2017-07-01から1ヶ月間の記事一覧

走る

走る 走る 腿を上げ 腕を振って 走る 走る 坂を上り 土を蹴って 走る 走る 息が切れ 足が疲れても 走る 走る 汗流れ 渇きに喘いでも 走る 走る 見たことの風景 見たことのない自身を夢見て 走る 走る 振り返らず 何も見ずに 走る 走る 時の流れとともに 走る…

水の街

街に水が流れるだけで 風貌が変化する 水は匂いを運び 光を反射し 飛沫をたて 流れる 夏には淀み 冬には凍り 魚も 鳥も どこかに潜み 水辺は苔むす ロンドンも パリも ローマも ウィーンも 都市には大きな川が流れる 昔の五輪で東京は 土地が買えず やむを得…

表現の自由

日常生活の鬱屈を晴らしたり 不平不満を言いたてたり 愚痴る手段として 表現はあるのでない しかし それでも 表現するということは 解放であるに違いない 日常や 現実や 身体や 世界からの 解放なのに違いない だから 表現は自由でなければならない 表現が束…

夏夜

淀んだ風 湿り気 暑さに飽き 火照る体を横たえる 入眠と覚醒の間 朧気に 脱力した 夏の夜半 遠くに聞こえる 女の声 走り去る車 踏切の遮断機 熟しきった季節の 停滞と気だるさ 尖りきった冬の冷たさと対極の 鈍りきった夏のぬるさ もう年も折り返す

まずい

田舎のバスターミナル 古ぼけた食堂 埃の積もった雑誌の山 饐えた匂い 現実離れしたテレビの音声 流れ込んでくるバスの排気 茶色くなったご飯 ぬるいみそ汁 魚のフライは 冷えて固い ああ不味い こんなに不味い飯を食ったのは初めてだ そもそも 外食に物足り…

彷徨い

水不足だ渇水だと 舌の根も乾かぬうちに 大雨で洪水になった 不足を気に病み 充足を求めても 過剰となると 足りないよりも始末が悪い 気象をみて 過不足ないのが一番だと 教訓めいた 意味を読み取るのも 悪くはないのだろうが それを生活や人生に置き換えて…

図書館の男

図書館のテーブル 向かいに座る男 十冊以上の辞書を 壁のように積み上げ 何やらメモを取っている それだけなら良いのだが ア~とかウ~と ぶつぶつ言いながら 時に低く唸り声を上げる 読書に集中できない 厄介な席についてしまったものだ 迷惑なのには違いな…

筋肉抄

人の体は あまり無茶さえしなければ 難しく考えなくても それなりに安定し 体調が悪ければ どこかが信号を出して 危機を知らせてくれる それなのに筋肉ときたら 発達のバランスを 頭で考えて取らないといけない おまけに 動かしたら疲れて痛いし 休ませない…

マブタの裏

暗闇という言葉があるけれど 目を閉じても 真暗で何も見えないワケではなく 目蓋の裏なのか何なのか 名状しがたい模様が 目に映っている それは黄色や緑のような 線や点のような チカチカするような 何かではあるのだが はっきりとした形を取っているわけで…

旧交に叙す

旧友などいないと思っていた 現在の友達かそうでないか 自分の人間関係はそれだけだと思っていた 不思議だねえ 久しぶりに会う人との付き合い これが楽しい 世知辛くも わだかまりもなく 仕事の付き合いもない かつての上司との 痛飲 昔は顔色を伺っていた人…

いま田んぼ道を歩く

田んぼの中の一本道 遠くからの風は 稲を揺らしながら 近づいてくる 炎天下 太陽の赤 稲の緑 道の灰色 自分の影 それだけしかない 道は真直ぐ 田は四角 幾何学的で 工業地帯のように整備された田園は 人工的なのに 恐ろしいほど人にたいして冷たく 奇妙な孤…

反復的暴飲暴食

月に一度か二度 やってしまう 食べ過ぎ飲み過ぎ 一人酒では飲み過ぎない 一人でたくさん飲むときは 最初から飲むと決めているとき つまり自棄酒 そんなのは数年に一回だ 暴飲暴食するのは楽しい時 誰かと話が盛り上がった時 たくさん飲んで ヘロヘロになって…

空から氷の塊が降った 科学の知識や 天気予報によって 我々は 雹がいづれ止むのを知っているけれど それでも 雷と風と氷が 暴力的に地面に叩きつけられ 割れんばかりの窓 折れるようにしなる枝を 家の中から見ているだけで 恐怖がわき起こった 自然なのか神…

本は二度生まれる

99%の人に価値がなくても たった一人に大切にされるなら 古本の意味がある 出版社が発行し 新刊書店が販売し 人気があれば増刷する しかし この世の大部分の書物は 初版で絶版だ 絶版の本は 巡り巡って 古本屋で売られる そして 第二の生を受ける 時代が変…

言葉に賭す

心がこもっていない言葉 形式だけの言葉 社交辞令 中身のない言葉が嫌いで どうすれば 言葉に心がこもるのか 考えている 言葉は溢れかえっている いつでも どこでも 子供だった頃 話す言葉に嘘はなかった 少しずつ 知恵をつけて 摩擦を避けるために 言葉の技…

老親

全ての人間は 誰かの子供であり 全ての人には 望む望まずに関わらず 親がいる 親が老いて 赤子に還ってゆき 自分のことを 自分で出来なくなったとき 子供として覚悟はしていたが それ以上に 親が動揺していたことに 驚いた 人には 年老いて死ぬか 年老いる前…

梅雨明けが近くて遠い

滝のように流れる汗の 爽快感は 梅雨明けを 知らせる じめじめした 曇天続きの 一ヶ月を過し まとまった降雨の後 すっきりと晴れた 夏らしい夏 春一番や 木枯らし一号のように 梅雨明けは たった一日で 季節が劇的に変化する くっきりとした 明暗を描き出す …

草を刈る

山に入って 草を刈る 腰を落とし 鎌を振り回す 照りつける陽射し 飛び回る羽虫 草いきれ いくら刈っても 草は生えて 腰が痛み 膝が笑い 腕が重くなって 後ろを振り返ると ゴマシオ頭のような 草刈り跡 その広さの分だけ 煩悩を振り払えたような気がした

出かけます

一日出かけます

ルールとマナー

図書館の自習室 寝てる人が起こされる 沖縄の図書館で 地べたのカーペットに寝転がっている人が起こされるのを見た時は 仕方がないと思った 椅子に座っていても 混んでいたり 他に勉強したい人が待っていたら 寝るのは良くない だがガラガラの図書館で 誰に…

生きる原理

自分にとって大切なもの 迷ったとき 最も優先するのは 嘘をつかないこと 正直に生きること 出世よりも 名誉よりも 人間関係よりも 正直に生きることを大切にする お世辞は言わない おためごかしは言わない 優しい言葉も使わない 相手への気遣いもしない 自分…

でかいゴキブリ

夏のゴキブリは 大きくて速くて よく育っている 若々しさが なおさら毒々しく映り 躊躇なく 叩き殺した それに後悔はないが 厄介なのは 心の中に巣食う ゴキブリじみた記憶が 頭をもたげること 叩き潰せればいいのだが そんな手立ても知らないし そもそも 自…

夏の匂い

夏といえば 汗の匂い プールの塩素の匂い 花火の火薬 割れたスイカ 夜店のたこ焼き 蚊取り線香 盆の迎え火送り火 青いトマト キュウリ 刈った草の青臭さ 汗ばんだシャツが 日に照らされて 自己愛を含んだ体臭の香ばしさと 汗臭さを放つ それが夏の匂い

只管打眠

自分の身体は 完全に支配できない 毎日欠かさずしていることは 食事と睡眠 腹が減るのは 食べればおさまる 眠いのは 眠ればおさまる だが 毎日同じように寝ているのに 眠くて眠くて仕方がないときがある 眠い 眠い いくらでも眠れる 休日の朝起きて ご飯を食…

気の抜ける夜

毎日毎日毎日 もうダメだと思っても ほんとうにダメになったことはない もう生きていけないと思っても 生きていけなかったことはない そこそこの失敗 そこそこの挫折 それを拡大鏡のように 被害妄想に育てあげ 苦悩の気分に浸る 自分が悩み苦しんでいる状況…

本はありがたい

日々の暮らしが 平坦で規則正しくて そら恐ろしくなる このまま 身体がゆっくりと老化し 停止に至るのは 確実で そのことに 不満も悩みもないのだけれど 安定した生活の 幸せを実感できないのは 未だに子供っぽいのか 精神の有様が どこか歪んでいるのか と…

赤ん坊の泣き声

午後の病院は 赤ちゃんと子供ばかりで 泣き声と喚き声に満ちている 子供が騒ぐのは 落ち着かないが 今では不思議と 納得できるようになった 仕事に追われ 毎日の通勤電車で たった一分でも寝たいと シートに座って 目を閉じた時 赤ん坊が泣き出すと いらつい…

来たる夏に

少し前までは 蒲団の中で寒さに震えていたのに 今は生活のどこにも 寒さを感じる機会はない 朝から晩まで 蒸れた空気が身体を取り巻いて じんわりと汗をかく 草木や昆虫は 寒さより暑さが好きなようで 葉を伸ばし 空を飛んで 大きく多くなっていく 陽射しの…

子供だったときの夢

お菓子の家に住みたいと 小さい頃に見た夢は 歳をあまりに取りすぎて 再び描くのむずかしい 歳を取ってみてみると 欲目が深くなりすぎて お菓子だけでは物足りず もっといい物欲しくなり 人にチヤホヤされたくて 心はいつも ないものねだる だけど子供が持つ…

熱燗世代

「さけ」と言えば日本酒を指した だから日本酒のことを「ポンシュ」と言うのが好きではない もともと嫌いだった人がポンシュと呼んでいたからか ポンシュという発音が嫌いだから その人まで嫌いになったのか 今となっては忘れてしまった ポンシュという言葉…