2019-01-01から1ヶ月間の記事一覧

寒さと追憶

冬の夜 寒風に吹かれながら 家路を急ぐ その時 思いだす 北国で育った 子供の頃 肌を刺す 冷たさ 霜焼けに 赤いほっぺた 一面の雪 月明かりに浮かぶ 白い世界 人はみな早足で 影だけが追いかけてくる くぐもった訛りは 雪に吸われ 静かで なにもない田舎を …

ネットワークの凝り

世界中が 回線でつながり 信号のやりとりで 音も画も 動く絵も 好きに取り上げたり 自分から差し出したり いろいろな 端末を持ち あるいは 持ち歩き どこにいても 世界と繋がれる今 つながることが この世界に生きるハードルで つながらないでいられることが…

見えないものの

朝 始発前の駅 降りたシャッターの前に 少しづつ 人が集まる 仕事に向かう サラリーマン 飲み過ぎた 酔っぱらい 外国人の 若いカップル そして この寒空の 夜を耐えた ホームレスたち 駅の構内の わずかばかりの ぬくもりに惹かれ 少しでも早く 眠る場所 居…

風邪の走り

数時間前まで なんともなかった大気が 悪寒をもたらし 体が震える 額は熱く 思考はぼやけ 周りが 寒さで覆われる 動きたくない 考えたくない 昨日の暮らしを 振り返り 何が体に悪かったのか 動かない頭で考えると 堂々巡りに陥り 夢も現実も混濁し 汗が出て …

一人の寂しさ、街の明るさ

コンビニのイートイン おでんを買って チューハイ買って 窓際で一人 酒盛りの夜 寂しいなんて 言わないで 哀しいなんて 言わないでおくれ 独り者の中年が 誰もいない家に帰り 慣れない自炊 テレビを見ながら 晩酌するより コンビニでも ファミレスでも 人混…

永遠の小物

地位や名誉に あこがれて 見合う努力は やる気なく その日暮らしの 怠惰な日常 酒を飲んでは くだ巻いて 不満を言っては 何もせず いつしか時は 流れ去り 夢も希望も 過去になり 怠けることは 変わらずに 老いだけ 私を追いかけて 何もなかった この人生 何…

足るを知らず、分をわきまえず

足るを知る 分をわきまえる 嫌いだ 特に こんな言葉を 年上の人間から 説教じみた口調で 語られたなら それだけで その人までも 嫌いになる これらの言葉には お前の現状を 受け入れろ 夢なんか見てないで 足元をよく見て 堅実に生きろ って命令が 中に隠れ…

電車の旅情

西へ向かう 長距離列車 ターミナルで買う 駅弁とささやかな酒 窓際に座れば 列車は走り出す ガタンゴトン ガタンゴトン レールの継ぎ目が 紡ぎ出すリズムを 椅子から感じて 弁当を開け 酒を一口 灰色の日常は かなた遠く 旅立ちの浮遊感に 心湧き立つ ただ座…

出かけます

酒を飲みに

俯いた目をして

仕事に疲れ 人間関係に疲れ 人生に疲れて もう何もしたくない 交渉も 協調も 調整も コミュニケーションも もういい 疲れた そんな 疲弊した精神を 世の中は すくい上げることなく 邪魔もしなければ 蹴落としもせず 流れていく 流れ 流されて 堕ちて ひとり…

幻耽

蓬莱より 溢れる光 薄やかに 差し込み 浮つく塵の粒を しめやかに照らす 暗く 動けぬ 身の回り わずかな 明かりだけが 己の姿を映し 鈍った手先と 痺れた頭に 一抹の 安心を運んでいる このまま 暗暮に浸り 沈静の星の下に 生き 滞留する世界に 流されていく…

焚火のHOW TO

故郷に戻れば 毎日毎日 草を刈り 枝を下ろし 枯葉を掃いて 焚火する 燃やすものに 困らず 掃除と 気分転換を兼ねて 毎日 焚火する 薪など 買ったこともないし 焚火のための道具など 知る由もない ただ水を用意して 火を絶やさぬよう 燃え広がらぬよう ささや…

冬の病院

冬の病院は 大混雑 マスク姿の 老若男女 真っ赤なほっぺたの 子供を抱えたお母さん 俯向き ただ順番を待っている どれもこれも どこか陰鬱で 空気が こもって濁る 突然泣き出す 子供 耳をつんざく声は 誰にも相手にされず 無情に廊下を渡っていく ただ待つ …

言葉に絡む

旧友と酒を一献 楽しい時間 楽しければ 楽しいほど 酒は進み 酔いが回り 呂律は回らず 記憶も曖昧 楽しかったか 失敗したのか 覚えてすらいない 吐き気を 頭痛だけが残り 布団に埋まり 体動かず 一時のために 一日を無駄にする なんとも贅沢な愚行 しかし 後…

頭の中に音を奏でる

どれほど忙しくても 苦しくても 悩ましても ふとした瞬間 たった一駅乗った 電車の中 喫茶店の コーヒー 銭湯の 湯船の中で 好きだった音楽を 頭の中に 奏でる うろ覚えのメロディー おぼつかない歌詞 勝手なアレンジ いい加減だけど そのあいだだけは 悩み…

年老いて子供に帰る

あれだけ やかましかったのに 細かく 何事にもうるさく 一々注文をつけて 納得しないと気がすまない それが 年老いて 体動かなくなり なかなか言葉が出てこない 大事なことが思い出せない 頭の中が ふわふわして 膜がかかったみたいな 薄濁り 話を聞いても分…

誰に向けて書くか

言葉は 語彙も表現も 指す中身も 相手があって 初めて成り立つもの 赤ちゃんや子供 大人でも 相手によって変わるもの 誰に向けて書くか 誰のために書くか 誰に読んで欲しいか わたしが 頭に浮かべるのは 悩み苦しんで 溺れかかって 藁をも掴もうと 藻掻く者 …

憧れを仰ぐ

自分の人生は 自分こそ主役 試練を与えるも 葛藤するも 解き放たれるも 自らの生の彩り だが 人は万能ではない 世界は広く 自分より優れている者は ありふれていて 毎日のように 目や耳に飛び込んでくる 自分に出来ない業に 衝撃を受け 憧れて 仰ぎ見る 広く…

まだマンガが読める

子供の頃 小遣銭を握りしめ 漫画雑誌の発売日に 毎週 雑貨屋へ駆けて行った あれから 数十年 今でも マンガを読み続ける 新巻の発売日が 待ち遠しくて 堪らないマンガもある その時だけは 昔と変わらず 心躍り 胸高鳴って いの一番に 書店に駆け込む 面白い…

酒狂

酒に溺れ 酒に狂い 酒で失敗し それでも 酒にしがみつく 酒が 彼から全てを遠ざけ 酒だけが 今もなお残っている 衰えた体 疲弊しきった臓器 混濁した思考 酒を飲まない彼は 電池の切れた人形 虚ろな目 緩慢な動作 呂律の回らない舌 ひとたび 酒が入れば 笑顔…

こんな日もある

銭湯に行けば 流し場で 爺が脱糞 体を洗って 風呂に入るも 臭い匂いが こびりつき きれいになった気がしない 帰りに一杯ひっかけたいと 居酒屋の暖簾をくぐる 店主が買い物に出かけたばかり 後で来てと言われる やるせなく 家に帰れば 普段より 夕食早く 家…

寒風刺す街頭

冷たい北風が 強く吹いて 乾いた街の 埃を巻き上げ 運び去り 大気を澄ませる 痛いほど寒い風 街ゆく人は 早足で 襟を立て 背中を丸め 風の中 逃げ場もなく 棒のように 吹かれるまま 冷たさに耐えている 寒さと痛み 鋭さと緊張 冬本番の今 凍えながら 覚醒し…

同じ夢を見て

自分が最も苦しかった時期 その夢を毎日見る 職場 友人 住んでいた場所 毎日 夢を見て 起きて 布団の中 しばしの回想 嫌な気持ち 夢は 悪夢ではない だが 考えるうち 芯に残る 強烈な負の遺産が 頭をもたげて 過去の出来事だけでなく 夢までも 真っ黒に染め…

初詣初めての

電車で三十分 今まで 行ったことない 古刹への初詣 知らない町 初めて乗る路線 飴を切る音 香炉の煙 初詣を終えたなら よそ者として入る銭湯 賑わう酒場 どれもこれも 生まれて初めて 今まで 来ようと思えば いくらでも 気軽に 訪ねられたのに 何十年も 行か…

被害者であり続けても

不幸な事件や事故 生まれてしまった 加害者と被害者 時に埋没したくないと 被害者は声を張り上げる 加害者が 謝罪と賠償をしたくても 被害者は なかなか許してくれない 許さないから 事件は終わらない 被害者であることが いつの間にか 特権になってしまった…

何もしなくていい

何してるの 何するつもり 何したい 何かしなければ 何かしよう 何かに追われ 何かをしないといけないような 強迫観念 何もしないのは 悪いことみたいに 思い込む 何もしなくていい 何もしなくて 悪いことなんかない 何もしなくても 息はする 水は飲む 腹が減…

銭湯の正月

正月の銭湯 一年に一度の朝湯 特別な日の湯なら 行き交う人も さまざま 普段なら 銭湯に来ない人 昔は来たけれど ご無沙汰していた老父 扉を開けて 桶を持ち カランの前に 腰を下ろし それだけで 風呂に入り慣れているのか 一目瞭然 なかには ろくにかけ湯も…

地の果てまでも つながる

孤独に打ちひしがれ 魂を失った人 人に疲れ 人が嫌になって 付き合いを断り 人を避ける 逃げて逃げて 逃げまくって 誰も居ない所まで 逃げ去って そこでも ビクビクと 人の目を気にして 長い年月を 一人過ごす いつしか 人の恋しさに目覚め 己の過ごした歳月…

毎日書く

どんなにつまらないものでも くだらなくても 毎日書く 何も起こらなくても 退屈な日常でも 毎日書く 書いても 何にもならない 褒められるわけでも 金になるわけでもない それでも 毎日書く いつか 書かねばならぬ時 書かねばならぬもの 残さねばならない 大…

哀しい人生

かつての人々は みな美しく 過ぎ去った友人が よく見え 思い出の中は 善き人で埋まり 自分だけ 粗が出て つまらないものに映り 失敗と悔恨にまみれて いよいよ 生きるのが 恥ずかしくなる 哀しい人生 希望は 夢見るものから すがりつくものに変わり 過去は …