踊らせて

人なくなれば 必ずや モノやヒトの 関わりが残って 誰かが 引き継ぎ 整理し 尻を拭う 大きなものが残れば 人が集まるし 死者の遺産のおこぼれに あずかりたい輩も ひょいと顔出し 様子を伺う 何かあるたび 何かするたび 死者へのヨイショ 太鼓持ち あの世で…

もう戻れない

昔の人が生きてたら 今の世は 極楽みたいと言うだろう 飢えもせず 夜は明るく 夏も冬も快適で 争いもない 住むところはあり 病気になったら 誰でも医者に診てもらえる 生きるのが とても 楽になった 死が う~んと 遠ざけられた そんな世界で 今を生きる我々…

足元に何がある

いつも考えずにいられた 己の存在 不意に現れる 心の落とし穴 自分は何者か 自分には何がある これで良いのか このままで大丈夫か 地位があるから 金があるから そんなものは ただの精神安定剤 一時 気休めの酒 本当に 足元を見つめてみれば 己の体を 支える…

涙を流しながら仕事する

辛い仕事 苦しい仕事 いろいろ あるけれど 仕事自体は 辛くなくても 人生の辛い時に 歯を食いしばって 仕事してきた 友人を失った 家族を失った 不和の中 体を痛めながら 涙を流しても 締切はやってくる 頭が回らず 心沈み 何も出来ないのに 手だけ動かして …

親しき喧嘩

ふとしたことで 口論になり 激昂して 喧嘩する 他人ならば もう絶縁の状況 だけど家族は いがみ合いながら 本気で怒りながらも 断絶までいかない 数日 数ヶ月 場合によっては 数年 相手が死ぬまで 喧嘩が続いたとしても 家族は家族で 他人にはなれず どれだ…

旅情を想う

始まってしまった 旅の道中より 旅は いつでも 出かける前こそ 楽しみが募る これから 足を運ぶ地への 期待と憧れ 美しい心象 それは 現実よりも美しく 現実になってしまった途端 はかなくも 忘却の彼方を飛び去る 行ったことがない 見たことがない ゆえの …

脳裏にささやく声

街をただ歩く 部屋を片付ける 風呂に浸かる 何の気もない 生活の一瞬 ふと声が聞こえる これで良いのか お前は これで良いのかと ああ 良いのか 悪かったのか この生活を 打ち破り 何か どこかへ 打って出る 刹那的に 己を燃やす尽くす 緊張を孕んだ 人生の…

惰性こそ私を支配する

日々の暮らし ほとんどに 新味なし 同じことを 同じように 緊張も不安もなく 悩むことなく 日常を生きて 少しの退屈のため 刺激を欲している 惰性 偉大なる慣性 毎日 考えずにこなす行いが 何につながるか 少しは 漸進するか 停滞を孕み 衰退を呼び込むか 惰…

自分をみじめに置いた時

自分のみじめさに 酔った時 世界中の 誰の役にも立たず 家庭でも 職場でも お荷物で 人の邪魔ばかり わたしの生きる価値なんか どこにもない 居る事自体が 厄介で 居なければ 清々する 一刻も早く 消えてなくなるべきだ そう思い込んで 自分を責める時 冷静…

放蕩者の虚無

飢えていない 着るものにも 住む所にも 困っていない 少しばかり 小遣い銭を稼ぎ あとは ブラブラ 辛い仕事もしなければ 人間関係にも悩まない 昼から 酒を飲み 眠くなったら寝て 起きたいときに起きる 家族は何も言わず ただ惰性で暮らす 苦しいことなんか…

百年経っても冬の風呂

立ち上る湯気と 響く桶の音 雪に埋もれる 湯治場の冬 人が変わり 街が変わり 時代が変わっても 湯だけが こんこんと湧き 湯に浸かる人が また訪れる 凍てつく寒さを 顔に感じ 体は 湯の中で火照る 人の痛みを 葛藤を 洗い流して 数百年 数千年 一人一人は ち…

走らずに進む

これまでの人生を 一生懸命 走ってきた 駆け抜けてきた こんな例えがあるけれど 人は 生き物は 常に走っていられるように 作られていない 走るのは 特別な時 普段は ダラダラ 何かあれば せいぜい歩く程度 何かの危機 必要があって はじめて 人は走り出す 忙…