2018-11-01から1ヶ月間の記事一覧

地図と時刻表でつくる

地図と時刻表は 読む楽しさ 空想する楽しさ 使う楽しさ 旅をつくる 楽しさに満ちている 世界の果てまで ルートを描き 冒険心と 遊び心で 旅をする 遠回りも 寄り道も 気の向くまま 旅への想像は 広がり 現実の旅行より 旅を創造する面白さ 夢と期待を さもし…

小説家志望だった父の人生

若いときから 小説を書いていた父 小説教室に通ったり 同人誌に入ったり 仕事する傍らで 五十年以上 百作以上は書いただろう だが ものにならず ついに 小説家として 収入は得られなかった 父は敗者だったのか 父の人生は失敗だったのか どうだろう 本人はど…

口に出したら壊れてしまう言葉

ずっと耐えてきた沈黙 言葉にしないでいた目標 一歩一歩 近づいて 実現できそうになった間際 口に出したら 手から こぼれ落ちてしまった 言わないことで 歯を食いしばってきたのが ふと 心がゆるんだ もういける さすがに大丈夫だろう 安心からの慢心 油断か…

失われゆく言葉の傍観者として

先週の勤労感謝の日 居酒屋の親父がこう言った 今日は旗日だからはやく開けたんだ 旗日 何十年も聞いてない 自分自身で掲げたことはないけれど 祝日に国旗 青い空にはためく日の丸 脳裏に浮かび きれいだと思った こんな慣習も こんな言葉も 使われなくなっ…

おいしさを噛み締めて

おいしいものを お腹いっぱい 満足して 眠りにつく おいしいものを食べて 満たされた気持ちになって おいしいものを食べて 嫌なことを忘れて おいしいものを食べて 一時の満足に浸って これ以上の幸せって あるだろうか どんなつらいことだって どんな苦しい…

口先だけの

口先だけの言葉を どれほど毛嫌いしてきたか 口先だけの言葉に どれほど救われてきたか 心が 発火するのも 沈降するのも 人の言葉で 心がこもっているのは ごく一部でしかない 思いつきの言葉 その場しのぎの言葉 形式だけのあいさつ 表面的な付き合い 我々…

泣き猫

大好きなおばあちゃんが 死んだ時 猫が泣いていた 棺の周りをうろついて 不思議そうに 何度もおばあちゃんの 顔を覗き込んでいた 誰もいなくなった おばあちゃんの床の間 猫は ちょこんと座って 壁に向かって 音も立てず 肩を震わせていた どうしたの? と聞…

負のスパイラルの心

どうしたんだろう どうなってしまったんだろう 自分の中の 心のあり様 どこに行っても 何をしても 心が躍らない 痛みも苦しみも 嫌なことだってないはずなのに 不満が吹き出して イライラして 怒ることだけが 唯一の感情で 過去に怒り 今に不満で 未来に希望…

大いびき よだれ臭の夜

半開きの口 大きないびき 不意に止まる呼吸 静寂をやぶる轟音 普段 どれほど温厚な人でも 寝てしまえば 人格は関係ない 悪魔の叫び 地獄からのうなり声 全力でがなり立て 耳をつんざく 空いた口から よだれが流れ 口呼吸の呼気に 晒されて 生乾きとなり 匂い…

ネガティブの抽斗

どれほど時が経ったのか 過去に埋もれたはずの 数々の記憶 一つ思い出しては 赤面し また思い出しては 息が詰まる わたしのこころは わざわざ 昔をほじくり出して わたしを苦しめる 完璧な人間などいない 嫌な記憶のない人などいない それなのに 欠点を探し…

浮遊する街

若者が出ていって数十年 残った商店の跡継ぎたちが 知恵を振り絞った町おこし おしゃれなカフェと 食べ歩きのイベント B級グルメ 屋台村 そこかしこに 不思議な銅像が点在して モダンアートだの 芸術の町だの わけのわからないことを 売り物にしている どこ…

忘れていくあいだ

あの時の 潮風の匂い きらめく水面 駅から とぼとぼ歩いた街 自転車の中学生 釣り糸を垂れる好々爺 自分で感じたことなのに するすると 指の間から落ちる砂のように 記憶が瓦解していく 嫌なことも 嬉しいことも 感覚が朧気になり 自然に朽ちる屍のごとく 少…

車窓の夢想

電車は 様々な人が乗って 多くの夢を運んでいる この大きな動く箱で 移りゆく景色を眺め 次々現れては消える家々と 住む人の分だけ そこにある欲望を 通り抜け カタンコトンと響く 枕木のリズムに まどろみながら 日常を抜けた安堵と たどり着く場所への期待…

旅心を得る時

旅に出ても 仕事の葛藤 人間関係 日常の煩わしさは ついて回り いづれ戻る 普段の生活を考えて 鬱々として 旅の今を楽しめない だが 何かをきっかけに 日常から解放され 憂さを忘れられる時がある それは 日帰りの旅行で得られることもあれば 一ヶ月かけても…

出かけます

一週間ほど出かけます

旅立ちの前夜

今日 わたしはこの街を捨てる 慣れ親しんだ 故郷を出て 知らない街へ 馴染みの店 旧友とも 永久の別れ 私を柔らかく包んでくれた繭は いつしか 体にまとわりつき ドロドロに溶解して 耐え難い腐臭を放っている 私が生きて 出会ってきた 全ての素晴らしいもの…

愁眠に疲す

肉体も追い込まれると 心病んで いつしか 何も考えられなくなる 寝ずの日々 金属音が頭を切り揉むように 響いて 視線を落として 歩く道は 風景も 人の顔も見えない とりあえずの風呂 とりあえずの食事 とにかく 手っ取り早く 雑事を済ませ 蒲団に潜り込む と…

つらいってことが・・・

本当につらければ 耐えられない 辛くて苦しいなら 人は逃げる 逃げて 隠れて どこかで またやり直す でも そんなこと 滅多にない 毎日 脅かされるのは あとちょっとだけ 頑張れる もう少しだけ 我慢できる そんな小さなストレス 出来ないことじゃないために …

単純・反復・作業・永遠

いつまでも続く コンベアーのベルト 同じモノの 同じ場所に 同じように加工して 次を待つ 延々と 繰り返す 流れ作業 体の 同じ部分が痺れ 脳が痺れる いつ終わるのか 休む暇もない 同じ作業 同じ毎日 ただ自分の人生を 削り取られるだけじゃないかと 不安が…

生命の藻掻き

舟から 釣糸垂らして 針に食らいつく 魚の鼓動 プルプルと震え 藻掻き 足掻いて ついには 船べりに引き上げられる 食い込んだ針 激しく動くエラ 暴れて 必死になって 命をつなごうとする 健気さと裏腹の 魚体の輝き 命は こうして手玉に取られ 美しさを放っ…

閉じてゆく年

今年も 野球が終わって 酉の市が立てば あっという間に 歳末の気配 毎年 何事かあり 日常は さざ波を立てながら うつろう ホロホロと 崩れる砂上の家 シワが増え 目がしぼみ 弱る体 弱れば 弱るほど 一日が大切になって 平穏に安堵し 暮れる年に しみじみと …

哀しきマッチョ

折り合わず わが道を一人歩き 仕事帰りに バーベルを上げ ダンベルを振り回して 疲労困憊 酒は飲まない ささみにブロッコリーを タッパーに携え いつももぐもぐと 口を動かす 誰かに体を見せるわけもなく 習慣という 味気ない日常に身を浸し 猫を相手に ポー…

暮れる影

つるべ落としの 秋の陽 夕は すっかり暗く 人は長く伸びた 影を背負い 顔も分からず 歩き回る この影 一つ一つに 人生があり 人は命を抱いて ここに居ると思えば 世界の豊かさが 人の光と影が そら恐ろしくなり 目を落とす 影は濃く 闇と一体になって 足元は…

唄う女

歌いながら 街を歩く女 髪振り乱し 首振って 声を張り上げる 気がふれているような 素振り その声が あまりに伸びやかで しなやかで 美しいので 心奪われ 我忘れ 唄う女の あと追って 歌を聴きに 歩き回り 気が狂れた 一団となり 街から街へ 歌の限りを 追い…

ぼうふらの誕生日

澱んだ水のなか クネクネと 身をおどらせ はね回るぼうふらよ この寒さでは 冬も越せまいに おまえは 今日生まれて 何日も経たずに 死んでゆく おまえの親は おまえの行く末なんぞ 考えていなかった ただ産むことだけ 産んで死んで 代わりのおまえが 水のな…