2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

自助

自助に求められる 強さ しぶとさ しなやかさ コロナなんぞに びくともしない 大繁盛の店 安さ 旨さ こまやかさを感じさせない 気配り それはそれは すごい 人の力 誰にも頼らない プライド 一人で生きていく 意志 助けてもらおうなんて 微塵も思っていない …

うらびれた店

うらぶれた店では 誰もが下を向いている 喋らない 呑まない 食べない 時が止まり 固まった人の姿だけが 席に張り付いている それでも 通わずにはいられない 行き場のない人々の 吹き溜まり ぽつり ぽつりと 人が消え また 迷いついた者が 席につく 入れ替わ…

死支度

人が死ねば ぽっかりと 胸に穴があいて そのぶん 肩が軽くなる 死の連鎖 これまで幾度も 死を聞いて 順繰りに 死が近づく 死に向かう列は 確実に進み 怖れから諦念へ 仕方なく 心は移り変わり 自ら託した 生への夢は ひとつ またひとつと 失われる そこには …

酒場天国

壊れた体で飲む酒は 背徳と自由が 染み渡る どこを見渡しても 一人の金持ちもいない テレビの相撲中継を眺めながら 焼酎を煽る 無愛想な親父 酒焼け顔の野球帽 怠惰と欲望と 持て余した人生 たっぷり浪費して 酒を飲む うまい 時が止まった酒場で 酔いが回る…

夜のバイク

秋めいた夜長 遠くにバイクの走る音 スピーカーの怒号が パトカーのサイレンとともに 近づいてくる 闇に響く 排気音 今日も盛り場では カーチェイス 音だけが 暴力を聞かせて 権力が 追っていく 怒りと 蔑みと からかいの混じった 世を拗ねた若者の時間が こ…

中央分離帯の異物

幹線道路の 中央分離帯は かつて 何もない 空間だった いつしか 砂礫とセメントで 不規則に盛り上げられ 周囲は 金網で覆われた 都会に居場所を求め 受け入れられず 隙間に住む人々は 再び居場所を失った 排除され また排除の憂き目に遭う この街は どこまで…

公園の一杯

公園でビールを啜る 外国から来た人たち ベンチに佇み 一番小さな ポテトチップスの袋を 三人で分けて うなだれたように 缶を持つ 風が舞い上げた 土ぼこりの中 辺境で 楽しむ様子もない 彼らは この一杯に 救われているのだろうか 労働と 金と 束縛と 忍耐…

ネオンの谷間

自然に癒やされぬ人々よ 人は人を呼び 思いは猛り 欲望は肥大する 言葉の海に溺れ 記号という記号の中で 概念にまみれ 実態など 見失ってしまった今 ただ人のぬくもりだけが 絶対の癒やしとして ここにある 怒りも哀しみも 後悔も断念も ひとときの語らいに…

捨て鉢

自暴自棄の快楽は たがを外す開放感 コツコツと 節制を積み重ね 少しずつ 改善してきた現実を 一気に突き崩す どうにでもなれ もうどうでもいい 何という気持ちよさだろう 明日にも 後悔が始まり 長い手間と時間で 作り直さねばならないと言うのに 今は 台無…

酔い言葉

軽妙な言葉が欲しい 軽くて 楽しくて 憂さを晴らせる言葉が欲しい いつまでも 覚えているなんて 良いことはないんだ 不毛なことは忘れないと 引きずられて いつまでも 前に進めない だから 忘れるんだ ドロドロした汚泥と 裏切りと発狂の記憶を 振り切るため…

言葉はつなぐ

言葉はつなぐ 人と人を 言葉はつなぐ 昔と今を 言葉をつなぐ 時空を超えて 悶々とした 瘴気に侵され 気の狂わんばかりの 精神と肉体 辛く 苦しい人生 私の苦しみは 私だけのもの だが 転がっている言葉を 目にしてみなよ 原民喜より 北条民雄より お前は辛い…

荒れ地

荒れ果てた大地で 一人 涙を流す 落ちた水滴は 土に滲んで 消えた 草も生えない 誰もない荒野 涙の意味さえ 失われた 不毛 もう立ち上がる気力もない 人々は 去ってしまった 赤い土地と 朽ちた家 生命の痕跡だけが 軌跡となり 孤独すら 実感できない 言葉な…

現実

現実から離れたいのか 現実を変えたいのか 現実に合わせたいのか いつしか ままならぬ 夢も持てなくなった己への 期待は失われ 現実とは 掴み取るものでなくなった 美しい夢は 叶えるものでなくなり 現実逃避の手段になり そして 現実をやり過ごし 現実の中…

また潰れた

また閉店だ 飲み屋は どこまで潰れるのか 日頃から うまくいってない店じゃなかった 客が来て 飯も旨くて 賑わっていた それが コロナで 閑古鳥 潰れた店は 二度と戻らない なくなった味は 二度と戻らない GO TO なんとかで 回復を狙っても 参加していないと…

惰性の芸

現実に巣食う 技芸より 金と地位を欲しがる芸術家よ 現実と折衝してるんじゃない 現実の中に芸術の道を探っているのじゃない お前らのやっていることは 芸術を見捨てることだ 芸術を金という紙切れに安売りしているだけだ 芸術で飯が食えなければ話にならな…

孤秋の景

花畑にそそぐ陽光より 枯野を吹き渡る風を眺めたい 天は高く 空は蒼く 頬に冷たさを感じて すすきの穂がざわめいてゆく 澄んだ空気と 草木の匂い 遠くに枯葉焼く煙 たなびいて 鼻を焦がす 一面の枯葉は 陽に輝き 黄金へと変わり 紅く染まった木々は 一つまた…

言葉探し

言葉のあやふやさの前で たじろぎ いつしか 使うはずの言葉に 使われ 縛られている どこかから 拾ってきた言葉 自分のものではない言葉を 腹に落ちない 借り物のままに 使い回し ものを言った気になって 省みることもない 知識と情報で着飾って 語彙も表現も…

夏の花献辞

天災 人災 悪意 劣情 光と闇を見た人よ 出来事は ネガのように 無意識に 脳裏にこびり付き 何かの度に 反転現像して浮かんでくる 冷静を奪われ 怒りと興奮にうなされ 歯を食いしばって 記憶を制御しているのに 周りからは 落ち着いて 紅茶一杯を啜っている …

朽ちゆく体

四肢の痺れは いつからか 耳鳴りが高まり 頭が痛い 眠れぬ夜明け前 体のうなりに 来し方を思えば 衰え 壊れゆく 生涯がもの哀しい 何も起こらず 何も起こさず ただ老いだけが 追いかけてくる 思うようにならぬ己に 構わねばならぬ未来 そして 死出の旅路 別…

出かけます

一週間ほど出かけます

うざいの語域

付き合うのが厄介 相手をするのが面倒くさい そんな人は 幾らでもいるが 自分が 相手に邪魔だと見られ ぞんざいに扱われる時ほど 嫌な気分になることはない ましてや 接客業で 金だけ払えば用済み とっとと出ていけと 暗に態度で示されたなら 小銭のやり取り…

夢は戻らない

壊れかけた 人体ひとつ 油切れで ギシギシと 音を立てる 乱れる神経回路 痺れる末端 この体には かつての しなやかさも 躍動も 戻らない 大地を飛び跳ねていた 時は過ぎた 志半ばの夢も 心の片隅で 燻ぶらせていた野心も 指のあひだから こぼれ落ちてしまっ…

病院からの電話

健康診断の翌日 留守電に病院からのメッセージ 至急お伝えしたいことがあります すぐにご連絡ください これだけで もう その日は陰鬱 不安と恐れ 被害妄想の夜 どうなるのか 死に至る道程は 終点が近いのか 限りない憂鬱に 身を浸し この夜の逡巡を 忘れてし…

風景

風が強い島だった 丘には 草がなびいている 明るい新緑が 深まった頃 陽は強くても 風は涼やか 吹かれながら 坂道を踏みしめる 風の鳴る音 葉の擦れる音が さざなみのようにざわめく 登った先には 海が広がる 一本の木の下で 休みながら 海を見ていた 風に吹…

病の影

体は 少しづつ 確実に 蝕まれていく いつまでも 同じではいられない 分かっていても 現実は受け入れられない 四肢のしびれ 圧倒的なだるさ もうすぐ来る 闇の底から 迎えが 逃れられない使者よ 私の役目は 終わったのか 何もなかった 飛ぶことさえ 跳ねるこ…