#詩

心戻る❜

凍りついた心も 徐々に解れ 日常を取り戻してゆく 熱いも冷たいも 痛いも痒いも ゆっくりと 己の内に蘇る 傷つけど 壊れたままでなく 戻ってくるのだが その心は 以前とは どこか違って しっくりこない 失われた 何かを忘れてしまった 何十年も付き添った 誰…

欲望相反

冤罪で囚われ 長き年月を拘束され 全て終わり シャバに出てみれば 家族はいなくなっていた 何も分からず 慟哭する 何をすれば良いか 生きる意味すらも 失ってしまった ああ 私にとって 家族こそ 人生そのものであった 絶望と空虚 だが 意識の下 確実に潜み …

精神の死

地獄にいると 心が死ぬ 大変な労働の中 週に一日でも休みがあれば 何をするか 考えるだろう 何ヶ月か働いて 長い休みが取れるなら どこに行こうか 何をしようか 期待を胸に 現実に向き合い あれこれと夢想して 時を過ごせるだろう だが 休みもなく 果てもな…

生存

生き残った この月の地獄を 生き抜いた 体はボロボロ 心は麻痺して固まる 詩情など 残っているはずもない それでも 生きていられた 人が 短い間に 全精力を傾けて 一つのことをする 全てを燃やし あらゆる犠牲を払う それでも 何も残らない 何かを作ったわけ…

素人の包丁

愚かであることを 悪と断罪したくなるほどの 愚行の数々 素朴な敵意を向ける刃は なまくらのため 切れないばかりか 打ちつけて鈍い痛みしか残らない それを盲滅法 八つ当たりで 場当たりに どこかしこと振り回すのだから 誰も近寄らず 戦いにもならず 勘違い…

焼け跡を求める者ども

世界は 理知によってではなく 蛮勇によって変わるのか その行動が 喝采を浴び 主体となった愚行者は 非難に耳をふさぎ 賛同者を 周りにはべらせ 悦に入って 正義を吠える たった100人の支持者によって 数万人が地獄に落とされる 言葉は 都合よく解釈できる …

詐欺師

いかがわしいトレーナーに トレーニングを指導され 身体が変わらないと嘆き 憎しみを抱き いかがわしさを糾弾する 一方 自分はクリーン やましいことなど何もない トレーナーがいて 彼の指導は 素人そのもの いかがわしく サービスの上手い詐欺師か 公明正大…

踏み絵

踏み絵を踏ませる自由はあるか ネットに溢れている いかがわしく 怪しげな行為をする者たち 犯罪でなくとも 詐欺一歩手前のダーティーな行い 彼らを断罪するため 世直しという言葉の下に 悪か否か 踏み絵を踏ませる 一人 また一人 踏み絵を踏まなければ 糾弾…

泥酔

記憶を失い 物を壊し 友人を失い 財産を失う 終わりなき堕落の坂を 転げ落ちながら 時に襲ってくる悔恨と 失望と諦念 それは自戒をもたらすことはなく さらなる自壊を導く 落下する過程 どうにでもなれ そんな自棄糞に酔い 美しい夢をみながら沈んでゆく そ…

魔女狩り

どれだけ正しく 道徳的であろうと 相手が いかがわしい詐欺師に見えようと 正義の名の下に 人を糾弾し 突撃して追い詰め 社会的な制裁を加える権能など ありはしない 明確な犯罪者なら ともかく この世の理の グレーゾーンに浮遊する人々 人の欲望や コンプ…

解禁日

疲れ果てた身体には 贅沢をする元気もない 節制の間 あれも食べたい これも食べたい あれもやりたい これもやりたい 願い続けたあれこれも 出来るとなってみれば 気持ちが奮い立つこともない ただ疲れ 少しの食事に満腹し 動かなかった身体を 動かそうにも …

塩出し

水を飲み また水を飲み 水を飲む 飲み続け 出た水分には 塩が出て 身体は ますます水を保持しきれない さらなる水分の流出 めまい だるさ 空腹 塩を出して 絞る身体 しなしなになって 塩を入れれば 次には さらに水を溜め込む

望遠鏡

遠くへ 遠くへ 眼を飛ばし 精神を運ぶ 遥か彼方 地の果て 星の向こうまで 見る意思 一切の曇りを許さず 透徹した視覚を追求する 一点に研ぎ澄まされた技芸 嘘もごまかしも 通用しない

戦い済んで

憎しみの連鎖の跡 砕けた心の残骸が 散らばっていた 埃にまみれ それはもう 土砂と区別がつかない 心ある者は 失われた心を思い 心無い者は さらに無慈悲になる 死とは なくなること 姿かたちも 思考の片鱗も 人々の記憶からも 消え去り 人は前を向く 忘れ …

炎上という消費

誰かが誰かを 叩いて 叩き返されて 周りは 燃え上がり さらなる燃料をくべ 引くに引けなく 本意とは 遠く離れても まだ叩き もうゆずれない 限界まで追い詰められ 一線を越えて 壊れる 焚き付けた皆々は 何事もなかったかのように 他の火事場見物に赴き 現場…

鳴く鳥の

ヒヨドリ鳴く 空は高く 倦んだ大気は流れ 哀しさが 風に乗ってくる 透き通る世界 存在は軽く 遠く運ばれ 感情の残滓が 鳴く鳥の 余韻にたなびく

躓き

忍び寄る不幸は 張り巡らされた蜘蛛の巣のように あちこちから まとわり付き そこで躓き あそこで躓き 小さな不運に見せて 身の回りを 覆ってゆく 気づけば 遠くの彼方 取り返しのつかない失敗 あの時 小さな小さな気づきがあれば 回避できたかもしれない

落ちた花

花は散らず ポトリと落ちた 姿を留めたまま 地に転がり 泥に塗れ 雨に降られ 汚れ しなびて 見る影もない やがて 土に還るとき 重なった 花びらの裏に見えた 白さ

狂える魂

風呂に入り くつろいだ時 前に立ち 顔に小便をかけてきた子供よ 恐ろしい 理由なき唐突な蛮行 驚きに思考は途絶える 喜ぶ子供の顔 狂気の現れなのか ここで 立ち上がり 子供に何をしよう そう難しくもなく この子に 一生忘れられない 衝撃を プレゼントしよ…

お前の猫

お前の中に 猫がいるだろう 闇夜で 一人孤独な心に か細い鳴き声が届く 目的のない 虚無にあり 猫はただ泣くだけ 姿のない 精神と知覚の境目 その隙間から 猫が鳴いている 見えず 届かず 力のない 不安に怯えた心に届く 猫の鳴き声が 聞こえるだろう

運動

この一時 この一年に 全精力を傾け 燃え尽きる運動もあろう コツコツと 長い年月をかけ 自分のペースで 時に休み オンとオフを切り替えて 人生の様々な出来事を経験しながら 移り変わる世界の中で 続けられる運動もあろう どちらも当然のあり方で 運動のイメ…

毒舌芸

気に食わないことがあれば 叩きたくもなろう 勝手に叩くのは 好きにすればいいが 叩き方が あまりにも稚拙では 見苦しいだけだ ある選手がホームランを打つ たくさん打つ ある記録を塗り替える それを称えるのが 気に食わないのは仕方がない だが 以前の記録…

短文レスバ

昨今のネットでは どうして こうも罵詈雑言が飛び交うのだろう 匿名の掲示板での悪態など 便所の落書きと変わらない ところが 実名で感情をあらわに やり合う人が珍しくなくなった 政治性 党派性 誰に賛成するか 反対するか はじめから決まっていて 何を言お…

閉ざされた空間に 一つだけ開く 光が差し込む午後 子供の遊ぶ声 隔絶した世界をつなぐ 小さくても 手が届かなくても ただ一つ 開いているだけで 窒息を免れる

老いていく

今まで出来たことが 出来なくなっていく 階段を駆け上がれず 足が上がらない いくら時間があっても 寝られず 疲れが取れない 好きなはずの酒が 飲めなくなった 老いていく身体に 失望し 時に 抗いながらも 衰えを受け入れてゆく それは諦念ではなく 押し付け…

怪我

怪我をして どう体を動かすと どの筋肉が使われるのか分かった こうすれば痛いのに ああすれば痛くない 身体への理解を深めた 同時に 身体を無理解で動かしていた自然に気づいた 己の体を知らずに生きる 意識しないでいられることも また良し

変化

変わらないでいるのは尊いか 変わらなければならないか 年を経るほど 変化は億劫で 変わらないまま いつまでも 過ごしたいと願うようになる それは 命までも 不変であったならという願いに仮託して 若ければ 変わらぬことは停滞で 後退と同義ですらあり 変化…

本当は違うのに

願い求めて 付き合ったはずなのに ほどほどの距離感を 模索し 要求には 無理せず 苦しまず 余裕を持ちながら応える それが長続きのためだと 思っていたのに 全力を出さねば いけなかったようだ こちらのペースと あちらのペース 噛み合わぬまま 離れてゆく …

犯罪の表現

テロリストが作った映画なんて いくらでもあったじゃないか 今よりも はるかに刺激に満ちて 政治に物申す 多くの映画を 我々は観てきたではないか 大したこともない 一つの主張を 押し潰しても 気に食わないからと 排除しているだけだ それ以上の理由も 必然…

国葬の日

大物が死んだ 現代の日本で 銃によって殺された 国葬は 政争の具となった 与党の政治利用 野党の政局化 与党内の権力争い これを機に 隙を伺う 国葬は適切だったのか 彼を国葬にしないならば どんな人物が国葬に値するのか 考える契機となるはずも 考えない…