2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧

人の波

この国に蠢く 人の波が 横断歩道を 渡ってゆく どこへ 何を求めて 大きな物語の終焉を忘れ 再び 動き出す 四季は変わらず 人だけが 変わってゆく もう二度と 戻らない場所などなく 同じことを 繰り返しては 同じように 嘆き 愚かだと 卑下しては いつの間に…

心模様

あんなに殴ってやりたかったのに よく覚えていない あんなに殺したかったのに よく覚えていない 心は 衝動で揺れ動く 心で 人生は支えられているはずなのに 心自体は あやふやだ 中身などなくとも チヤホヤされれば ウキウキするし いわれなき 誹謗中傷 出会…

働く機械

毎年 この時期に 山がある ろくに眠れない数週間 何も考えられず 朝から晩まで仕事をしている 眠く だるく 空腹で ただ 手だけが動いている それは 不快であり 苦しみに違いないのだが 悩ましくはない 目の前に やるべきことがあり それを こなしていく機械…

眠らない街

三丁目の裏通りで 猫がゴミ箱を漁っている もう日は落ちた 道行く人はまばら 曇天で星は見えない こんな夜には くぐもった嬌声が 闇の間から流れてくる 澱み 生臭い瘴気 酒とタバコと よく分からない薬で フラフラになった者どもが ヨダレを垂らしながら 街…

春に霞む

春になると 死にたくなる 春になると 気だるくて 眠くて 億劫で 嫌になって 人が遠くなる 命燃やす春 蛙鳴き 虫は起きて 燕飛び交い 山には雪残る春 暖かく 緩んで 気持ちの 箍は外れ 遠くへ飛んでしまいそうな 野放図な 開放と倦怠の季節 己の身さえ どうで…

地に足を着けろって

地に足を着けろって 言われても どうしていいのか 分からない 地に足を着けろって 言われても どうして 着けなけりゃいけないのか 分からない 現実を見ろ 大人になれ いや そうなれなかったから こうなっているんだ 大人になれれば もっと早くなっていた 少…

春の匂い

ひとしきり 雨の中 佇めば 地からむせかえる 春の匂い 湿った 草木の伸びる 青臭さ 何も思わず ただ伸びるだけの 土臭い 生命の匂い

山の花嫁

山の神社に 花嫁衣装 高い石段を 一歩一歩 ゆっくりと 踏みしめて 晴れやかな 新緑映える 季節の中を 歩いてゆく うつむいた顔 純白の着物 今日は めでたい一生の 晴れを祝って 行列の 後ろを歩き 一員となる

空気の雰囲気

言葉にならない 言葉以前の 人の気持ちの動きが 読めるような 言わなくても分かると 言いたげな これより踏み込んではいけないと 察知させる 暗黙のなどと 明示を避けながら 言葉を用いず 事を済ませようとする 安易さと 後ろめたさを内包し その場の力関係…

古都の鐘

山の端に あかね雲たなびき 野焼きの 香り漂う 田の水面に 若葉映え 蛙鳴く 遠く 寺の鐘が響く 静まりかえった古都 ひと気なき盆地の 春の夕暮れ

人生

地の果てまで行っても 人は生きていて この世は 私の知覚のはるか遠く 宇宙から届く 星の光の彼方よりも 広がっている 孤独 虚無 空白 埋めたい欲求 切実な願い 無理もない だが無理なのだ 無理なのに 願わずにいられない それが つまり 人生

出かけます

一週間ほど出かけます

言葉と魂

訴えたければ 訴えたいほど 言葉は研ぎ澄まされ シンプルに 強く 具体的に 磨かれてゆく 伝えるものが 弱くなれば 高踏的で 観念に沿い 複雑で難解な 言語と戯れたくなる 言葉を用いて 心を発するか 言葉に耽溺し 韜晦へ進むか 言語の 可能性に賭けながら 外…

己の領分

食べる物があり 暮らしが整って はじめて患う病と 暮らしが整わないために 患う病 生活が充実すればするほど 病んだ心は 現実から離れ 苦しみは 快楽と紙一重に近づく 人は暇では居られない 暇であるために 苦痛に陥り 暇を潰すために 苦しみの渦中に飛び込…

明日やること

忙しくて やることが多すぎて 毎日がしんどくて 投げ出してしまいたいのに 実際 投げ出してみれば 生気を失う せいぜい 一つか二つでも やるべきことを持ち 気長に構え 適当にやる それが積み重なることで 身になる何かなら 心は動いてゆくだろう 明日やるこ…

差別の向こうへ

聞くだけで 嫌になってくる 差別を訴え 特権化している者も 個の苦しみを 差別へ一般化し 差別自体を 平板にしてしまう者も 見下され 忌避され 嫌悪されることを 差別と取り違えるのみならず 取り違えようとしている者共 差別されたと言えば 相手を攻撃でき…

解体と解放

人が生まれながらに 人だった時は過ぎ去り 今 人は人になるために 努力をしなければならない 努力をしても 人になれないかもしれない それは 生まれながらに 奴隷や穢多非人として 見下され こき使われた存在とは 似て非なるもので 自由や平等の下に生まれ …

片隅の魂

身動きできない 縛り付けられた今 くぐもっている生命が そこかしこに 漂い 流れ出し 生気を失って 屯している ふわふわと 緊縛されて 文句も言わず そこに居て 崩壊の淵に 立っていることも 分からずに 次々と 飛び降りていく それでもなお 分からずに 明日…

アスリートなら

アスリートなら オリンピックに出たいだろう アスリートなら 大会に出たいだろう 物言わぬ アスリート達 指示に従順で 真面目で健康で扱いやすい やりたいも やりたくないも 意見など言わず 被害者のようで 実際は 周りが祀り上げている やりたいなら やって…

愚行に

やくざになってやろうと思い立ち ハイボールを買い 公園で座り飲み タバコを吹かす 爺さんに タバコはダメだよと たしなめられ 雨に降られて 不良の真似事は 十分も続かない すさんでいて すさみたくて 凄惨に 精神を切り刻まれたくて 単独愚行者となり 過ち…

断念

心を断つ毎に 死んでゆく 少しづつ生まれ 少しづつ死に くりかえし くりかえし 生まれなくなり 死んでゆき 死ぬものが無くなれば 命も無い 断念する毎 死は近く 上を向いていた 首の角度は下がり 精気は失せ 停滞に陥る 言葉に力はなく 抜け出せもせず 空腹…