2018-03-01から1ヶ月間の記事一覧

年度末

腹が減るのも 眠くなるのも 人が生きるのも カレンダー通りじゃない 人とつながり 社会が生まれて 暦は出来る 今 人は カレンダーに支配され 働く時間も 休む日も カレンダーに合わせる それが当たり前で カレンダーがなければ 生きていけないような 気持ち…

雨はいつか

夜まで雨降らないよ この言葉は 降っている雨が夜まで降り続かない 逆に 夜になるまで雨は降り出さない 二つの意味が 読める 今が雨なら 上の意味 晴れているなら 下の意味 現実を見て 文脈を判断する 現実 言葉 解釈 三つで意味を汲み 何をするかは自分次第…

抑圧した欲望の倒錯

見てはいけない やってはいけない 禁止され 抑圧されるほど 興味が湧き 心奪われて 止めたいのに 近づいてゆく 食べてはいけない 傷つけてはいけない ダメだと思い ダメになると思い ダメになってゆく 自分を止められず 堕ちてゆく 陶酔に埋没し 倒錯した快…

芸を仕込む

犬におすわりをさせる 猿に芸を仕込む アシカのショー 動物に 無用な振舞いを 人の都合や 興味本位で教え込む 気の毒 虐待に近い そう思っていた ところが 動物に接していると 彼らのほうから進んで 物事を覚えようとする 出来ないことが 出来るようになる …

木造の艶

階段の手すり 手が触れ 汗と脂が染み 磨いては 汚れ 人の一生を越えてなお 毎日使われて 鈍く 輝き 滑るような 光沢を放つ 人に触れた時間と 磨いた手間が 重なり ただの木片が 艶を帯びた 捨てられず 壊されず 使われることが 大切な存在の証で 摩耗し 古び…

キムチ鍋に尻を拭う

思いたち 牛の小腸を買い求め 脂抜きして 鍋にする 豆腐、白滝、エノキ、キャベツ、ニラ ニンニクに鷹の爪 もつの甘味 キャベツの甘味 ニラの香り ニンニクのアクセント 博多で食べた 思い出に浸り 楽しみな夕餉と なるはずだった 数ヶ月前 知人にもらった …

退屈を謳歌する

毎日毎日 世に事件は起こっても 日常に波風は立たず ああ 今日もまた 何もせずに 終わってしまった 怒ることも 喜ぶこともなく 平穏無事に過ごし 死が近づいてくる 退屈で 物足りない生活は 失われて初めて 有難いと思える 普段から 無事でいられることに 感…

雨の中の老婆

霧雨の降る朝 前には老婆 傘はなく とぼとぼ 俯いて歩く 染み入る水滴に 耐えるように 歩みを止めず 屋根に入らず 氷雨のなか 折れ曲がった 小さな背中に 悲哀を漂わす コンビニを通り過ぎた刹那 老婆は傘立てのビニール傘を抜き取った 傘を差し 足を速め 雨…

山里の花

山の端々に ちらほら桜咲き まだらに色づき 地には新緑が芽吹く 淡い彩りが にじみ出てくるような春 ここに居ると 何百年も変わらない 自然の移ろいに 江戸も平安も等しく 近しいものに思え 古人の歌も詩も味わい 人の営みのつながりに 安堵する 自然の美し…

不感温度

35,6度の湯 熱くもなく 冷たくもなく 浸かり 馴染ませば 同化し 体と湯の境は消え 液体に 揺蕩う 静けさのなか 水が流れ 時を忘れ 存在を忘れ ただ 脈打つ鼓動だけが 四肢を巡り 水面に波を立てる 水の中 動く心臓 ただ在る私 なにもせず 世界とつながっ…

前向きで正直な心

がんばります 皆で仲良くしましょう 小学生のときから お題目のように聞いてきた あまりにも耳にして 心がこもっていない 建前の前向きな言葉に うんざりし こんな空虚な言葉なら 悪口でも 恨み言でも 正直な気持ちの入った言葉のほうを 大切にしたいと思う…

心にあてる言葉

胸の奥から 突き上げてくる 情動と行動を 駆り立てる 形のない衝動を 満足させるため 言葉を探し 体を動かす 不安や焦燥 怒りや悲しみ 興奮や熱狂 喜びや愉悦 言葉という形にして 心を納得させようとするが 言葉という枠にはめると 何かがこぼれ落ちる どれ…

秩序と混乱の間に

規律多ければ 堅苦しく身動きを縛られ 秩序無ければ 我儘まかり通り世は荒廃する ルールを決めて 守れと強いるなら 監視の目が蔓延り 人に厳しく 自らの手に正義があるように マナーを振りかざす 規制を無くして 際限なき自由をもたらしたなら 欲望のままに…

はやく激しくおそく緩く

新たに美味しい食べ物に出会い 毎日のように食べて しばらくすると 飽きて見たくもなくなる 運動の楽しさに目覚め 暇さえあれば体動かして いつの間にか 普段のグータラに戻る 好きなものは 急激に接近すると 短い時間で消費する 人との付き合いも 急接近し…

生の有様

世の生き物は 朝から晩まで 食べ物を探し 子孫を残す それだけに生きる 食べること 子供をつくること 生存と繁殖 それだけに生きるのは 虚しいと 人は思うが それだけが大事なのが 生物の有り様で 卑下することもなければ 特別視することもない 退屈なら 興…

春の夢の甘美

暖かき 春の夜 降りそそぐ 花粉に惑うたか 在りし日の 家族の夢 父と母と訪れた 今はなき遊園地 桜の花びら散る季節 ベンチで食べる弁当 蜜柑 若々しい母 穏やかな日射し 団欒の日々 むかしむかしの 記憶の底に 誰もが持つ 幸福の想い出 甘美で 切なく 二度…

ホタルイカ

今年の初物 親指ほどの姿態 キラキラと 光沢を放ち 口に含めば 弾力と 甘みと ワタの苦味 舌に絡み 咀嚼すれば おぼろげな 潮の香り 可愛らしい パッチリした目が いまだ 光を失わず 生命を丸ごと 飲み込む快楽と 春の息吹を 摂り込む贅沢が またわたしを 世…

追いかけてくるカラス

道端で目が合った カーッと鳴いて電柱へ 振り返る こちらを見ている チョコチョコ歩き 私を視界におさめ 電柱を渡り 追ってくるカラス 追われる不安 振り返り 足を早め 振り切れず そわそわと 長い一本道を歩く 見られること 視線を浴びて 歩くこと 無機質な…

我が心は私のものか

我が心は私のものか 知らぬ間に 何ものかに心奪われ 一喜一憂 興奮と落胆を繰り返し 不運に襲われれば 悲しみに暮れ 僥倖に 歓喜する 不意に訪れる出来事に 反射するように 心は動き 抑えることすら難しい 意思の下 身体を動かし 望みを叶えようと 外の世界…

食感の快楽

大量の鶏皮を 鍋で煮て 何度も湯を換え 油を煮出し 一口大にして フライパンで焼く 香ばしい 鶏皮の匂い 弱火で焼いては ひっくり返す 外はパリパリ 中はフワフワ シャクシャク モチモチ サクサク プヨプヨ 食べているのが 気持ちいい 目の前の 楽しさを 味…

かけがえなく類型的

目が二つ 耳が二つ 手足が二本づつ 心臓が動いてる 人の姿は ほとんど同じで 出せる力も 動くはやさも たいして変わりない シェパードとチワワほど 人に違いはない 変わり映えない身体で どこにでも居て 毎日毎日 たくさん生まれては 死んでゆく だけれども …

余白を埋めない

全力であるなら いつまでも走れない 走り続けられない 速く 力の限り 走りたければ じっくりと準備して 力を貯める 静止から躍動へ 獲物を狩る獣のように 動きに濃淡をつける 密度が高ければ 余白も必要で 墨の黒さは 紙の白さに映える 目標を定め 眈々と機…

春の胎動

春の暖かさに 外套の下 汗が吹き出す 翌日には 北風に 体強張らす 花粉に黄砂 鼻はつまり 涙ながれ 繰り返すくしゃみ 春の不安定な気候と 身体への揺さぶり 朗らかな陽気の前の胎動 雪が融け 芽が吹き 寒さが消えるまでの 暑さへ向かう ギヤを入れ替えた は…

忘却の才

どれだけの人と会い 言葉を交わし ものを見聞きしてきたか 九割九分は憶えていない 何かを取り入れるとともに 何かを忘れ 忘れることで 新しく未来に向かう 経験と忘却の反復 食事と排泄が不即不離なように 忘れることが出来ないと 前は向けない 時には忘れ…

邂逅 齟齬

かつて毎日顔を合わせていた 十年ぶりの再会 うれしくも 遠ざかった距離 埋め合わせの思い出話は 納得と同意への答え合わせ 共有した過去を 結びつけるため 共通する記憶を探る どこまでも過去へ遡り 遠ざかった現在が 奇妙な沈黙の間に浮かぶ 過去の話は 現…

堕ちてゆく町

錆びたトタン屋根の群れ 奥に煤煙上る煙突 誰もいないアーケード街 雨が漏り 蛍光灯は点滅する さびれて すたれた 鉄と石炭がもたらした 華やかなりし過去が 荒廃を際立てる 堕ちてゆく町 傾いたバラックが 寄りかかり合い かろうじて 形を保つ その屋根には…

都会育ちもまた田舎者

街に住み 知らぬ人と肩寄せ合い 心通わず それでもなお 人の中で 寂しさを紛らわす 田舎へ行き 見知らぬ者として 警戒され 冷たい視線を浴び やはり田舎は田舎だと 落胆し帰る しかし 都会の流儀は 都市という地域に 特別のもので それもまた ただの一例 お…

回帰安堵

パソコンの 壊れたファン 修理と春節が重なり ほぼ一月 何もできず 非デジタルな暮らしを 久々に謳歌し 不便と落ち着きを味わい 今日パソコンが戻ってきた 手に馴染んだ品は 何であれ 心を落ち着ける 安堵を噛みしめる今 しみじみと幸せだ