2020-11-10 フィルムの前で #詩 詩 ドーランを塗りたくった顔 照明に光る カメラの前の笑顔は 能面に似て いつ どこでも 同じ視線が 世界中へ放たれる 浮かび上がったセット きらめく虚栄の城 作り物しかない場所で つくられる心 花も嵐も 涙も笑いも 自由自在 そんな虚像を生み続ける 工場の吹き溜まりには 今日も 夢見て 夢に敗れる 幾多の若者の 血と汗と 期待と不安 欲望と絶望とが 蠢いて フィルムに吸い取られてゆく