本はありがたい

日々の暮らしが
平坦で規則正しくて
そら恐ろしくなる

このまま
身体がゆっくりと老化し
停止に至るのは
確実で

そのことに
不満も悩みもないのだけれど

安定した生活の
幸せを実感できないのは
未だに子供っぽいのか
精神の有様が
どこか歪んでいるのか

とは言え
平坦な暮らしに
緊張とうるおいを与えてくれるのは
何かしらのトラブルを除けば
私にとっては
つねに書物であり

本を読めば
世界の色は変わる

クーラーのきいた部屋で
だらけた姿勢で読んだとしても

それが死に物狂いで書いた本ならば
心が張りつめ
脳裏には地獄も天国も現れる

ここではない何処かへ
精神が飛び出し
しばらく還ってこれない時もある

そんな機会が年に一回でもあるから
書物の前に頭を垂れる