頭の中に音を奏でる

どれほど忙しくても
苦しくても
悩ましても

ふとした瞬間

たった一駅乗った
電車の中

茶店
コーヒー

銭湯の
湯船の中で

好きだった音楽を

頭の中に
奏でる

うろ覚えのメロディー
おぼつかない歌詞
勝手なアレンジ

いい加減だけど

そのあいだだけは
悩みも
煩わしさも
忘れて

ただ音楽が
頭の中に流れている

流れて
何も考えなくて

力が抜けて
楽になって

日常の中にいながら
日常から抜け出して

ささやかな
安楽に
身を委ね

呆けて
そのままで
いられる