コーヒーの苦味が旨いと思う頃

コーヒーの苦味が
旨いと思うようになる頃

新しい体験が
絶え間なく押し寄せ
私は
大人になっていった

世界は刺激に満ち
濃密で果てのない
広がりは
夢を抱かせ

未知とは
期待であった

それから
幾星霜

コーヒーにも
酒の味にも倦み

世界が怖くなったとき
過去を振り返れば

無邪気で懐かしい
怖いもの知らずの時代がよみがえり

そこに寄りかかる恐れと
拠り所にしたい願望と

二つ抱いて
またブラックコーヒーを飲む