最後の匂い

人に

ガンを告げられる

 

いつも

何ということもなく

 

挨拶を交わし

世間話をする

 

それだけの関係が

もしかしたら

終わるかもしれない

 

ニコニコと

あっけらかんと

手術を告げられ

 

さりとて

笑顔でいることも

気が引けて

 

どんな顔をしてよいか

分からなかった

 

どうせ

薄笑いを浮べていたのだろう

 

あと数日すれば

会うこともなくなり

 

戻ってくるか

戻ってこないか

 

それだけの話になる

 

今日会ったのが

最後だったかもしれない

 

二度と会わなくても

何ということはない

 

絶対的な別れの

可能性の

 

あまりの

唐突さに

 

戸惑ったのだ