大いびき よだれ臭の夜

半開きの口
大きないびき

不意に止まる呼吸
静寂をやぶる轟音

普段
どれほど温厚な人でも

寝てしまえば
人格は関係ない

悪魔の叫び
地獄からのうなり声

全力でがなり立て
耳をつんざく

空いた口から
よだれが流れ

口呼吸の呼気に
晒されて
生乾きとなり

匂いが広がる

人のよだれの生臭さ

毎晩
毎晩

これだけ苦しめられているのに

本人はケロッとして

周りが眠らないせいで
自分の眠りも浅かった
などと言う

衝動的な殺意
呪い言葉を吐きかけたいのを
ぐっとこらえる

この温厚な人物が
夜には轟音と悪臭を撒き散らす

最悪の暴君へと
一変する
人の不思議

この眠れない苦夜は
なにかにつながるのだろうか