2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

花見桜の陰に

墓場に桜 よく似合う いまだ寒さ残り 墓地に吹く風は 曇天の中 卒塔婆を鳴らす 灰色の空 浮かぶ薄い桜 不機嫌な春の 気まぐれ 橋を渡れば ホテル街 いかがわしいネオンは いつでも満開に咲く 場末の酒場 一杯の酒 ただそれだけで 一時間 二時間 粘るアル中を…

人の世の

たくさん 山ほどの 人がいて それぞれに 人生があり 喜びがあり 悩みがある わたしにとって 一番大切な わたしと同じように 人には皆 何よりも大切な わたしがあり 網の目のような つながりの中 それぞれが 引っ張り合ったり 近づいたり 切れたり 結ばれたり…

やまとごころ

日本の食べ物が美味しい 日本の文化が素敵 日本って素晴らしい 日本人で良かった こういう思い 自分にあるのは事実 だけどそれは 他の国の良さを あまり知らないため 言葉も文化も食べ物も 生まれ育った土地に根ざして わたしという 人間が出来たのだから 馴…

足裏の眼

タコなのか 魚の目なのか 左足親指の 付け根にできた塊 どんどん 大きくなってくる 風呂上がりには 周りが丸く白っぽく フヤけ 真ん中に 穴が空いた クレーターになり 何かの眼のように こちらを見つめる こいつが だんだん大きくなって いつか わたしより大…

不安の春

暑くなったり 寒くなったり 陽射しが強いのに 冷え込んだり 朝陽が早く昇って 夜は短く 花粉が舞って 鼻がつまり なかなか よく眠れない 冷えた大地が 動き出して 風が強まり 嵐を呼び 動転する気候に 体がついてゆけず どこかダルくて 頭がぼうっとして 理…

外へ歩く

歩くこと 人を見ること 人に会うこと 人と話すこと 世界へ繋がる 唯一の道 食を通して 多くの土地を 歩いたり 文字によって 古の人と 話すのも 全ては 変奏に過ぎない 歩いて 見て 触れて 感じる どんな小さな街だって 喜怒哀楽が渦巻くように どんなにささ…

甲子園を見る度に

高校野球のテレビ中継 甲子園のバックネット 少年野球のチーム観戦 かつては 奪い合いの座席 ゲートに泊まる人達が 同じ席を専有し 多くの批判もあったろう その成れの果て 座席の子どもたちは 観戦する試合も 座る座席も 選べない ただ黙って 何人かは下を…

愛すべき老父たち

休日の午後 銭湯に集う老人 着ている服も 動く体も ヨレヨレ 力なく 身を震わせ メリヤスの襦袢を 気の遠くなるほど ゆっくり 脱いでゆく 不格好で 不器用 そのくせ 口は達者 大きな夢など語るには もう恥ずかしい 歳を取りすぎている自覚と 未だ捨てきれぬ…

郷愁の後に

人の手にまみれ 古ぼけて煤け 手垢にまみれた品々 黒光りする手すり すり減った階段 皺々の鞄 今にも切れそうな革紐 大事に使われて 摩耗して 角が取れ 鈍い光を放つ 古く 懐かしい 記憶を抱え 甘味も 苦味も ともに味わって くたびれきった ものたち 便利だ…

うらびれた飯屋

煤けた看板に 古い革張りの椅子 整然と並ぶ 一人客が ぽつりぽつり 黙って瓶ビールを取り 席に着く 新聞を広げ コップに注いで ちびちび 口に含む テレビから流れる 大相撲中継 アナウンサーの声だけが 空間を満たし 座る人の沈黙が なお重く 染み入る オム…

そろそろ回転は終わる

足枷の過去と 未来への期待を 繰り返し 語り続け 何も変わらず 堂々めぐり いつも 見ている風景は同じ 乗ったと思った電車は くるくる回る メリーゴーランド おもちゃの木馬の上で 冒険をしている ドン・キホーテ あまりにも反復し 見ている景色が 変わらな…

飲み屋のやくざ

いつもの居酒屋に たまに来る やくざの親父 毎回 違う女性を連れて 飲み歩く 歳は50すぎ 顔は良くない それでも モテる このやくざ 粗暴で 強面で 世間から 冷たい視線を浴び 悪者として 排除される 良いとこなんか 一つもない だけど 人の魅力とは 法律やル…

不安の種

向上の為の自己否定と 足元を見据える自己認識 自分を信じては たえず 新しい自分に塗り替え 失敗すれば 後退し 成功すれば 自分はますます 変わってゆく 変転の最中 好転への期待があればこそ 自分は変われる 挑戦できる 何もない 何も分からない 不安に身…

黒の衝動

ああ 今日もまた どす黒い心が 私を覆って 蝕んでくる あられもない衝動が 怨恨を 嫉妬を 破壊の欲望を伴って 脳髄を駆け巡り 体中を張り巡り 筋肉を震わせる 嫌いな私の 嫌いな過去 人を恨むとき わたしはわたしを嫌いになり 同時に 膨張した暴力への誘いは…

迷道

情熱に燃えては 内省し 正義を謳っては 嫌気が差し この道が正しい 我を立たせよ そう信じて入り込んだ己は 愚か者ではないかと 無知蒙昧の迷宮を彷徨い 懐疑を重ねて 自信を失い 小さく 怯えて 震えている 馬鹿になれと 奮い立っては 馬鹿になれず 行動ある…

オリジナルとか模倣とか

描きたくて 描くはずで いつだって カンバスは真っ白なのに 描き始めると 誰のマネだの模倣だの 自分らしくだの 独創性だの 頭の中が グルグル回り 理屈をこね回し 直感よりも論理 衝動よりも理性 描きたくて描くのより 描いた言い訳を探して 作品を塗り込め…

納税の鉛

確定申告 長蛇の列 納税など 面倒な手間 ただ並ぶ 無機質に 言うなりになって 文字を打って 待って 並んで また並ぶ 人の列は 沈黙し 個性を剥奪された のっぺらぼう こんな場所に 自分らしさなど 求める意味はなく 社会勉強の一つだったのも 最初の数年 何…

意志はどこにあるか

生まれた場所や 両親 これまで会ってきた人 関わりを持ったもの 自分で選んだというより 偶然の巡り合わせ 意志など 介在していない 好きな食べ物 好みの曲 自分だけの趣味 選んでいるのは わたしだが 私の意志を 作ったのは わたしだっただろうか 自分で選…

空を描く

春夏秋冬 それぞれに 頭に浮かぶ 空の雲 春の空は 陽が強く 霞かかって 雲低く 荒れる春の夜 早い雲 風も温まり 桜咲き 少しの荒天 花吹雪 川の上には 花筏 まだ見ぬ日でも 心には きれいな空と 雲浮かび ホントの空より 気持ちよく きれいに描く 空想を 胸…

すれ違い

約束を反故にされ 待ち合わせても 人は来ない 銭湯は一杯で 芋洗い 初めて入った 居酒屋で食あたり 噛み合わない うまくいかない めぐり合わせの 良くない日 人生に何日か 必ず訪れる 不運を身にまとう 一日 こんな程度で良かった 修復不能な傷や 長引く悩み…

あいりん地区にて

人々が蠢き 目的もなく 徘徊する 炊き出しの行列 もらったおにぎりと味噌汁 食べながら 再び行列の最後部へ 並ぶ 繰り返し 腹が満ちれば 道にたむろい あてもなく 時を過ごす 肩書きも 意味もない 命だけの存在が そこにあって 生きる目的もない 意志も意欲…

旅の眠り

旅に出て 歩いて 歩いて 歩いて 疲れ果て 泥のように眠る 心地よさ 見知らぬ土地の 緊張と興奮にも慣れ 日常の心労から 解放され 何も考えず 赤子のように 眼の前の全てを受け入れ 心安く 体だけが疲れている 眠りは深く 起きれば 弛緩した全身が 血の巡りよ…

港の夜更け

うらびれた港町 岸壁の宿 深夜 縁側に佇めば 打ち寄せる 波の音 暗闇に浮かぶ 星の光 なお深く 夜は更けて 時の流れは ついに止まり 意識は 闇の中に 溶けてゆく どこまでも 惰性に いつまでも 考えず 感じず 動かず ぼうっと 過ぎてゆくだけ 苦痛のない 実…

でかけます

一週間出かけます