フィルムの前で

ドーランを塗りたくった顔

照明に光る

 

カメラの前の笑顔は

能面に似て

 

いつ

どこでも

同じ視線が

世界中へ放たれる

 

浮かび上がったセット

きらめく虚栄の城

 

作り物しかない場所で

つくられる心

 

花も嵐も

涙も笑いも

自由自在

 

そんな虚像を生み続ける

工場の吹き溜まりには

 

今日も

夢見て

夢に敗れる

幾多の若者の

 

血と汗と

期待と不安

欲望と絶望とが

蠢いて

 

フィルムに吸い取られてゆく