2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧

心のスケッチ

耐え難き魂の爆発と 積み上げた文章の裏打ちと 文学は 二つを両立させねばならぬ コツコツと努力して 描けるようになるほど 精神は平坦ではない 自分の中に蠢く想いを 何の苦もなく表せるほど 言葉は単純ではない 精神的な格闘と 言葉を操る鍛錬 どちらが欠…

出かけます

出かけます。 10日ほど。

人の紅葉

季節の移り変わりは コンクリートの林にも訪れる エアコンや 様々なテクノロジーで 超克したと思っても 季節は人に差し込み 人を揺らし 人を変える 日の暮れ方に映る 紅の空よ 胸の奥まで響く 寂寥を運ぶ 年の暮れ 葉が色づき 木枯らしが吹けば あとは 忙し…

心で跳べ

心身合一が理想でも 体と心は いつも上手くいくものではない 体は心に引っ張られ 心は体に引きずられる 病や疲労が 心までも萎縮させ ついには ポッキリと意志を折る その前に 壊れる前に 手当てして 体を維持し 心を奮い立たせて 跳べ 気持ちが萎えた時 い…

生活が、帰ってくる

3ヶ月籠った 何も見なかった 何も聞かなかった ようやく戻ってくる 私の生活 心を飛ばして 夢を見て かなたの街へ 飛び立てば 心の炎に 火がついてゆく パッションも ドリームも 対象がなければ 燃やせないもの ここではないどこかへ 夢を探しに 現実を超えて…

ボウイチの街

ボウイチの住む街は 貧しい都会 たむろするホームレス 大きな外国人街 夜にはネズミが動き回り 朝はカラスが餌を漁る ボウイチは 街を歩き回る 百貨店では買い出しの行列 公園では炊き出しの行列 ボウイチは この街が好きだった 金持ちも貧乏人も ヤクザも外…

ボウイチの先生

ボウイチの故郷は 山の奥 小学校と中学校は一緒で 生徒は五十人 先生は五人 雪が降り積もると 誰も街に出られない 先生は気分屋で 冬の間 教室でよく酒を飲んだ 憂さ晴らしに よく子供を叩いていた 雪に閉じ込められ ボウイチは憂鬱だった 先生は遊ぶのが好…

ボウイチの空

ボウイチは 空を見る ボウイチが住んでいるのは ビルの底 蓋がされて 見える空は少しだけ だからボウイチは 高いところへ歩いていく 歩きながら空を見て 空がひらけたら また眺める 薄くあおい空 鈍くて白い雲 ゆっくりとまわる天球 しばし見とれて ボウイチ…

ボウイチの旅

かつて ボウイチは 旅の人であった 休みの度 津々浦々 世界中を 見て回った 名所旧跡はもちろん 人の暮らしや食べる物 路地に遊ぶ子供 安酒場で聞く 土地の言葉 どこに行っても 人は生きていて 悩み 楽しむ姿に ボウイチは 安堵と安楽を見出す 世界が広く 人…

ボウイチの銭湯

ボウイチは 銭湯が好きだ 毎日行く いつも行く風呂屋が休みだと 他の風呂に行く 風呂は熱いほうが好き 水風呂がある銭湯しか行かない 銭湯に行けば 帰りに飲み屋に寄る 組み合わせは 必ず決まっている 同じ時間 同じ場所 同じ風呂 同じ酒 同じ食べ物 ボウイ…

ボウイチの酒

ボウイチはよく酒を飲む どんな酒でも飲む 毎日飲む 何でも飲むから いつもは安い焼酎を飲む 薄く割って ちびりちびり飲む おでんをつつきながら 立ち上る湯気に カツオと昆布の香りを嗅いで まず一口 大根に箸を入れると ピュッと汁がほとばしる 一口食べて…

ボウイチのこと

ボウイチは めんどくがりや 掃除も洗濯もしない 片付けることなんかない いつも寝ている 食べるものが無くなると買う 金が無くなると働く ボウイチは人見知り 人付き合いが下手 なるべく人と会わないように生きている だけど寂しい 寂しくて堪らなくなったら…

旅に飛べば

変化のない 日常の息苦しさ 年の瀬も迫り 今年も暮れゆき 木枯らしに 身を晒す寒々しさが 心までも強張らせる こんな夜は 旅に出る夢を見る 行きたいところ 食べたいもの 会いたい人 なにものにも縛られず 心は身を離れて 世界を駆け巡る 四畳半一間から 雪…

文学ならきれいで快適で成功なんてしない

失敗や困難を乗り越えて 過去を省みず 前だけを向いて 歩いていける人 クヨクヨせず 目の前の問題に取り組み 一つ一つ 片付けていく 成功と賞賛を 手中に収めた人たち その影で 過去を引きずり 捨てられず 過去に憑かれ のしかかられて 重たい体を 過去と共…

変わらない日々

変わらない 退屈と安心 変化への 憧れと不安 食べ物一つとっても 人は安定を好むもの しかし 安定に飽き 新鮮な何かを求めている 変わらない日々でありながら 少しの変化にも敏感で 小さく小さく 顕微鏡を眺めるように 些細な出来事に気を配る この繊細さ ち…

青いトマト

その店では いつも青いトマトが出る 淡く緑がかった 輪郭のはっきりしたトマト 青臭い芳香と シャクシャクの歯触りは リンゴにも似て 酸味と甘味がほとばしる 固さも 若さも 青くなければならぬ トマトは 未熟であっても 青さゆえの魅力を持ち それは 完熟す…

街との距離

缶詰の明けた日 街は涼しかった いつも見る いつも通る いつもどおりのはずが 距離があった 街と自分が離れてしまっていた まだ戻ってきていないのだった 浮遊して 地に足がついていない 違和感がまとわりついたまま 彷徨った 角のお地蔵さんも 煎餅を焼く匂…

名残りの白粉花

日が陰り そわそわする頃に 花開く 濃い桃色の 小さな花が 散り散りに 甘い微香を放ち 夕辺に隠れた白粉花 風呂に入り 一杯飲んで帰れば すっかり暗くなった 夜の中に 白粉花が咲いている 陽射し低く 夕暮れ早まる季節に 夏の暖気を惜しむように 黒い種を抱…

連鎖の常

良いこと 悪いこと 順番に訪れることはない 天災も人災も ちょっとしたミスも 行き違いの不愉快も 悪いことは重なって 続けざまに訪れる ああ 嫌な流れ 灰色の世界から 血が滲む 傷ついた皮膚に 塩が塗られ 疼きは大きくなり 痛みだす 分かっている こんなこ…

続ける

忙しくても 疲れていても 気持ちが切れそうになっても 己に絶望しそうになっても 何も意味が見出だせなくても 諦めないで 続ける もう意味なんかいい 生産的か否かも関係ない 前に進んでいるのか 後ろに下がっているのか 堕ちているのか 怠惰なのか およそ …

熱風呂と水風呂

熱い風呂のなかで 何も考えられない 気を失いかけて 水風呂にたどり着く 冷たさは 感じない 火照りを冷ます 心地よさ オーバーヒートした身体が 回復していく 元に戻る快楽 暑さと寒さを往復する贅沢 やがて体は 熱を奪われ 寒さを身に纏い 水の中に留まる …

凝りほぐせない夜に

魂が凝り固まるほど 視線は窄まり 大事なことを 捉えていると思っていても 実のところ お定まりの 借り物の 誰もが言う教訓を 繰り返すだけ 広く 柔らかく 自由でいられるなら 辺境の 小さな石ころ一つ 道端の雑草一つ 何気ない 日々の生活の一片より 心が感…