2017-08-01から1ヶ月間の記事一覧

過去苦

過去の記憶は 不意に訪れて 精神をかき乱す 突然の襲来にオタオタし 記憶の壁紙が一気に張り替えられ 気がつくと 沈鬱な気分の中 一人揺られる この理不尽さ 思い通りにならない自分の心 沈鬱なのに イライラする それが馬鹿らしく 滑稽になってきて 気持ち…

夏の夜の徘徊

暑さを避け 喧騒を避け 深夜 歩き出す 酔っぱらい 野良猫 途切れることのない 街道の車 住宅地の静けさに ただ一人歩く やがて夜も果て 白みつつある空を眺めながら 坂道をトボトボと登ってゆくと 自分だけが 世界の胎動と対峙しているような 孤独と 爽快とに…

汚名挽回

世に多くある誤字誤用 使うのは恥ずかしいが 汚名挽回 目にした時は面白かった 自ら進んで 泥をかぶりに行く積極さ なんとしても 汚名を求める 誤った方向性 何をして良いのか分からず もがいた挙句 敢えて自分を突き落とす逆説 自滅的な熱情 エネルギーが有…

茶の香り

日本茶でも 烏龍茶でも 紅茶でも 回転寿司の粉茶でも 熱いお茶から立ち昇る湯気 湿気と香気が顔を伝い 香りを吸い込むと 食後を埋める 穏やかな余裕が訪れ 時の流れがゆるやかになり 少しだけ ほんの少しだけ ほっとして 心ほぐれる

ナポリタン

日本の喫茶店の定番で ナポリにはない ナポリタン 茹で上げた柔らかい麺に 玉ねぎとピーマンとソーセージを ケチャップで炒める 偽物か アルデンテだの ボロネーゼだの ジェノベーゼだの 本物志向に振り回され いろいろと食べ そして思うのは ナポリタンはナ…

都会の眩しさ

田舎に行って 戻って見る都会は 人が溢れ ネオンが瞬いている 喧騒の中で モノも欲望も 何もかもが手に入りそうな 熱気と 地の果てまで続く ビルディング その影 眩い光に隠れる闇 うらびれた街角が 目に入るまでの束の間 電球に群がる羽虫のように 身の危険…

出かけます

四五日出かけます

夜の寂寥

真夜中に起きる わけの分からない 寂寥感に襲われる なぜだろう 様々な寂しさ 孤独 別離 失意 生々しい現実は 人の心を揺らすけど かなしい夢から覚めたときの寂しさは すぅ~っと滑り込んで 私の心を一色に埋める 素直で純粋で だからこそ強烈な寂しさ その…

平和なオヤジ

久しぶりに会う親 まめまめしく働く母 だらける親父 仰向けに寝転んで 腹を出して グーグー寝ている こんなに小さかったかな ネコが寝ているようで ブサイクでちょっとかわいい 無害で 平和な存在は 気持ちを穏やかにする

母のポテトサラダ

どんなに歳をとっても 母親の作るポテトサラダが好きだ たまに実家に帰ると 口一杯に頬張って 喉に詰まって 死にそうになる

何もしない

朝から晩まで 紙の上にペンを走らせ チェックを重ねる 他人の文章を校正するとき 頭の中は空っぽ 目を皿にして 間違い探し 機械のように 無言で 紙をめくる 考え事はできないし 音楽も聞けない ただ目だけが 上下運動を繰り返す 夜になり 仕事を切り上げる …

雨事雨情

水が天から降ってくる 曇天のなか 糸を引いて 落ちてくる シャワーを発明した人は 雨降りを 脳裏に浮かべたろう 生き物に欠かせない 命の水が 降り注ぐ 水滴の美しさ 雨音の安らぎ 暴雨の激しさ 霧中の幻想 浮遊する雲 ただの水が 千変万化し 我々を取り巻く…

タコのつく手

職人の手 分厚い皮膚 固く盛り上がったタコ 長い年月 反復そして反復 疲れにも痛みにも耐え 一つ同じことを続ける 何を生んだとしても その手に刻まれた跡は 一朝一夕では手に入らない 金で簡単に買えない その手はもう疲れ果て 仕事から解放された 年を取っ…

夏の屋台

淀む川の腐臭 夏のダルさ 人混みの汗 足元の蟻 垂れて落ちる水飴 白熱電球の橙色 群れる羽虫 酸欠の金魚 ソースせんべいの匂い リンゴ飴の光沢 綿菓子の浮遊感 子供の頃 目も眩むほど 楽しかった祭りの屋台 大人になっても 心は浮かれる ただし 大人は騒がな…

アナログ的複製反復

コピーしてコピーしてコピーして 複写を重ねた文字は 荒いドットに過ぎず 原形を認めない 細胞の複製 複製の反復 すなわち 複製の誤差の肥大 日常に まったく同じ日など無く ルーティンに 完全無欠な反復などない それがアナログということ 1と0で作られる…

目覚め

眠りから覚める 最初 意識が戻る 少し間があって 目を開ける もう一度 目を閉じる 四肢に力が入らない 気だるい 蒲団の中の逡巡 ここはどこか 夜は明けたのか 何曜日か ゆっくりと 昼間の世界を取り戻す 睡眠から覚醒への 緩慢なる転生 何度も何度も何度も …

赤と白のワイン

グツグツと煮沸するオリーブ油に ニンニクと砂肝と大量のキノコ サラダはトマトとレタス ニンジンとキュウリのスティック バケット 赤と白のワイン 余った油で翌日はペペロンチーノ バケット 赤と白のワイン 翌々日はブイヤベース 固くなったバケットを放り…

日本の夏休み

広島 長崎 そして終戦記念日 日本の夏は 戦争を喚起する それも敗戦を 追悼の行事 黙祷 時が止まる甲子園 日本に生まれ育てば 見慣れた風物詩 旧盆の最中 8月15日は 現世に戻る先祖たちと 戦争の犠牲者を重ね合わせる 迎え火と送り火 原爆と玉音放送 蚊取り…

夢の中の邂逅

中学校の同級生 なぜ夢に出てきたのか 同じクラスでも 言葉を交わしたのは数度だけ 好きでもなければ 嫌いでもない そいつが 行きつけの 飲み屋で待ってるって 夢の中で言う なぜ 彼が 夢に出るのだろう 私の無意識は なぜ彼を 召喚したか 而して 思い出せば…

コーヒーの苦味が旨いと思う頃

コーヒーの苦味が 旨いと思うようになる頃 新しい体験が 絶え間なく押し寄せ 私は 大人になっていった 世界は刺激に満ち 濃密で果てのない 広がりは 夢を抱かせ 未知とは 期待であった それから 幾星霜 コーヒーにも 酒の味にも倦み 世界が怖くなったとき 過…

表層言語は後にして

いったい どれほど 言語によって 物事をごまかしてきたか 言葉に だまされ 言いくるめられてきたか わけの分からない 抽象画 現代音楽 自分には 心が動かない 多くのものを 説明を読み 理由を聞いて 感心した気になってきた 作品ではなく 解釈する言葉によっ…

蝉の生き方

何年も土の下にいて 地上に出るのは一週間 あんなに小さな体で 地下の鬱憤を晴らすように 鳴いて鳴いて 一週間で命が尽きるほどの 絶叫 蝉たちの選んだ生き方に 文句などないが 必死で壮絶で 自分には出来ないよ

As you like

クヨクヨするなって 前向きに生きろって 愚痴は聞きたくないって そりゃそうだ もっともだ 同感だ 恨み節より 良い話 悲報より 朗報を待ってるよ だけどね 無理しなくていいよ 前向きじゃなきゃいけないわけじゃないよ きれいな言葉じゃなくてもいいよ 自然…

半グレの日

今日一日 何をしたかと 自問して 何か答えが見つかればいい 何もしない一日 肯定する材料もなし 無駄だったのか おそらく無駄ではないのだろう 無為の一日があるために 他の日々が輝けるのだし 無意味かどうかは 後になって分かること そう考えれば 無駄な時…

磨かれたもの

古びたバーのカウンター 角は取れ 黒く光り コップを置く場所は 凹んでいる 磨くとは 時間と手間の作業 神社の石段も 撫で回された仏像も 長く長く 人に触れ 少しづつ すり減る 途方もない時と おだやかで絶え間ない接触は 丸みを与え 安堵をもたらす 一朝一…

表現は夢の営み

脈絡の読めない物語 鮮烈な瞬間 意味は分からずとも 実感だけは残る 夢は 現実を素材に 現実を編集し 現実をこえてゆく 詩も 絵画も 音楽も 目指す処は同じ 現実に生きながら 現実を超克する 斬新で 濃密で 衝撃的な 精神を解放する刺激 現実に寄り添う必要…

暴風雨

一面の草むら 遠くに海 曇天の中 ゆっくり歩いて行く 風は強まり ちらつく雨 ビニール傘が煽られ 骨が裏返る 草原の向こう 草をなぎ倒しながら 風は吹いてくる 雨は横から頬を打つ 傘は壊れ ビニールは破け バタバタはためく 逃げる場所なく 棒立ちで 雨風に…

波女

笑い 嘆き 話す 一つ一つの表情を 積み重ねて 線を刻む 皺のよった顔 波打つ顔 陽に照らされ 分厚くなった皮膚が 微笑みかける 時間と人生が 凝縮された皺 それが美しい