2020-11-01から1ヶ月間の記事一覧

出かけます

出かけます 一週間と少し

旅へ

枯れ落ちた余生に ひと時の潤い 旅へ 何を求めるでもなく 希望など抱かずに 飽いた人生の 隙間に 体と心によどむ 空気を入れ替えて また 生きられるかもしれないから 逃げ出してみよう

透明な闇

いつ どこにいても 追いかけてくる 不安とも 恐怖とも 形容しがたい 黒い影 逃げた どこまでも 振り切りたくて 逃げ続けた 前を向き 空を見上げ 命の躍動を 明るい世界の光に向かって 走り続けた それでも 影は 気がつけば 頭の隅に あるのだった いつしか …

たどり着いた平穏

幾度の辛苦を 乗り越えて 息も絶え絶えで ここに至る 目の前の 平穏な水面 波も風もなく 時は止まっている 恐ろしい静寂と 過ぎ去った苦難が 不安を呼び起こす これでいいのか もう何もしなくて 良いのか 安寧に戸惑い 心の依りどころが わからない 奇妙な穏…

うらびれ酒場

うらぶれた街の隅では 今日も 酒飲みが蠢いている ボロボロの体に 流し込むアルコール 精神は 麻痺することで 救われる 立派な身分 稼げる仕事 きれいな家に 健康な家族 何一つ 持てない人が ここでは主役 世間体など あるわけがない 世の中の あらゆる価値…

動く体の悲鳴

師走の忙しさを誤魔化すため ひと月前に 酷使する無慈悲な組織よ 人が生きるための糧を 人が死なない限度の労働と交換する 生きる意味は どこにあるのだろう 耐え難きを耐え 忍び難きを忍び 体が動く限り 休ませず ボロ雑巾のように 使い潰す こんな世の中に…

遠い夢

もう流れた いまは動けない 力が抜けてゆく 魂は遥か彼方 何もない 力も 精神も 空っぽ 堕ちる寸前の 意識の中 あの景色が 風そよぐ 草地に 青空が 果てまで広がる いつか見た夢 届かない夢 夢を見て 時を潰す もう眠りにつくから

言葉のパワーゲーム

軽口をたたき 突然とがめられ 押し黙る 何度繰り返したか 言葉の遊び 軽やかさは 許容精神なくして 認められない 遊びたいから 遊ぶはずが 相手の心を 窺うために 言葉を弄す 挑発とからかいの背後にある 人間同士のパワーゲーム 巻き込まれた言葉は ただの…

ゴミ溜め人

レジ袋が有料となり 気兼ねなく 使っていたはずが 価値をもった 2円3円の袋を 大事そうに溜め込み 山のようになっても まだやめない 価値ある財産のように 取って置いても いまやゴミの山 身動きすら取れず 邪魔になるばかり だが使わない もったいなくて 使…

オカルトフレンド

ああなぜ 変な人ばかり 近寄ってくるのだろう 健康の話が オーガニックの話題となり 心の健康へ転ずれば すぐに スピリチュアルの話 イエスもモーゼも ブッダも日本に来ていたなんて どうやって 信じればいいのか 偏見に囚われない オープンマインドで 物事…

テクノロジーに巻かれて

テクノロジーを 使いこなすため どれほどの労力を 費したことだろう 登録のトライアンドエラー 繰り返すチェック 何度も何度も 見返し 同じ行為に至るも 変わらず 膨大な時間と 敗北感 どうせ どこかに見落としがあるのだろう だが 見つけられない 分からな…

湖面の糸

動力を失った 孤舟ひとつ 流れてゆく 水の鏡面に 糸を引き 音一つなく 変わらぬ速度で 時が止まった 風景の中を ただ ゆっくりと このまま いつまでも どこかへ 消えてしまうまで

沈固

眠く だるく 肌は萎れ 目は萎み 頭の中に 疲労が詰まっている 何も考えられず 何も思えず くたびれた人形として うなだれ 固まっている 命はどこにあるのか 私はどこにいるのか だがやるしかない 生きるしかない 屍でないかぎり 前を向き 目を見開き 意思が…

瞼の裏

明るい青に 沈んだ赤 脳の奥から まぶたの裏に 浮かび上がり 電気のごとく走り 消えゆく 子供の頃から ずっと身近にあり いまも 正体がわからない 分からないままに 飼いつづけ 不安も 心配もなくなったが 疑問は そのまま残り 折りに触れ 頭をもたげる 死ぬ…

最後の匂い

人に ガンを告げられる いつも 何ということもなく 挨拶を交わし 世間話をする それだけの関係が もしかしたら 終わるかもしれない ニコニコと あっけらかんと 手術を告げられ さりとて 笑顔でいることも 気が引けて どんな顔をしてよいか 分からなかった ど…

フィルムの前で

ドーランを塗りたくった顔 照明に光る カメラの前の笑顔は 能面に似て いつ どこでも 同じ視線が 世界中へ放たれる 浮かび上がったセット きらめく虚栄の城 作り物しかない場所で つくられる心 花も嵐も 涙も笑いも 自由自在 そんな虚像を生み続ける 工場の…

私の景色

眠く 虚ろな眼に映る 海 波打つ浜辺 揺れる浜防風 夏の北の海 風そよぎ まどろみの中へ いざなう こんなところで死ねたら 微風と海潮 おだやかに 頬を撫で 横たえた体を 包んでくれる ただ一人 浜辺の風よ 波の音よ 脳裏に浮かぶ 私の景色よ

人の伸皮

銭湯の湯船に使っていたら 向こうから 男が チンコの皮を 引っ張りながら 歩いてきた 皮は トロンボーンのように 長く 伸び縮みした あんなに 長い皮を見たのは初めて チンコの皮を引っ張りながら 歩く人を見たのも初めて 驚き 感激した 人生には 新たな発見…

歯の無い男

あいつは いつも 飲み屋の片隅で 焼酎を飲んでいた 一品のつまみと 三合の焼酎 ちびちびと つまんでは呷り 呷る度に 顔が赤く 最後には どす黒くなる 赤黒くなるほどに饒舌 ニカっと笑った口の中には 歯は一本も生えてない こうして飲むため 何を失ってきた…

いつかの告解

甘い 美味しい香りに 誘われて 好き放題した やりたいように 欲望の赴くままに 酒池肉林も 博打も 何もかも そして 残ったのは 借金と病気 楽観と諦観 失望への納得 これだけ 遊んだのだ これだけ やりたいように 生きたのだ いいよ ダメでも 刺激と興奮が欲…

ビルの上から

今日の空は高い 人は小さい 眼差しが登れば登るほど 街は小さく ミニチュアのように ゴミクズのように チマチマして よく分からない 車もちっぽけなら 歩く人は ダニやシラミにも似て あいつら 一人一人に 大切な人生があるなんて 考えだしたら いたたまれな…

無意味からの逃避

姿なきものを生み 意味なきものに 意味を見出す 森羅万象を 人の生き様に落とし込み ただ過ぎていく現実に さぞ深淵を覗いているかのような 心へのアプローチを試みる 言葉の錬金術よ はじめに意味があったのではない 意味を生み 意味を問い 意味に価値を置…

金玉のいない風呂

たぬきの焼物の如き どす黒く 垂れ下がった でかい金玉の男 いつも銭湯で ぶら下がり健康器を使い 背筋と金玉を伸ばしていた いつからか 金玉は来なくなった 金玉 金玉よう お前の身に 何かあったのか 誰かと喧嘩したのか 体を悪くしたのか 金玉が来なくて寂…

不幸種

不幸のために 気が狂った 度重なる 幾度も襲う厄災に 精神が崩壊した 何度も 何度も 執拗に 終わることなく 不幸は訪れ 私の魂を 搾取してゆく 逃げようが 隠れようが 私は削り取られ 生命活動が 生めば生むだけ 奪われ 壊され 台無しにされてゆく この特権…

風寒く

風の中に 冷たさが混じる 鼻の奥まで通る 冬の足音 いつの間にか 季節は変わっていた 人の服も厚手 開放感も消えた 精神は 徐々に内に籠り 寒さに身を固め 家から出ることも減り 陽光は柔らかく 肌を焼く刺激は薄れ 慈愛に満ちた 温かみをもたらす やり残し…