2021-02-01から1ヶ月間の記事一覧

なぜ書くか

良いものを書きたいのか 己を表現したいのか 読まれたいのか 書き残したいのか 自分を出したいのか 自分を知りたいのか 書きたいのか 書かないのが怖いのか 前へ進んでいるのか 惰性で後退しているのか 楽しいのか 苦しいのか 書いているのか 書かされている…

忘却の才

忘れることが もっとも 楽にしてくれる 忘れることが もっとも 悩みをなくしてくれる ひとつ またひとつ 忘れてゆく 大切なこと 人の顔と名前 忘れて 手放して 楽になっているのに なぜ 周りから 不幸に見られるのだろう 何も覚えていないのは 悲劇なのか わ…

亜沈

沈黙 停滞のうちに 訪れる不運 不条理 理不尽 怒り 哀しみ 憎悪 落ちてきた この厄介な代物 苛まれる敵意 なぜ 不意に やってくるのだ 怒りは 怒りを呼び 不幸の 悪循環に陥る 人生 これもまた人生 分かりきっている そんなこと 今だけだ 絶望でも どん底で…

惰眠

眠りが 妨げる 焦点を 明るい 白色の世界から 色が抜け 目蓋が 落ちてしまう 脱力の快楽に抱かれ 味わううちに いくつも こぼれた 眠く 気だるい頭に なにも残っていない 遠く ぼやけた 浜辺で 寝そべる 周りは消え 風に頬が打たれるのみ 惰眠に溶け 木の葉…

こどくの血

蠱毒の壺から 血が流れる ゆっくりと なめらかに 糸を引いて 血は 地に落ち 丸い血溜まりを 描く 全てが止まった 静謐な世界で 血だけが流れ ここを 赤く染めてゆく それを ただ 見ているだけ 何もせず 何も思わず 血が流れるのを ただ 見ているだけ

酒飲みの詩

酒のために 手足はしびれ きつい吐き気 朦朧な記憶 千鳥足 ぶつかっては 歩き ものを落としていく なぜ 死に迫る愚行を 安全に 死に迫る 危機を自覚せずに 体を壊し 脳を壊し 精神を停め 後悔で満たされる 未来を確信しながら 杯を傾ける 刹那への欲望 自己…

電気流れて

鋼鉄の足 機械の目 心なく 戯れは 塵芥と化す 今の時を捕らえ 光の速度で 駆け回る 不安なく 失望もなし 希望も 期待も 精神はなく 反射あるのみ 便利 効率 電気のセンサーに 見られても 気づかない 道具 ただの道具 使いこなせば 良いだけ いや 都合の良い…

お前はどうなんだ

テレビ画面にも 凄惨は映らない きれいで スマート 本当の社会の姿ではなく 隠蔽に巧妙になった メディアの進化 事あるごとに クレームがつき 当たり障りない 言葉と映像を垂れ流すだけになった メディアの劣化である 文句を言う 角を立てるのが 美徳なので…

動き出し

錆びついた歯車 埃をかぶったハンドル 放置して はや数十年 草むし 廃墟となった 水で流し ブラシでこすり 燃料を入れ 黒煙を吐かせ もがき苦しむような 唸りを上げ ガタピシと 全身のギアが軋む 動け 動け この今が 一番 力が要る 動き始めが 一番つらいんだ

お父さんと猫

お父さんは猫が嫌いだ でも 猫はお父さんが好きだ いびきをかいて 寝ているお父さんの横に ピタッと張りついている お父さんの腹に座り お父さんの股に居座り テレビを見るお父さんに じゃれついている 猫を嫌いだという お父さんもまんざらでもない

天国と地獄のあいだの酒

あの世でも 酒は飲めるらしい 預言者は言った 現世で 飲めるうちに飲むだけじゃない あの世でも 酒は飲める 天国にも 地獄にも 酒はない その中間で 酒は飲める なんておかしな話だろう 現状の延長を あの世にまで望むなんて アル中にしか 思いつかない

気まずい地獄

うらびれた 下を向いた者ばかりの 場末酒場に うるさい爺がやってきて がなり立てる 黙って 酒を啜る者たちに 成功を語るという愚行 話を聞く者はなく 爺は一人ブツブツと愚痴り 酒が回ると 見境なく話しかけては 相手にされない この無言の酒場に 言葉を持…

暇つぶし

40年も経てば 人生は暇つぶしになる 目的と スケジュールをもって 人生を送る者など 1万人に1人もいやしない 仕事のスケジュールに追われるか 趣味のスケジュールで空白を埋めるか どちらも暇つぶし かと言って 残りの半生を賭けて 何事かを成し遂げる気もな…

永久の灯

煌々と燃えている あの山の向こう 人の及ばぬ 魂の通わぬ炎 暴れ 乱れ 多くの人が死に 灼熱の地獄を見た 憧れと夢と 怖れと畏れ バットで カキーンと 打ち飛ばしてやりたい まとわりつく ヌメリと思惑 好きだったろ 絶えぬ代物が 追い求めて来たんだろ 労力…

夜明けの鉄工場

暗黒の空に 焼け爛れたる赤味差して 煙を吐く 機械だけの 鉄に覆われたジャングル パイプと 錆びたパイプと 壊れたパイプしかない 溶かし 叩き 煙吹く不夜城 ひと気なき闇夜に 鳴り響く轟音は 地獄の底の咆哮 変わらずに 朝が来る 朝も夜もない この鉄塊に …

アナクロニズムの回路

破壊衝動に塩をして 睥睨と嘲笑が隠し味 抑えて抑えて 顔をのぞかせる程度の皮肉 斜めに斬れば うっすらと血がにじむ ガタンゴトン ガタンゴトン この列車に乗ったのは いつだろう 正義や成功という 終着駅に向かう路線は 混みすぎていた 各駅停車に乗り換え…

どうせ首を吊るならば

どうせ首を吊るならば 殺してしまえと 猫が言う どうせ首を吊るならば 何をしたって良いだろう どうせ首を吊るならば 殺した後に 首を吊れ どうせ首を吊るならば 法律なんて関係ないさ 自虐韜晦に慣れすぎて 己をいじめて幾年月 心の中のお前は お前のいじめ…

寝起きの惑い

寝起きの しょぼくれた頭には 昨日の酒と 夢の名残りが回る 疲れている もうすぐ 夜が明けるというのに くたびれた わたしの部品 どうしようか

言葉の四季

良いものを書こうと思っていた 気が張っていた 次第に気持ちは萎え 惰性で書いた 書きさえすれば良いと思った 書き続けるのが辛くなった それでも書いた ある時から 辛くなくなった 肩の力が抜けた 今までにない味も出てきた 惰性といい加減のままで 書き続…

世俗者

わがまま 勝手 文句と愚痴 沈黙 不満 反復 怠惰 疲労 過敏 言葉にならぬ 苛つき

つかれ

眠らずに働く 体を動かすと 鈍ってくる 動き 思考 感覚 そのときは動いた だが 飯食って 寝て 起きたら 動けない この不快なしびれと 脱力 どうして動かそうか

たえる

生きている場所で 認められないのは つらいことだ 己の実力不足ならともかく 相手の不正と手抜きによって 自分が不当な評価を得る時 耐えるのは つらいものだ

きれいになる

きれいになった 街には ゴミ一つ落ちていない 清潔で 衛生的なのを 良しとして どんどん排除してきた 排除して 見えなくして 目の届かないところでは 泣いたって分からない きれい きれい きれい 清潔 清潔 清潔 感染抑制 感染予防 どこにも居場所がない

なぜ動く

疲労極まり 俯して 故郷のことなど思いながら 立ち上がり 働く機械へと戻った べとつく汗と 垢にまみれた匂いが 己を人だと思い出させる まだ働くのか いつまで働くのか 体は動くのか この油の切れた機械が 帰りの焼酎のことだけ 考えながら 働いて 動いて …

渚に座る

砂に腰を下ろし 風に春を感じた 浜防風の揺れる 河口に 蟹が行列している いたい こんなところに 居たい 消えてしまいそうな 浜辺の陽だった 霞の先に 波濤が聴こえる

場末の酒場に預言者来たりて

場末の酒場に 預言者来たりて 未来と終末を説く 幾多の預言者が通り過ぎた この酒場 一杯の焼酎と世界を 天秤にかけ 顔を赤らめている 呂律は回らず 反復する 壊れた拡声器 哀しいかな いや 愉快この上ない 俯き 涙を溜め 酒を啜り 鬱屈に耐えかね 当たり散…

人の営み

一年中 同じことばかりして たまに違う出来事があり 何年かに一度 病気や引っ越し なにかのトラブル 何十年かに一度 近い人が死に 最後は自分がいなくなる 同じであって 同じでない だが いつも違うと 新鮮な感性を磨くなら 緊張の連続で 耐えられない ルー…