ボウイチの故郷は
山の奥
小学校と中学校は一緒で
生徒は五十人
先生は五人
雪が降り積もると
誰も街に出られない
先生は気分屋で
冬の間
教室でよく酒を飲んだ
憂さ晴らしに
よく子供を叩いていた
雪に閉じ込められ
ボウイチは憂鬱だった
先生は遊ぶのが好きだった
春になると山菜を採った
夏には
ボウイチたちを
海に連れて行ってくれた
先生は山奥に赴任する前
海辺の学校にいた
山の子は
初めて海を見た
イカ釣り船に乗せてもらい
ボウイチは
獲れたてのイカを食べた
その味は
今もおぼえている